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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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14 .過去の女…?

「…うぅ…良い話でした…」

「ふぅ…シリーズ全部終わったのじゃ…」

「…あり?もう1日過ぎてるな…」


 ヴァルゴが「仙人道人」を読み終えた後の感想でリストアップされた本を次々と読んで行き、どんどん既読リストと好みの体系化が進んで行く間にサラの方は「恋したい変死体」の作者の別の作品のシリーズもの全12冊を読み終えて顔を上げた。


 その声で読書を中断して顔を上げた今村は外が明るくなり始めているのに気が付いた。


 クロノは今村に寄りかかってローブに支えられる形でいつの間にか眠っている。


「…みゅうは…まだ寝てるな。」


 気配でみゅうの状態を知ってはいるものの一応見て確認する今村。サラはみゅうのことは特に気にしていないようで次の本を求めて、図書館利用カードを起動して空中に浮かんだウィンドウを操作して新しい本を出した。


 それに対してヴァルゴは甘えたいという欲求と少々の休憩を兼ねて今村の隣に座り尋ねる。


「さっきからずっと何かしらの恋愛系の話が入ってる物を呼んでますけど仁さんって恋愛もの好きですよね~?」

「ん?そりゃな。大好きだが何か?」

「…自分の恋愛について考えてます~?」


 サラの手が止まった。空気の流れが若干変わったのを敏感に感じ取ったクロノが眠そうに目を擦りながら起きた。今村は特に変わらずに答える。


「んにゃ。無理。恋愛事は他人事に限る。ツンデレもヤンデレも暴力系ヒロインも実際に相手取るとかしたくないし。特に俺は負の神やら特異点やら矛盾者やら色々あるからもし相手がいると仮定し、そいつが堕ちたら果てしなく堕ちるし…」


 思い起こすは前世の記憶。原神と会う前、【創初隊そうしょたい】と思春期の頃に周りと殺し合いしながら名付けたチームを作った時の出来事。


 凄惨な現状を力で捻じ伏せながら馬鹿やって遊びながら暮らしていたので、面白そうなことに手当たり次第手を出した。


 その中に女遊びがあった。【創初隊】の副リーダーはその女遊びで深みに入った女性と周囲の冷やかしで今村が12の難行をクリアしたら今村たちが考えた恥ずかしい台詞で告白し、結婚すると約束したりと全員が金と力で恋愛事の真似事をした。


 因みに副リーダーの婚姻話に関しては勿論クリアしてやって当時の副リーダーは盛大な黒歴史を作り上げた。


 そんな中、リーダーの今村にも女の遊び相手がいて、彼女は副リーダーの結婚を見た後、本気になろうとして今村の空気を察知してからそれを思い止まり計画を練った。


(そして…奴はあろうことか…食材を切る流れで鼻歌を歌いながら自分の腕まで切り二の腕辺りまで行った後、それを鍋で煮込んで義手を埋めて何事もなかったかのように俺の所に持って来て食わせようとした…アレは気持ち悪かった…)


 本人曰く、体の一部分でもずっと一緒に居たかったとのことだ。自分の体の一部が今村に吸収されるのを想像すると濡れたらしい。それ込みでドン引いた。


 因みに能力値に補正がかかるので今村はヤッてはいない。シない方が定着する魔力量が多かったからだ。今は特にその方法は取る必要はないが、体液が猛毒・媚薬なので至す気もない。


(…お、色々嫌なこと思い出してき始めたぞ…)


 自称ツンデレ。傍から見ると情緒不安定。要するに構ってちゃん。自分を見てほしいと最終的に闇堕ち。ヤンデレ化。【創初隊】のメンバー数人を死傷。後、嫌われたと泣き出して自殺。


 自称献身的。危ないこと、戦闘などをしに行く今村を止めても言うことを聞いてくれないので次第に情緒不安定に。闇堕ち→ヤンデレ化。今村を拘束し監禁しようとして周りに止められ【創初隊】のメンバーを付け狙う【死銃しじゅう隊】を結成。後、討伐。


(…ふむ。居場所が無くて拾って来た奴等とか最初は地位を狙ってた奴等…俺と居ると皆精神がいつの間にか壊れてるんだよなぁ…あ、セイランとミニアンもだな。助けられたから好きとか言ってんのに殺されても好きとか本末転倒過ぎる。狂ったとしか思えんな。死ねばいいのに俺。)


 色々思い出したがそれは並列思考に追いやることにして今村は今のことを考える。そう言えば祓は「恋愛視」から判断するに問題ないと思い出す。


(まぁやっぱ顔か。今の俺って気持ち悪いし。前世では顔は中の上で性格が捻じ曲がってたから嫌われてたが今世じゃ顔も性格も捻じ曲がってるしな~っと。ヴァルゴが変な顔してるし戻るか。)


 今までのことを簡潔にまとめて軽く説明することにして今村は思考を打ち切る。


「…まぁ、超大昔に金で雇ったプロ愛人のはずの精神壊れた変人が再生能力もないのに腕千切ってニコニコしながら俺に食わせる程度の愛情を意味なくぶつけて来たから無理。」


 そして、彼女たちの反応は。


 ヴァルゴが思ったのは負けてられないだった。


 サラが思ったのは再生能力があればいいのか…ということだった。


 クロノは顔をお食べという絵本があったけどそれは駄目なのかなぁ…という平和的な物だった。


 この事実は既に狂っていると断定するのに容易いことだろう。


「ま、まぁそれはさておき、取り敢えず俺が当事者になると結構な被害が出るから恋愛事はしない。後、純粋に誰も好きじゃないからしない。」


 この直後、今村は聴覚が消失し慣れた態度で読書に戻ろうとする。しかしそれも一瞬で治るとサラが今村に質問した。


「のう…みゅうさんが起きるのはいつになるのじゃ?」

「…さん付けか…まぁ正しいんだが…じゃあ何で俺はタメ語なんだろうか…」


 今村はまた聴覚が消失したがそれを気にせず続けて言った。


「みゅうは…能力値的に全快してるんだが…何で起きないのかは知らん。ヤバそうだったら検査するがその辺は個人的な情報が出るから今はしない。」

「その基準って何ですか~?」

「氣の流れとか魔力の循環とか後は勘。」


 そして今村は読書に意識をずらした。今読んでいるのも恋愛ものだ。


「…地雷原ですね~…本っ当に過去に行って何とかしたいですよ~…」

「ん~…でもお兄ちゃんって過去には居ないよ?この点にしかいないから特異点なんだし…」


 今村は話が聞えてきたので少し顔を上げる。


「あー…俺が俺であるのはそう言う過去があるからだ。他人が勝手に否定すんな。勝手に憐れんでんじゃねぇ。『自聴他黙』」


 言いたいことだけ言って今村は音を遮断し何かを思い出したかのようにテーブルの上にパンなどの食事を大量に出してから読書に戻った。


「わーい!朝ご飯だ~!」


 それに喜べたのはクロノだけでサラとヴァルゴは何とも言えない顔をして今村の読書の邪魔にならないように席に着いて食事を始めた。



















「ほら、祓さん…あなただけじゃないんですよ?いい加減に…」


 元の世界、ゲネシス・ムンドゥスでは既に3日が経過していた。その間、祓は衰弱を続け、時折立ち上がって何かを思い出したかのように料理だけ行う。


 ただ、調理はしたもののそれに手を付けることはしない。それを見てミーシャは何とかしないといけないと様々なことをした。


 一度怒ってでも元気を出して貰おうと相馬にのみ祓の料理をあげたり、相馬に面倒を見るように頼んだりしても祓は近づいたら死ぬとだけ告げて一度冗談と取った相馬により自傷した以外には動きがない。


 今はその自殺未遂で「癒し手」のベッドに横たわっている状態だ。


「………ずっと、寝ます。……夢の中なら…先生がいますし…」

「いい加減!…っはぁ…流石にショックを受けてたみたいだから大目に見てましたけど…もう酷いので今村さんが帰って来た時言いつけますからね…」

「………嫌…嫌われるのは嫌…嫌…嫌………仕事だけ…ください。」


 虚ろな目で祓はミーシャを見上げる。ミーシャは溜息しかつけない。


「食事を摂ってからならあげます。」

「…海、行かなきゃ…」

「…それはまだですよ…臨海学校は来週です…はぁ…これ今村さんじゃないと厳しいのに…『配素氣流』…」


 ミーシャは祓に自身の氣を流し込み、虚脱感と徒労感に襲われる。


「…は…っは…はっ…あ…さ、さあ祓さん…行きましょう…」

「…ごめんなさい…」


 祓はミーシャと一緒に治療室から出て行った。




 ここまでありがとうございます。



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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