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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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12.ホテル(オプション付き)

「この辺で一番近いホテルはここだよ!」

「…チェンジで。」


 今村はご休憩3000キュールとご宿泊8000キュールと書かれている門前で軽く頭を押さえてそう言ったが、その横からサラが出て来て言った。


「ふむ。これは天命じゃの。諦めるべきじゃ。」

「…そこの天帝、何か言ってみろ。」

「私が管理してるわけじゃないのでよく分かりませんけど多分天命ですね~」


 人目を引いたままの今村は溜息をついてロリロリ組2人を見た。


「…お前らどう考えても入れねぇだろ…肉体年齢考えて言ってくれるか?」

「『錯視錯覚』掛けてくださいよ~そうすれば済む問題です~」


 クロノは意味がよく分かっていないがヴァルゴが簡単に解決策を出した。今村は別口から話を斬り込む。


「寝てるみゅうを背負ってこんな所に入ったら何らかの事件性が疑われると思うんだが?」

「ですからそちらにも『錯視錯覚』使ってリュックにでも見せかければいいじゃないですか~」


 今村はヴァルゴに論破されるのでイラッとくる。入ろうと思えばそんな解決策くらいすぐに思いつくが、入りたくないからごねていると分からないのだろうか。


「お兄ちゃん!お金払ったよ!行こ行こ!」


 色んな倫理観的にマズイことをいつの間にか入っていたクロノが中から出て来て大声で言った。辺りのざわめきを聞いて今村は深い溜息をついた。


「はぁ…『ドレインキューブ』…しゃあねぇか…」

「はい~」


 今村も諦めて周りの今入って行った人物像に関する記憶を吸収して暖簾を開いて中へと入って行った。



















「さて、まずはシャワーじゃの。」

「…何だ?言いたいことでもあんのか?」


 サラはそう言い終えると今村の方をじっと見てきたので今村は睨み返す。そんな今村に隣からヴァルゴが入って来てサラの視線の意味を告げた。


「この胸に栄養が行き過ぎて頭がちょっと残念になってしまった人は仁さんにシャワー浴びて来いよって言ってほしいんですよ~」

「…ちょっと何言ってるのか分からん。この状況下でそれは洒落になってないんだが?」


 今村は今度は呆れた目をサラに向けた。しかし、サラはヴァルゴと口論を始めているのでその視線に気付かない。


 もう見ていても意味がないと判断した今村は背負っているみゅうをソファに降ろして何度目かもわからない溜息をついた。


(…みゅうが起きたら面倒なことになるだろうなぁ…迎撃準備した方がいいだろうか…いや、帰りはみゅう頼みだし…戻らねぇとここには特異点討伐隊が来るらしいしな…)


「ねぇねぇお兄ちゃん!今度はクロノ…じゃなくて、私をおんぶして!」

「…の前にお前は風呂だ。」


 風呂の言葉でサラとヴァルゴが口論に一区切りつけて今村の方に戻って来た。


「入りますか~?」

「お前ら先入ってろ。俺は後でシャワーだけ浴びる。」


 今村は一応クロノの身だしなみは整えたものの、パッと見た時には変な匂いこそしなかったが汚れていたのできちんと風呂に入って欲しいと思っていた。


「む~仁さんも一緒がいいんですが~…」


 ヴァルゴの言葉は今村の耳には届かない。クロノも一緒一緒と連呼するが、聞こえていないということをサラから説明される。


「…何で聞こえないの?」

「そう言う呪いらしいのじゃ。これには妾たちも結構悩まされておってな…」

「ん~…お兄ちゃんってクロノの術効かないからなぁ…聞こえるようにしたいけど…」


 そんな話し合いの間に今村の聴覚は復活し、ヴァルゴのほっぺたを引っ張るという折檻を終え、サラとヴァルゴにクロノとみゅうの風呂の補助を頼んだ。


「私一人で入れるもん!」

「…もう面倒だから一緒に入ってくれ。」


 クロノはそう言い張るがもう面倒なので今村はそう言って別室へと向かった。そしてその先で乾いた笑いをする。


「…三角木馬に天井のロープ。鞭に拘束具に荒縄…何考えてんだあいつら…」


 部屋を頼んだクロノとサラの意図が知れないが、今村は鞭を手に取ってみた。


 因みにこの部屋に関してはどのような部屋がいいですか?と訊かれたのでどんな部屋があるのかサラが尋ね返し、最高級オプション部屋と言う名目のここがあり、クロノに「オモチャ(・・・・)」がいっぱいある部屋と説明してここになった。


「…ふむ。痛くないように配慮はされてんだな…まぁ俺の持ってるやつと比べたら酷か…」


 今村は風切音をさせながらしばらく鞭で床を打っていたが、ふと部屋の外が騒がしいのに気が付いた。


 その直後、部屋の扉が勢いよく開かれて全裸のクロノが黒髪を泡立たせたままで胸を揺らしながら突入して来た。


「シャンプーいったぁい!あの人下手ぁ!クロノ自分でする!」

「服を着ろぉっ!『水呪空印・湯風煙』!」

「ふみゃっ!目の前が真っ白だよ!」


 今村の術により、別室に突如湯煙が立ち込め、そしてクロノの体の周りで濃縮され固定される。

 それが出た直後、クロノのものとは別の足音が近付いてきて、到着と共に叫んだ。


「出たな仁特製自然のモザイク!」

「オイオイオイオイ…サラさんよぉ、お前馬鹿?バスタオル巻くぐらいの配慮したらどうなの?」

「主に見せて恥ずかしい訳なかろう!寧ろ見よ!」


 ヴァルゴとのみゅうの面倒を見る押し付け合いに勝利したサラが腰に手を当てて今村にそのプロポーションを押し出すように見せつけるがその前に「湯風煙」が来ていたので結果的に何も見えない。


「…はぁ…クロノ、自分でするなら自分でしてもいいから戻れ…サラは俺だからまだしも他の異性の前では恥じらいに気を付けろよ…?」


 今村はそう言ってクロノとサラをローブでぐるぐる巻きにしてこの部屋から追い出し、また深い溜息をついた。



















「…祓さん…いい加減何か食べないと…」

「………ごめんなさい…」


 元の時間のゲネシス・ムンドゥス。そこではすでに1日が経過し、翌日の朝を迎えていた。


 ミーシャは自室に連れて来ておいた祓をベッドに降ろすとベッドに腰掛けたまま動かないので様々な身の回りのことをしながら今日の業務を行っていた。


 業務をするために部屋の外に出たが、その執務室では相馬が祓を引き渡して欲しいとミーシャに頼み込むため仕事の進捗が悪くミーシャも部屋に戻って仕事をすることになっている。


 その間、祓はずっと魂が抜けたかのようにボンヤリしている。何か話しかけても謝罪の言葉を吐き出すだけだ。


「先生…先生が…ぁ…ぅ…」


(…また始まった…)


 ミーシャが見ているだけで4度目となる不意の泣き顔。同性でも魅了されかねない美貌の持ち主の祓だが、今は見ていて痛々しい。


 尤も、この状況をもし今村が見ていたら依存し過ぎと断定して別の意味で痛々しいとドン引きし、距離を置くだろう。


「…『レジェンドクエスターズ』全体の雰囲気も悪くなってるし…」


 業務自体は今村が呼んでいた「レジェンドクエスターズ」本部長補佐を名乗る様々な種類の知的生命体たちによって簡易化し、個人量も減っているもののモチベーションは最悪になっている。


(…勿論私も嫌ですよこんなの…)


「…早く、無事で帰って来てください…」


 ミーシャはそう祈りながら気の乗らない仕事に思考を移動して行った。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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