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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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9.準備のために

「…マジか。」


 今村はみゅうから連絡を受け、まず「幻夜の館」に飛び、祓と別れた。


 その後「要塞寮」の自室で準備に取り掛かろうとしたが9階を攻略して10階に向かっている人影が2つあることを確認して眉を顰めた。


「サラとヴァルゴが協力して…あぁ五月蠅いなぁ…」


 防音しているので音は聞こえないが、人がここに来そうだと思うと何となく急かされている気分になる。


(こっち来て戦いが終わって許可証出したらずっと攻略に付きっきりで…あいつら何したいんだろうな。)


 設備を求めるのであれば買えばいいのに…そう思う今村だが、今のところ関わっている暇はないのでスルーしておくことにする。


(…さて、荷物は持ったな。それと、みゅうの話のスピード感覚からしてこっちとあっちじゃ大分時間の流れに差がありそうだな…大体7倍ってところかね。)


 戦いが長期化すれば「スレイバーアンデッド」の効力で祓が壊れるだろう。日馬の「拒絶」と「否定」の力を使って解除を進めるが、あと一押ししなければならない。


 その方法を考えて今村は溜息をつく。


「やっぱキスしかないかぁ…やだなぁ…あーあの二人の所為で…」


 簡単に嫌われればいいのだが、今村に対するプラスの感情を操ってマイナスにする術式系統はこの世界全体のトップ2柱に破棄されている。告白を受けてまずやった行為に信じられないとばかりの表情をして片っ端から破棄されていったのだ。


(…面倒だなぁ…)


 その後彼女たちによって「プリンスキス」など愛の奇跡系統と言われる訳の分からない術を代わりに付与されまくった。


「…まぁいいや。放置放置。決まったんだったらもうやろう。」


 キスに際して今村の体液は基本毒物なので薬物に変換しながら時間の流れを気にして薬品生成をすることにした。


 そしてその辺を地下研究室で一斉に済ませると今村は戦闘前に少し一息つく。


(…にしても11族が転生してるって知ってれば能力吸収して祓はもう少し開放するのが早かっただろうになぁ…まぁそもそもの話はあいつが拒絶をしないのが原因だが…)


 色んな術式を作ったなぁ…と思って体をだらけさせていると不意に気配がした。


「あー?…サラとヴァルゴか…」

「ひ…仁さん…10階は流石に酷くないですか~?」

「5階以降酷いと思ったのじゃが9、10は本当に酷いのう…」


 肉体的な損傷はないものの、精神的な疲労がたまっている地獄の女帝ことサラと天帝ヴァルゴが地下研究室へとなだれ込んできた。


「…んー?あぁ…まぁ…10階はフロア全体を俺の部屋のつもりで作ったし…元々解放される予定じゃなかったしな~難易度は下げないぞ?」


 今村はそう言いながらキツめの薬品は仕舞う。ついでに危ない薬品や高価な薬品など一気に収納し、立ち上がった。


「まぁそれは頑張りますけど~…仁さん今から何するんですか~?」

「ちょいと異世界に行ってくる。」

「む。妾たちも行くぞ。」


 サラがそう言うとヴァルゴも同意した。それに対して今村は渋面を作る。


「…お前らはお遊び気分で行ったら死ぬぞ?多分。」

「ならば真面目にすればいいだけじゃな。」

「ですね~」


 今村は威圧するが二人はどこ吹く風といった様子で受け流す。そんな二人を見て今村は今から戦闘に入るというのにその前に一戦交えるのは面倒だと好きにさせることにした。


 一応、二人に釘は刺しておく。


「あ、死んだら普通に助けないよ?ついでに邪魔したら俺が殺す。」

「無論じゃ。責任も取れんような子どもではないのじゃから当たり前じゃ。」


 今村は子どもの時点で容姿、肉体年齢共に幼いヴァルゴを見る。


「何ですかその目は~?大好きですよ~?」


 少々聴覚を失いそこまで罵倒するか?と思ったが、そんなことよりあんまり時間がないので祓と相馬、それにミーシャを「幻夜の館」の客室の一つに呼んでおく。


「じゃ、急ぐぞ?」


 二人の言葉を待たずに今村は上へと移動した。


















 あてがわれている外見から考えるには妙に広く、適温に保たれた4つの2人掛け用のソファと1つの長机がある部屋で今村は呼び出した面々の中で最後に来る相馬を待っていた。


「はぁ…はぁ…す、すみません…」

「…まぁ急げっつったのにちょいと遅かったから説明時間が短くなったな。今の時間で書面はしたためといたが…」

「…何をするんですか…?」


 最後から2番目に来た祓が相馬が来たと同時に今村に質問する。彼女はつい先ほどの急なキャンセルで少し不機嫌だった。


「あぁ、ちょいと異世界に行ってくる。で、少々ヤバいのが相手だし時間の流れの問題があるからミーシャ。これ。」

「…全権委任状ですか…そんなもの…」


 ミーシャは今村が言わんとすることを理解して嫌がるが、今村は特に表情を崩さずに話しておく。


「あぁ、まぁ…多分俺が死んだら色々改竄されるんだが…改竄内容が色々酷い可能性があるからな…これ持ってればまぁライアーが変な干渉をした的な感じになると思う。」


 少し考えた結果、ゲネシス・ムンドゥスの「レジェンドクエスターズ」は下手をすればガニアン(元マジックアーケードの元締め)の物になる可能性があったのでこれをミーシャに渡して改竄の方向を誘導することにした。


 それをミーシャは嫌がり、破ろうとする。


「今村さんのものです…!」

「…半分以上俺の下から離れてると思うけどね。まぁそういう事で。で、次は相馬と祓な。」


 認めないとばかりにミーシャが委任状を破棄しようとするが、世界の自浄作用である改竄を誘導できるほど破棄や書面を弄るのが難しいそれはミーシャの能力ではどうすることもできなかった。


「え…わ、私も行くんですよね…?だって…『スレイバー…」

「相馬。」


 嫌な予感がし、不機嫌を一転して恐怖を覚え始めた祓を無視して今村は相馬を見て言った。


「はい。」

「…治療行為をするんだが…まぁその内容がアレなんだよ。」


 今村が嫌そうな顔をして相馬に説明しようとしたその時だった。急に時空の扉が開かれ、中から白銀の髪をした愛くるし過ぎる美幼女が出て来た。


「ぱぱ!急いで!特異点討伐隊が時間神のとこに来るよ!」

「あ、時間切れ。サラ、ヴァルゴ、俺の仲間と思われると厄介なことになるから止めといた…」


 今村が実力行使に出そうだと判断したサラとヴァルゴは今村が言い終わる前に白銀の髪をした美幼女―――みゅうがいる方へと突入した。


「…あの馬鹿ども…まぁいい。【動くな】。」


 咄嗟に祓も何か嫌な気がするので今村に先んじて行こうとしたが、止められる。


「先せ…なにを…」

「じゃあまぁ時間無いし…医療行為だからな?あ~時間無くて相馬に説明とかが…まぁ仕方ない…祓も来たの遅かったし…演算能力が欲しい…」


 今村はそう言いながら口に薬物を含んだ。そして祓の桜の様な唇にそれを口で以て流し込む。


 祓の頭に甘美な気分が流れるが、それを打ち消すかのように祓の中で大事にしていた鎖のような何かが消え去った。


「…はぁ、『スレイバーアンデッド』解除完了…相馬、この後のことについてはそこにある紙を読め。」


 今村はそう言って祓をソファに置いていくとみゅうの下へと急ぎ、消えた。残された相馬が紙を読もうとするがそれはミーシャの手で燃やされる。


「…祓さん。肩、貸します。」

「先生が…先生がぁ…」

「今村さんは負けません…ですから、帰って来るのを待ちましょう。あの紙通りに相馬先生に面倒を見てもらうことはしなくていいです。私が看病します。」

「お、おい…先生のメモが…どうすりゃ…」


 相馬が狼狽える中、ミーシャは「スレイバーアンデッド」の解除に伴う強烈な虚脱感を体に宿した祓を連れてその部屋から出て行った。




 ここまでありがとうございます!!!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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