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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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7.同僚の幸せ

 そして翌日。今村は昨日時点で内が森と明後日遊園地デートをすることを決めたと知るとテンションを上げていた。


「相馬もなぁ……これ位勢いよくズバッと行ってくれればなぁ……何で未だにデートの一つも誘えずに……はぁ……」

「いや、結構誘ってるんですけど……」


 そんな今村はそろそろ「スレイバーアンデッド」を解く薬の開発が終わりに近づいているので相馬を更に嗾けることに力を注ぐ。


「ベタだが校舎裏に呼び出して告白からまた始めれば?そうすれば「断固としてお断りします先生。」……この話はまた後でな。」


 祓が妙な威圧感を出してお茶を持って来たので今村は話を中断する。しかし取り敢えず「スレイバーアンデッド」の効力がある内に告白成功してから解除はする予定だ。


(そしたら俺の役目も終わりだしな。)


 相馬を退出させながら今村はお茶を啜る。そして最近ふと祓を見た。彼女の表情からは何も読み取れない。今村は毎回のことながら不気味に思う。


(……今世のこの意識じゃ軽い劣等感を覚えるからあんまりこいつらの顔見てないが……ふと何となく見た時にはこいつら俺のことを無表情に見てることがかなり多いよなぁ……視線にはかなり敏感な方だし声音と表情から感情を読むのも得意なんだが……)


 そこで今村の中で美形代表の二人の顔を思い出し、その両者の内面を全くもって理解してなかったのを思い出すとそんなものかな……と諦めた。


(……もしかしたら美人との相性は悪いかもしれんな。神々に近しい奴らばっかりと馴れ合ってることが多いからそういうタイプが多いが……)


 そういう奴はいつか裏切る。今村は自分が発生した当時からの認識を自然と感じながらティーカップを置いた。


(……そういや……何となく前世でも生まれた時から誰もが裏切るって思って生きてたな……前々世から何かあったんかね?……まぁ発生当時から必要な知識といえばそうだが……)


 実際、前世でも裏切られまくったし、まぁ当然と言えば当然のことだ。だが、今村はその辺は並列思考で後回しにすることにして明日のデートの観察について考えていた。


(……まぁ名目上「幻夜の館」は能力者の学校の様なものだが養成場としての意味合いの方が強いからな……名目上国に属してるが中は治外法権に近いし。一応問題はないと思うが……やっぱ見に行くべきだよなぁ……)


 「遊園地」のセミオープンなので元々行く必要があったという理由と、羽目を外し過ぎないように監視すること。森は一応ここで教師を出来るほどの能力を持っているので監視はある程度実力がいる。


 後は純粋に見てニヤニヤしたいという感情を持って今村は立ち上がった。


「よし、行くか。」

「……どこにですか?」


 今村がどこかに行くとなれば勿論付いて行くつもりの祓。今村は彼女に仕事を与えようとするがその分はなるべく時間を取って布団でゴロゴロしたいミーシャが全て片付けていたので仕事が残っていない。


「まぁ、まずは早乙女の部屋だな。昨日の夜は忙しいかもしれないから行けなかったし。」


 ユウキ君との熱い夜を過ごしたであろう早乙女に遠慮して今村は森のデートの件を早乙女に伝えていなかったのだ。


「さてさて奴が失ったのは前か……後ろか……クックックック……」



















「……昨日はお楽しみだったようで?」

「違う……何とか……寝かしつけた……俺の大事なものは失ったが……」

わらべ?初雪?」


 今村は積みゲーの山が幾つかできている雑然とした早乙女の部屋でベッドで眠っているユウキ君を見た後、非常に疲れており、昨日と同じ服を着ている早乙女に軽く尋ねた。


「俺の……俺のファーストキスが……『ちゅっ』なんて軽いもんじゃねぇ……濃厚ディープに……ねっとりと舌を絡まれて……ぅえっぷ……」


 今村はそう言う早乙女の顔を見た後にベッドで安らかに眠っている弓納持の顔を見た。


「……お前的に役得じゃね?見た目美少女だよ?俺はごめんだが。」

「俺もごめんだよ……」


 早乙女の儚い笑みが今村に向いた。


「……そうそう。森は早速休み使って明日デートだってよ。」

「あ゛……?」


 今村の一言で早乙女の顔が一気に夜叉に近い何かになった。そして今村に数枚の大金貨を無言で出す。


「セミオープンチケット……くれ……足りないか……?」

「オイオイ同僚の恋路だぜ?応援してやろうじゃないか。」


 今村の顔はとても純粋な好意を持っている物とは思えなかった。しかし良い顔で笑っている。


「大丈夫だ……当日は何もしない……そう。当日はな……ただ、後で視聴覚室を借りて鑑賞会をするだけだ……勿論、森とな。」

「オーケーオーケー。じゃあまぁとりあえずバレないように変装はしろよ?変装の自信がなかったらこれ使っていいが……」


 今村はそう言って早乙女に小瓶を一本出しておいた。早乙女はそれを受け取りながら今村に尋ねる。


「いまむ……校長はどんな変装するつもりだ?」

「ん?俺?『錯視錯覚』で適当に抽選に当たった客として紛れ込むよ?じゃないと接客をどんな態度でしてるか見れないし……」


 今村の言葉に後ろで控えていた祓が提案してきた。


「あの……私にもそれをかけて……一人で行かれるより二人で行った方が警戒度が下がると思いますし変装の一環として連れて行ってくれませんか……?」

「……んー……」


 今村的に連れて行く意味が特になく、面倒なので却下したいが連れて行かないという意味も特にないので悩む。そんな今村に祓は押しが足りないかと続ける。


「あの……その、普通の遊園地という物を楽しんでみたいので……」


 そんな中空気を読めない早乙女が変な顔をする。


「え?ジェットコースターとか……怖いと思えないよね?俺らと違って天明さんは普通に空飛べるし……」

「……いや、園内は全ての能力が使えない仕様になってる。ん~……まぁ確かに祓は俺が外に出るとき以外『館町』しか行かなくなってるしなぁ……外に興味を持つのはいいことなんだが……」


 今村は祓が遊園地に行きたいと言ったのを受けて頷いた。


「初デートは相馬として欲しかったが……まぁ前にもちょっとお見合いの為に同じようなことやったしいっか。」

「……絶対に相馬なんかとはしませんが……」

「絶対はこの世に存在しない。」


 今村はそう言いながらチケットを何枚か出す。


「……あ、今回のお化け屋敷は個人的に結構レベル高いと思うから楽しみにして。本物が大量にいるし。」


 それはどうなんだろう……と思ったが、祓は今村とデートらしいデートが出来るという事で何も言わなかった。


「じゃあ、また明日。」

「うー……ん……早乙女先生……激し……ぁぅんっ!」


 立ち去ろうとした今村だったが、弓納持の言葉で口の端を歪め、誰にも見えないスピードで「姦淫香」を早乙女の枕元に投げおくと顔を引き攣らせている早乙女を見て軽薄に笑った。


「まぁ……その、何だ。頑張れよ?じゃあな?」

「俺はノンケだ!」


 今村が立ち去った後、扉が閉まると同時に扉内が非常に騒がしくなったが、とりあえず今村は扉に術を掛け、壁にも呪いをかけその場を後にした。


 その後、窓から飛び降りて「癒し手」の世話になっている早乙女の姿を目撃することになった。




 ここまでのお目通しありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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