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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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6.表彰式と賞品

「あークーシーは回復役だったのに槍術を修めてあまり得意でない直接戦も出来るようになったことで今回の賞品を得る権利を獲得した。」


 今村が試合後の表彰を行い、最後にクーシーと呼ばれたタレ耳の犬の亜人であるおっとりとした雰囲気の美少女にそう言って呪われていない者が呪具を使うために必要な呪符を1枚渡した。


「ありがとうございます。」


 ふんわりとした笑顔の後でクーシーがそれを受け取ると今回の受賞者たちは円形になり今村がその回りに術を掛ける。


「じゃ、貰う順番はじゃんけんね。」


 今村の言葉にその中の人々が頷き、今村の料理を既に喰い尽くした会場が緊張に包まれる。今村が掛けた術は身体能力を均等にする術で実力差を埋め、完全な運勝負にするものだ。


「じゃんけんほい。」


 そして勝ったのは弓納持ユウキ。早乙女に言い寄られて狂恋する男の娘(ヤンデレ)だ。


 早乙女は落とし切った後で事実を知り今村にキレて襲い掛かるがその前に芽衣によって叩き潰されたという過去を持つ。


「おーユウキか。欲しいのは…」

「勿論『恋愛君2号』です。ウフフフフフ…」


 仄暗い笑みを浮かべて笑う弓納持ユウキ。それを受けて今村も邪悪な笑みを浮かべた。


 じゃんけんの方はお目当てのものがなくなり若干テンションが落ちているがそれでもいいものが多いので続行される。


「これで、一線を、越えるっ…!」


 弓納持ユウキの言葉に顔色を悪くした早乙女が退出を申し出、パーティー会場を後にしたが今村は気にしない。


 その程度で逃れられると思っているのか?と薄っすら嘲笑さえ浮かべている。そうしていると次の勝者であるクーシーが今村の方にやって来た。


「お、2番目か…何にする?」

「『聖者の癒杖』をお願いします。」


 そう微笑みながら言われるが、今村は少々クーシーの身を案じるようで訝しげな…それでいて胡乱な目を向けた。


「お前『癒し手』として働いてくれんのは良いが…ワーカーホリックになってんじゃねぇか…?」


 するとクーシーは上品に微笑み返す。


「いえ、大丈夫ですよ先生。ちゃんとした趣味もありますから…」

「…じゃあいいんだが…」


 あまりプライベートなことに突っ込みを入れるのは無粋と思っているので今村はそれ以上言わずに「聖者の癒杖」を渡し、呪具用の札を回収した。


「次は…内か。」


 こいつは内臓を見るために透視系の能力がある呪具でも貰うのかな…と思っていると思いがけない要求をされた。


「『レジェンドクエスターズ』特別遊園地セミオープンチケット・ペア…」

「!お、おう!」


 今村は内が少しだけ視線を向けた先にいる森のことを見逃さなかった。そして今日は思ったよりも面白そうだ…と日馬の所為で下がっていた今日の評価を改める。


(その日は尾行だな…あ、何か昔もそんなことした覚えが…ありゃ中学時か…)


 だが内容は全然違うので今回は成功を祈ってそのチケットを2枚渡した。次は黒武者だ。


 2Mあるその長身の男は威圧感を振りまきながら今村の前にやって来る。


「お前は?」


 今村がそう訊くと、彼は少し身を屈めて今村に耳打ちした。級に近付かれて少しもやっと来たがその内容を受け取ると若干苦笑しつつ『轟槍・夜叉裂き』を手渡し黒武者を壇上から下げる。


(…後でもふもふ王国プレミアム会員章と入れ替えないとな…)


 彼は見た目に反して可愛い物が大好きだ。しかし、見た目通りの力と威圧感を放っているので動物に逃げられる。


 しかし、今村が開催している場所のプレミアム会員は別だ。超猛獣の愛くるしい幼生がほのぼの暮らしている。その戦闘力は黒武者が頑張っても歯牙に掛けられないレベル。


 なので彼が全力で抱き締めても猛獣たちは特に気にせず、餌を貰えればそちらに夢中になるという状態になるだろう。


(…何か可愛い動物の為に全力で頑張った黒武者がねぇ…これ広めたいんだがまぁ黙っとこう。)


「うぅ…試合に勝ったのに勝負に負けましたよ…」


 今村がほのぼのした視線を黒武者に向けていると負けミーシャがとぼとぼ今村の方にやって来た。


「何にする?『破滅の種』?『血染め衣』?『破戒の斧』?」

「…そんな物騒なのは良いですよ…一番は取られましたし…ん~…!?このベッドはもしや…」

「結構いい素材使ってる良いやつだが…別にそんな…」


 今村がミーシャが選んでいるベッドを見て何をそんなに興奮しているのかと言った眼を向けるとミーシャは尻尾をピン!と立てていた。


「もしかして、今村さんこれで寝たことありません?」

「…あーバレたか…一応繊維間に一切の痕跡を残さず繊維も丹念に洗ったのに…」

「勿体ないです!ください!」


 自分で作った第1世界にしかないとんでもない材料で作った処分品を勿体ない気がするので紛れ込ませてみたのだがミーシャはいたく気に入ったらしく枕に顔を埋めている。


「…にゃぁ…まだ、いける…」

「…まぁ確かにまだ使えると思うが…そんなに寝具に執着してんなら何だったら新しいの作るぞ…?」

「これを捨てるだなんてとんでもない!」


 ミーシャの言に元王女なのにもったいない精神がしみ込んでるなぁ…と今村は感心しつつそのベッドをミーシャに贈呈することにして今村はその他の賞品を片付けた。


「…よし、んじゃあ日馬の所に行くか…」


 今村がすることはすべて終えたので今村は自室とマキアの部屋以外が空室となっている「幻夜の館・要塞寮」10階へと移動して行った。



















「…邪魔したな。」


 入ってそうそうベッドでダンシングファイトを行っていたようなので今村は養生の為に貸した10階の空室の一部屋から出た。


「ちがっ!」


(…全く、病人がいるというのに最近の若い奴らはのぅ…)


 何か聞こえた気がするが意図的に無視。思考は近くのマキアの部屋に向く。


(…帰って来ねぇな。帰って来たらすぐに奪ってやるというのに…)


 今村は「復讐法ハンムラビ」の燃料になる自身に関する記憶を奪う事でマキアの告白という問題を片付けるつもりにしている。


 しかし、それでは記憶は取れても感情は取れないのでその後の処理が面倒なのだ。マキア級の能力保持者となると感情を入れ替えることが今の今村ではできそうにない。


(ってか…「恋愛視」にも映らねぇんだが…仮にあいつがよっぽど俺のことを好きとすれば面と向かって視るか過程を踏まないとミニアンとセイランの奴で俺、ドピンクに染まるからな…)


 過程を踏むのは自虐プレイに等しいことをしなければならないのでこちらはしたくない。ということで今村は次にマキアと対面した時に確認することに決めた。


 そんなことを考えていると日馬がいた部屋の扉が勢いよく開かれ、出た脚の数ミリ先を極太のレーザーが突き抜ける。


「うわっ!」

「…あーお前部屋から一歩も出んなっつってただろうが…死ぬぞ?」

「アレって俺の怪我とかの意味じゃなくて物理的な意味だったんですか…」


 とりあえず服を着ているようだったので中に入ると魔王の娘ことエリナが猫耳幼女がいるベッドの前で看病している風に見せていた。


 とりあえず先程のことはスルーすることにして今村は何か色々間違ったことを知識として持っている日馬に軽く世界の概要を教えて「幻夜の館」の生徒になって常識を学び直した方がいいと言って、ついでに3人入学させた。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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