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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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1.日馬への歓迎

「へぇ…あんたが今村か…思ったより若がっ!」


 入って来るなり偉そうにしていた赤髪の青年を今村はローブで殴って端的に告げた。


「敬語。」

「っ!何様のつもりだ?」


 青年がいきなり殴られたことに激昂するが、今村は本題に入る前に少々用事―――「呪式照符」で色々調べて読む。


 そんなことをしながら反論しようとしたところ、今の今まで立っていた場所に青年はいなかった。


「お前こそ…あ、大丈夫?生きてる?」


 青年は気付けばマキアに見るも無残な形で半殺しにされていたのだ。一瞬の出来事で戦闘態勢に入っていなかった今村が気付けないほどの早業だった。


「ゴミ。…すみません先生…」

「…祓呼んで来て。お前治す気ねぇだろ?」

「はーい。」


 ゴミ屑のようになった青年に辛辣な言葉を浴びせたマキアは今村の命によって祓を呼びに行った。

 虫の息状態の彼は痙攣以外に全く動くことも出来ずにうち捨てられている。その間に今村は資料に目を通すことにした。


 日馬くさま 飛影。今村が草案を出した特別養護施設の一種で育った15歳らしい。今年ウトピアに「マジックアーケード」の簡易出張版で色々な道具を買い、そこで魔王の娘と出会う。


(…またベタな…まぁ俺そう言うの大好きだから何とも言えんが…)


 魔王の娘と言っても魔界に決められた王は今のところいないので僭称だ。しかも管理者として色々しているのは今村なので魔王と言われても鼻で笑える。


 そんなことを思っていると扉がノックされ、今村の入室許可と共に開かれて祓が入って来た。


「…この人を治せばいいんですか?」


 祓は来てすぐに状況を把握して日馬を治しにかかる。今村はその間に資料を読み進める。


 魔王の娘、エリナ・セフィタナン・メルサス・ファシトを何やかんやで勇者と名乗る能力者たちから救って、そいつらの身包みを剥いで得た金で一軒家を購入。


(…そこの奴には後でウチの会社から監査官を派遣しておくか…)


 それで新婚生活(笑)をイチャラブしながら繰り広げて、ご近所さんにマキアが利用していた変態の家があり、エリナが怯えていたので潜入してマキアと出会ったらしい。


 ついでにその変態の家で猫を2匹拾ったら幼女になってなんやかんやで呪われたらしいので今村の所まで解呪してもらいに来たようだ。


「…終わりました。」

「お前…ごびゅっ!」


 復活と同時に祓の顔を認識、そして体も素早くチェックして今村を睨みお前呼ばわりしたところで日馬は祓に潰された。


「あーあ…治して。」

「……何でですか?」

「…いいから【治せ】。」


 また血塗れになった彼を今村は話が続かないと少々苛立ちながら「スレイバーアンデッド」の力で無理矢理治させる。

 今度は攻撃されない様に守っておく。祓が射殺さんばかりの視線を向ける。


「今村…お前こんな可愛い子たちを洗脳して…今すぐ解放しろ!」

「…お前、あぁ後ででいいや。とりあえず解放したいから手伝え。」


 今村は口の利き方と取引方法と思考については後で治すことにして先に話を進めることにした。


 日馬は呆気にとられ、祓はオルディニたちによる「テレパスネットワーク(反独身貴族連盟専用回線)」に警戒レベル5の通達を入れた。


「な…」

「ちょっと色々手違いがあってさぁ…いい加減解放して俺もどっか行きたいんだよね…」


 日馬は何を考えたのか顔を真っ赤にして激怒した。


「遊ぶだけ遊んだら捨てるってか…下衆だな…」

「…まぁそれでいいけど。とりあえずまずはここにいる彼女…祓を解放したいんだが、そのためにはちょいと実力診断がいるよなぁ…」

「…待て、彼女…」

「あ、じゃあそろそろ教育しよ。」


 とりあえず話は通したので色んな準備に取り掛かる前に今村は無詠唱で彼に悪夢を見せる。


「ぐ…ぎゃぁあああぁぁあぁあああっ!」

「…五月蠅いなぁ…単に全身に寄生虫が潜り込んで感覚がある状態で発狂も許されずに食い漁られるだけだろうが…『自聴他黙』。」


 現実には行っていないが、彼の見ている世界では今まさにそれが行われている。一度目の死を迎えた所で今村は術を解いて端的に言った。


「敬語。…あ、意味が分からないか…俺は『言霊』でお前が言っている内容を理解してるから何か自分の方が優位と思われてたら不快なんだよ。」


 今村の感覚では日本語気分なので敬語と言っていたが、この「幻夜の館」の外のゲネシス・ムンドゥスではエスペラント語であることをど忘れしていた。


「な…ぁ?今お前が何をしたのか…ぃぎゃあぁああああっ!」

「ムカつく。…あ、今回は趣向を変えてみようか。」


 今村は目の前の彼を見てあることを思いつき目を妖しく光らせた。すると彼は糸の切れた操り人形の様にその場に崩れ落ちる。微動だにすることも声を出すことも叶わない。


「全部の感覚を切って、身体の自由を全て剥奪してみた。…あ、今は許さないよ?」


 彼が何かをしようとしたが、今村はそれを許さない。一瞬だけ目を細めてそれを封じた。


「呪いの神だぞ俺は…俺の部屋に何の準備もないわけがないだろ。」


 今村が嘲笑する。そしてローブから細長い瓶を取り出し、そこからほんの少しだけ日馬に内容物をかける。


「時間の感覚を狂わせるアレな。…名前忘れた…えーと…まぁいいや。」


 とりあえず今村は日馬の実力把握のために授業中の「幻夜の館」に館内放送を掛る準備をするように祓に命じた。


 祓は自分と今村の関係を断たれるのを自ら助けたくないのにもかかわらず「スレイバーアンデッド」の力で動かされるので嫌々従う。


 その様子を見てそろそろ忍耐力も限界を迎えて来てるよなぁ…俺って少年相手にキレる大人げない屑だし…と思いながら少年…日馬に掛けた術を解いた。


「はぁ…はぁっ!」

「謝罪は?」

「お…今村さんがすることだろう、それは…」


 今村は少々首を傾げて上を向くが頷いた。


「まぁ合格ってしとこう。もうちょっと頑張れ。」

「…ちっ…」


 日馬は苦い顔をするが今村には何を言っても無駄で、勝ち目もないという事を理解したので今のところは黙っておくことにした。


 そんな日馬少年に今村は今の内に軽い話題として話しかけておく。


「…あ、そういえば…多分祓…さっきの美人な。未だに恋人の一つも出来てないんだがお前、どう?」

「…はぁ?あん…今村さんの所為だろそれ…」


 日馬は祓の解放をしたいという話を受けて今村が無理矢理手元に置いていると解釈しているので今村の話の内容が理解できなかった。


 そんな彼に今村は祓の過去を深い所までは話さず、相馬との関係を進めるように画策していたことを軽く説明した。


「…つまり、洗脳ってのは…色んなことを教えたからある意味って話で…解放ってのはその、庇われた時に生きるために…」

「…言い方変えればそうだが…どっちでもいい。結果は一緒だし。」

「…結構よくないんですが…?ならそう言ってほしかったんですが…?」

「んなもん俺主観の話だろ。祓から見ればその通りじゃねぇの?」


 日馬は洗脳という話や解放という話を受けた時の祓の殺気を思い出して溜息をついた。


「…これでようやく意味が分かった…あー…協力したら…馬に蹴り殺されるんで…ちょっと辞退…」

「白黒コンビはいいのか?」


 今村は歪んだ笑みを浮かべて日馬にそう告げた。日馬はいきなり核心を突かれて挙動が止まる。


「俺は慈善事業をしてるわけじゃないんでね…交換条件といこうじゃないか。」


 実際はかなりの慈善事業をしているが、まぁそれはこの際おいておくことにしている。


「猫又、あいつらが子猫の時に掛けられた術は五行っつー爺さんで、そいつは俺を殺しに来た時に返り討ちにして殺した。」


 日馬が知りたかったことを今村は簡単に教える。そして続ける。


「あのレベルの呪いを解けるのは俺しかいないぞ?」

「っ…」


 今村の言葉を受けて日馬は黙った。そして、静かに頷いた。それを受けて今村も笑って頷く。


「それでいい。じゃ、話を戻そうか。」


 今村はこれから何をしてもらうのか日馬に話した。



 

 途中段階で更新してしまい申し訳ありませんでした。


 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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