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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間13
271/644

ちょっとした話

 空間や時の狭間。あらゆる干渉を受けない一つの世界にして宇宙。またとある1つの星だけが存在し、そこに唯一ある建造物の館。


 そこには6柱で世界の安寧と秩序を図る最高神の内、2柱がいた。彼女たちは過去において絶大な力を振るったが、現在その力は必要ないとそこに隠居している。


「何故…こんな確率で…」

「8割…これまでの引きから考えてもはやおかしいですよ…」


 その絶大な力と軽く微笑むだけで世界を掌握できるほどの美貌を兼ね備えた2柱は原神が3姉妹の次女、【可憐なる美】こと、ミニアン・シェーン・フォルメコンと末妹【無垢なる美】ことセイラン・シェーン・フォメルコン。


 彼女たちは現在ショックから立ち直れずに侍女がすべての世話をするのに任せきりの状態になっている。


 彼女たちの想い神がいた時はそれだけで幸せ気分だったのだが、いなくなるとあの時にもし引き当てていれば今もいて、結婚について考えていたのに…と落ち込み始めてそれが続くことでこの有様になっている。


「会いたいなぁ…僕が目立たなければなぁ…」

「会いたいですね…次来てくれるのはいつでしょうか…」


 二人は顔を見合わせて溜息をつく。その姿はそれだけで慣れているはずの侍女の何人かを魅了の余波で気絶させる。


 そんな倒れた侍女が運ばれて行く時だった。不意にインターフォンが鳴った。


「…?誰だろう?」

「【旧神】が一柱、【運命神】様がおいでです。」

「…君はいいよね。結婚して…」


 最近ミニアンの視界に入るたびに恨めしそうな顔を向けられる古株の侍女はミニアンのジト目に眩暈を覚える程の魅力を感じるがそれを意思の力でねじ伏せる。


「はぁ、あの御仁か…あ、ここにも仁の文字が…あ~…あぁ…とりあえず入ってもらおう…あの方は目立つし…」

「……かなり重症そうです…いや、重症ですねこれは…」

「…来てたのかい。」


 ミニアンが訳の分からないことを言っている間にセイランが指示を出して客を招き入れていた。場にはティーセットが準備され、焼き菓子が茶請けとして出ている。


 現れたのは赤みがかった金髪をした赤縁のシャープな眼鏡をかけた…一言でいうならば学校にいれば男女問わず誰もがイケナイ妄想をしそうな女教師だ。


「…また旦那様絡み?」

「うん…聞いてくれるかい?」

「まぁ、あの方の話なら。」


 ミニアンは少々引っ掛かりを覚えたものの、今は喋りたい気分だったので考えを外にやり、セイランと一緒に愚痴を始めた。


 話が終わると【運命神】は溜息をついた。


「…流石と言うか何と言うか…今は今村さんって言ってるんだっけ?」


 セイランの首肯で【運命神】は続けた。


「今村さんはねぇ…アレ、何なんだろうね…」

「侮辱は許しませんよ?」

「前みたいに説得されても聞かないからね?」


 【運命神】の思案顔を見てセイランとミニアンは先に釘をさす。【運命神】は苦笑いして続けた。


「いや…実際に会いに来られたから…うん。アレは強烈だね。だって【運命】を捻じ伏せて生きてるし…私も読めなかったから…」

「!僕の自慢の旦那様に会ったのかい?どうだった?」


 ミニアンのテンションが上がる中、セイランは寝室に向かった。どうやら寝るつもりのようだ。


「いや…うん。強烈としか言いようがないかな…私、初めての経験を幾つもしたのに自然体で普通に帰ったし……近くの私たち(・・・・・・)皆に羨ましいって。」

「…初めて(・・・)…?」


 ミニアンから恐ろしい気配がしたので【運命神】は即座に説明する。


「いや、まずね。私にいきなり訪問してくるって時点でもうびっくり。『確率視』の反応もなかったのに今村さんいきなり来たという点で一点。初めて仕事の遅延をしたのが一点。初めて技を見て理解された点で一点。初めて仕事が予定より早く終わったので一点。初めて…」


 この後27点話されてミニアンは自慢げに頷いた。


「流石僕の旦那様。」

「…それで片付ける辺り流石だなぁ…」


 本当はミニアンにも言っていないことが3点あるが、それは言うつもりもないので黙っておく。


「…あ、そうだ。絶対に裏切らないなら君も仁のハレムに入れるけどどう?」


 その言葉を受けて【運命神】は『確率視』に力を入れた。原神はとても読み辛いが完全に読めないという訳ではない。


「…どういう意図?生憎だけど、私は秩序ある者として処女神であることを止めるつもりはないのだけど?」

「そろそろ待てなくなったんだよ…【完全なる美】に協力してもらって仁を女狂いにしてでも手に入れたいくらい…」

「【完全なる美】…ねぇ…彼女、確か…」

「自分の婿に相応しいって神を見つけて、その神を探し回ってるよ…今忙しいって協力要請は却下された。」


 【運命神】はその事実は知っている。


 その上実際に【完全なる美】の依頼で探した。しかし、見つからなかったのでガセ情報だったのではないか?と諭したところ無能!と叫んで出て行かれた。


「…あ、そうそう。名前が近かったから思い出したけど…【完成された美】…」

「元姉上のとの仲裁なら聞かないよ。仁を消そうとした害悪と僕には何の関係もないからね。」


 一瞬苛立たしげそうな顔をした後、無表情で一気にそう言うとミニアンは話を戻してまたムカついている顔で続けた。


「【完全なる美】もムカつくんだよ。旦那様の顔を見せたら鼻で笑われたからね。『普通の顔。取り立てて騒ぐこともなし。そんなことより私のダーリンを探しすのを手伝って。ダーリンの顔見たら絶対虜になるよ?』って…僕は仁専用だ!」


 世の中の神々が今すぐ今村を八つ裂きにしかねない言葉を吐いたミニアン。【運命神】も苦笑を絶やさない。


 その後も会合は続き、起きたセイランも混ざって色々な話に花を咲かせた後、【運命神】は帰って行った。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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