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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間13
270/644

同時期

 天界。膨大な書類を前に小さな幼女が難しい顔をして思考がどこかに行くのを何度も止めながら書面と闘っていた。


 そして目の前の書類に最終確認のサインをすると一気に脱力した。


「これで終わりです~!」


 天界の主、ヴァルゴがあどけない声…彼女なりの雄叫びのつもりでそう言ってペンを降ろすと周りがざわめき、彼女の秘書とも言える男がヴァルゴに声をかけた。


「天帝様。この後のご予定ですが…」

「そんなもの決まり切ってるじゃないですか~」


 ヴァルゴは大平原の名を冠する胸を張ってどことなく誇らしげな顔で答えた。その魅力に今村が面白くなりますように、との願いを込めて集めた天界の彼女の側近集ロリ・ぺドたちはもれなくノックアウトされる。


「仁さんのところですよ~!」


 小さな手を握って意気込む天帝ヴァルゴ。今回の下界で彼女は告白を成功させるつもりだ。


(聞こえるまで頑張って、聞こえてからは…ん~多分良いって言われることは考えられなさそうですから告白とアピールですね~)


 今村が簡単にいいよという姿が全く想像できなかったし、過去の話もみゅうと名乗る少女から聞いているのでそうそう上手くはいかないだろうなと分かっている。


(ですけどもう諦めるって選択肢はないんですよ~覚悟してくださいね~)


 本当にあどけない顔にどことなく妖艶な笑みを浮かべたヴァルゴはそう心に決めて下界する準備を整えた。












 地獄。亡者がひしめき、刑による絶叫を上げる中。その叫び声が聞こえない隔離されている獄卒たちの住む場所の中央にある城。


 その一角で紙の要塞といえる書類を右から左へと流していく部屋。最高執務室があった。


 しかし、今日はその流れが完全に止まっている。いや、その前に書類が一切ないのだ。


「ヘヨルミ様。天界が何をしてくるかわかりません。長期の現界は…」


 彼女の秘書兼執事の男が言外に早く帰って来るように言うが、サラは事もなさげに軽く答えた。


「あぁ、天界の主も長期休暇に入るから別に妾がいなくとも大丈夫じゃ。」

「…は…?」

「まぁ別に気にしなくていいという事じゃな。」


 サラはそう言って服について考える。この前怨念が宿りそうな勢いで作られた服はこちらに戻って来ても一人で何度か着たが、彼女的に今村に迫るにはもう少し色気が欲しい所だな…と感じさせた。


(むぅ…であればやはり今の格好のままいくべきかのう…?)


 パレオ付きのビキニより多少布面積が多い程度の服装だ。地上に降りれば露出狂と言われても言い返すことは出来ない。が、まぁ「幻夜の館」に直行するつもりなのでこれでいいか。と決め直す。


 彼女も今回の目標は告白、及び今村の心の氷を溶かしていずれハーレムを築いた時に自分の地位が高くいられるようにアピールすることだ。


「それじゃあの。」


 何はともあれ彼女はいちゃいちゃできれば結構満足なのでそれを楽しみに現界した。













「…あーっ!もう!これ全部偽物!」

「兄ぃはどこ!?」

「ひゅー♪慌てる乞食は貰いが少ないっての。Are you OK?じゃもっかい行きましょ!パーティーダンスターイム!」

「そんなのに付き合ってる暇ないんだよ!『カーレリッヒ』!」


 第2世界某所。今村の反応を追ってこの場所に来ている自称姉の絶世の美少女アリス。そして自称弟の美少年アーラム。

 そして対峙するのはライアー。そしてよく分からないテンションが高い男だ。


「あらら釣れないお人。嫌になっちゃうね。」

「本当、嫌になるねぇ…ま、頑張れ頑張れ。『超詐術』俺アリス様好きなのに~」

「…だったら幸せを願って本物を出してくれる?」


 ライアーが何百回目、何千回目か分からない黒い直径2メートルほどの球体を大量に出す中、アリスが端麗な顔を怒りで少しだけ歪めながらそう言うとテンションが高い男は腹を押さえながら爆笑した。


「アハハハハ!幸せを願うんならあの人に会わせるわけないじゃん!お頭はアレで完結してるんだから!割り込む意味が分からない!」

「そーそー。彼と結ばれるために努力するなら俺を結ばれるようにしてみ?このライアーたったの30秒で落ちるよ?」


 ライアーの合いの手が入るとアーラムは今回出された物の中には誰もいないことをアリスに告げる。

 その瞬間アリスが輝くと全てが破裂した。


「本っ当…いい加減にしてくれないかしら…こちらは誠意を見せてゲームに参加してるのよ?」

「せーい?ねぇねぇライアーそれって美味しいの?」

「いや、イヤラシイ。やだ、せいいとか言っちゃった。恥ずかしい。」


 頬を染めてくねるライアー。その芝居が終わると両者爆笑。


「この…っ」

「流石、正の神様方!誠意があれば許されてみんなの意見が通ると思ってる!俺ら負の神とは分かり合えないってことですね!じゃあやっぱり渡せないなー。」

「そーそー。俺ら負の神の中でもかーなーり重要ファクターだしねー正の神に引き渡したらまた殺される。」

「「ねー?」」


 おちょくられるのも何百回目と化している。アリスはいい加減限界に達して始めた。


「お、震えてる。」

「ホントだ。会いたくて会いたくて震えてる。」

「姉ぇ…ここでこいつらを叩きのめしたら手掛かりがなくなる…押さえて…」

「………誰に向かって意見してるの…?私に指図していいのはひとくんだけ…」


 アーラムはアリスが本気でキレる予兆を見せていると判断して目の前の二人を睨みつけた。


「…一回退かせてもらうよ。」

「お、諦めた?」

「ま、彼らにとっちゃその程度でしょ。所詮正の神が負の神のことをそこまで重要視するわけがないって。」

「黙れ!アーラム…邪魔よ。私がこの世で一番ひとくんのことを想ってる…」

「うわー。面倒臭ぇ…」

「帰りなよー。たかが7204回で諦めかけてたんだし…その程度だって。諦めた方がいいって。」


 二人の煽りにアリスは激昂する。そんな中アーラムは比較的に冷静だった。アリスが毎回毎回本気でキレているのでそれを見て自分は落ち着いているのだ。


「…まさか。」

「ん?どした坊や!マミーのおっぱいしゃぶりたいって?」

「アリス様にお願いしなよ。簡単に今村さんを諦めるくらいだしお願いされれば自分の体も結構簡単に諦めてくれるかもよ?」


 アリスは激昂を通り越して無表情になった。アーラムはそんな煽りに耳を貸さない。


「死ね…」


 アリスはもうキレ過ぎてゲームから降り目の前の二人を殺すことに専念することにした。それを受けてテンションの高い男が笑いながら更に煽る。


「やだよ。ボクちん死にたくなーい!」

「…『カーレリッヒ』。」

「オイオイ何してんの?説得工作?無駄無駄。」


 アーラムが変なタイミングで術を使ってきたのを受けてライアーが茶々を入れるが、アーラムは少年の顔には似つかわしくないニヒルな笑みを浮かべた。


「僕は帰るよ。あぁ…もう。兄ぃのことになると思考力が低下して嫌になるね。」

「ふーん。やっぱその程度か~」

「ほらほらアリス様!弟君帰るってよ!」

「まぁ、そうだね。兄ぃの所に帰るよ『神氣』がここで途絶えたからって…タイミングがいい時にしか出ないって…あぁもう…僕は馬鹿だ…」


 アーラムの言葉を受けてライアーとテンションの高い男は顔を見合わせて頷いた。


「「気付かれたっぽいね。」」

「じゃー」

「これで!」


 そして二人が消えると空間が捻じ曲がり、上下、前後、左右、すべてが曖昧な空間になり、笑い声が響いた。


「「正解正解大正解!誠意に対して悪意を持つ。これぞ負の神!あの人の準備が終わるまで逃がさないよん♪」」

「……八つ裂きに…いや、先にひとくん…」


 アリスはこの状態になって全てを把握したようだ。アーラムが嘆くように遠距離から術を掛ける。


「姉ぇ。これ、ちょっと時間差でかかるけど…兄ぃの足止めになるからちょっと守ってくれない?」

「…危険なのじゃないでしょうね?」

「うん。採取用…兄ぃが使う色んな物の材料になる奴を出す…」


 二人は脱出に向けて動き出した。





 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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