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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十三章~強化年間~
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15.ストレスは危険

 結局、拾ってきた子。茉優は自力で姉の雫を倒した。圧勝だった。その上帰るつもりはないらしい。

 記憶は戻ったが、男がしたことと今村がしたことは大して変わりがないし、食事はこちらの方が美味しいし、男は顔がいいが、今村は対価を求めないので楽でいいと思ったからだ。


「はぁ…やっぱ愛情とかはすぐに消えるもんだな…まぁ知ってた。」


 精神体は延久の時を経ても消えない愛情に触れているが、今村は断言した。周囲はそれを真っ向否定するがどうせ聞こえないので心中だけに止めておく。


 因みにその男は今村の「傾世の美」を飲んだ姿を見て「顔か!なら俺も!」と今村の薬品をこっそり飲んでみて「毛」アレルギーになった。


 「傾世の美」と名付けたそれを人が服用する状態を見て見たかった今村はそれを見て診断したかったのだが、本人のありとあらゆる毛が抜け、毛と判断する全ての物に近付くと蕁麻疹。触れるとひきつけ。酷い時には呼吸困難。最悪に至っては死に至るという事で諦めて宇宙の彼方へ放り投げた。


 一応、鞭毛も繊毛もないスライムたちの楽園に投げ込もうとも思ったのだが、人型をとるスライムの髪でもダメだったので諦めた。後は知らない。


「んー…何かなぁ…そろそろ放浪始めるかな…あの二人も帰って来そうだし…」


 そして今村はこの世界を離れようかなと何となく思っている。現在ライアーに騙させて第2世界をうろうろしているアリスとアーラムもそろそろ仕掛けに気付くころだろう。

 また、今村は常人であれば頭がおかしくなる量の仕事をしているが、これはそろそろ外部の人を雇って雇用に結び付ける必要性を感じて来たのだ。


 後、単純にアリアたちに調査させている所に行きたい。楽しそうなのだ。


「でもなぁ…」


 その為には祓に掛かっている「スレイバーアンデッド」を何とかしなければならない。いい加減真面目にやって欲しいのだがお人好しなのだろうか、嫌悪の感情を出さない。


(俺の昔話をしたのがいけなかったか…その程度の扱いには慣れてるから普通に軽く言ったんだがなぁ…)


 これ以上酷い事は思わない様にしようとでも同情されているのだろう。生れて間もない小娘に同情されるほど自分は落ちぶれていないのに…


「んー…きっかけが欲しいよな…例えばみゅうがクロノと言うらしい【時間神】を見つけるとか…」


 みゅうたちの探索結果と「アカシックレコード」の書物を見た結果、特異点で負の神、そしてまだぎりぎり狂っていないという点からクロノという神が自分にとって都合がよさそうだと決まった。


「あー…もしくは14年かけるあの術式つかうか…?でも時間かかるしなぁ…」


 要するに今は実力が足りていないのだ。鍛えているが、一朝一夕でそんなに急激に変わるようなものではない。


「んーでも他人に頭下げるのは趣味じゃないし…」

「先生お茶を…」


 今村が色々考えていると祓がお茶を持って校長室に入って来た。今村は呟きを頭の中で止めることにして祓を見た。


「?どうかしましたか?」

「…いや、悪いね。」


 美人だなぁ…と感じる。天然で小首を傾げているのであざとらしさも感じない。そう言った動作が自然と出るようになっているのだ。


「いえ、私がやりたいので…」


 因みにお茶汲みに関しても今村の知らないところで何人かによって争奪戦が繰り広げられている。

 祓は今村と会った年に花見をしながらお茶を点てる今村を見て、それをしてみたいと茶道を軽く習い、お茶や紅茶の淹れ方も教えてもらったのでこの争いに負けたことはない。


「…どうかしたんですか…?」


 今村が少し様子が変なので祓は警戒する。今村にその警戒は筒抜けなので印象が悪くなるのは知っているが、祓はそうしないと相馬と変な目に遭わされるのでやらざるを得ない。


「そろそろ…ね。」

「…何ですか?先に言っておきますが…相馬と私の仮想恋愛は全て嫌です。」


 今村の笑みが深くなる。何も言っていないのに勝手にそんなことを言う程度には意識しているのだと楽しくなって来たのだ。


「あぁ、まぁそれでもいいんだが…別の話な。」


 今村は最近撮った参考資料は失敗のケースだったからアレは要らんな…と記憶の整理をしながら祓に切り出した。


「そろそろ、本気出そうって話。『スレイバーアンデッド』とか、色々…ね。」

「嫌です。」


 即答された。


「…はぁ、今まで失敗だったからって次も時間とるだけじゃない。今回は成功するまでやる。」

「嫌です!」

「…まぁ…じゃあこっちで勝手に進めとくよ。一人でやるのは結構面倒なんだが…まぁ仕方ない。アレは俺の所為だし…」


 この後今村の聴覚が遮断される。祓が真顔で何か言っているが、今村の耳には入らない。おそらく、「今頃本気出すのか…だったら最初からやれやゴミ屑が≪自主規制≫だ…死んでろ禿げ…」とかそんな感じのことを言っているのだろうな~と済ませ…


「言っておく。俺は『飛髪操衣』がなくても禿げてない。」

「…え?」


 禿に関しては昔から【無垢なる美】と【可憐なる美】によるストレスが気になっていたのでスルー出来なかった。いきなり「飛髪操衣」で髪が打ち止めになったとかいうことを想像して育毛剤を一度創ったくらいだ。


「先生先生!うわっ…祓さん何で泣いて…?」


 そんな状態の場にぴったりと体のラインが出る服を着て胸元を開けている相変わらず扇情的な服を着ているマキアが入って来て、祓を見て驚いた。

 今村は話を切り上げることにして、とりあえず先程の事について念を押すことにした。


「ナイテ?何それ。とりあえずそこは強く言っておく。俺は禿げない。今は半神だが一応神だ。禿げない。人型タイプだからって禿げないんだ。」

「先生も先生で何言ってるんですか?」


 マキアは状況が理解できなかった。いつも無表情で今村の話の時だけ感情豊かになる祓は泣いているし、今村は禿げないと力強く言っている。


「…ま、いっか。」


 が、こと今村が関する事象には理解不能なことなんて滅茶苦茶あるに決まっている。常識が違うのだから当然だ。マキアはその辺を割り切ることにしている。


「…で、マキアは何の用?」

「あ、出来れば祓さんはちょっと…お客なんで…」


 今村と祓はフェデラシオン関係かな?と判断して今村は祓を祓の自室に飛ばした。


「んで?誰を連れて来たんだ?」

「11番目の血族の転生者です!」


 マキアは豊かな胸を張って今村にそう言った。今村の口の端が吊り上る。


「何と言ういいタイミング…クックック…素晴らしい…」

「今は日馬くさま 飛影って名前の高校1年生なんですけど…」

「いや、うん。良いと思う。…で、何の要件?」


 そう言われてマキアが微妙な顔をした。


「あー…ちょっと研究用に魔力を集めてたら何か来ちゃいまして…で、あ、【赤狼族】の『拒絶の力』だ!と思って連れて来ちゃったんで…」

「…まぁ、能力者ならどっちにしろ…うん。まぁいんじゃね?そろそろ新学期だし新しい学校に転校しても…ここなら特に違和感ないし…」

「じゃ、中に入れますねー!」


 今村は口の端の釣り上りを消して、内心だけわくわくしながら日馬が入って来るのを待った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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