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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十三章~強化年間~
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11.曲の力

「あ!今村さん!」

「よぉ鈴音…こいつが見学希望者。イリアだ。」

「ふわぁ…!い…今村さん!阿桜リンさんですよ!」


 興奮して本日何度目かの感嘆の声を上げるイリア。今村は生暖かい目でイリアを見る。


「籠の鳥設定はどうした?」

「音楽関係だけ別でしたから…ラジオで音源を聞いて音楽雑誌の一部は見せてもらってましたから…異色の音楽パフォーマンスとしてリンさんは世界的にも有名ですから憧れです!」

「…じゃあ『魔術』のことは知っててもおかしくないんじゃ…?」


 鈴音の音楽舞台は魔術と科学の融合体だ。それを評価されているので有名になっているので鈴音を知っていれば魔術のことを知らないわけがない。


 が、イリアは小首を傾げた。


「まるで魔法みたいな世界観という事は知ってましたけど…流石に自分の目で見ないと雑誌用のCGと…」

「あ、まぁそうだな。」


 空を飛んで様々な飛行を見せていても雑誌に上がった時に加工されていないわけがないと思っていたのだ。


 普通に考えてそれは正しいのだが、今回はその常識は敗れていた。そんなやり取りを二人でしている間にマキアと鈴音がこれまでの経緯を話し合っている。


「…何か歌った方がいいですかね?」

「!い、いいんですか!?今村さん!歌ってくれるみたいですよ!」


 イリアは興奮して今村のローブを引っ張りまくる。今村はびくともしないが生暖かい眼だけ向けておいた。


「よかったな。」

「はい!」

「あ、今村さん。演出は…」

「マキアでもできるだろ。」

「おっ任せあれ!」


 こういうことでスタジオで急遽演奏会が開かれることになった。


「先生先生!楽器貸してください!『終末のアンサンブルセット』を!」

「…まぁいいけど死ぬなよ?」


 呪具なので使い過ぎれば最悪死ぬ。だが音は良いので今村は普通に貸した。マキアは大量の楽器を受け取ると、一度トランペット、チューバ、ホルン、フルート、コルネットなどの管楽器を確認。


「…フルートが先生が最後に使った楽器…ですね。」

「何で分かる…まぁいいけど、差し口は自分用のを作ってくれ。」


 楽器の息を吹き込む場所、要するに口をつける場所の保護器を作れと言ったのだが、それは既に手遅れだった。


「ふぇ?」

「……それは捨てる…」

「じゃ、貰いますね。」


 口の中でもごもごされている差し口を見て今村は廃棄を決定。マキアはお持ち帰りを決定した。


「…ってか、マキアは楽器弾けるのか?音を発生させた方が…」

「出来ますよ~!先生が何でも弾けるから全部合わせれるように頑張りましたよ!」


 豊かな胸を張るマキア。奥ではバックダンサーたちが打ち合わせをして―――


「!一級のバックダンサーを連れて来なければ!」

「え?あ、ちょっ…」


 今村は彼女たちを見て瞬時に思い付いたことを実行するために「幻夜の館」に戻った。



















「お、今の時間は空きコマだったよな。」

「んー?お、今…じゃなくて校長。」


 今村が向かった先は職員室。そして早乙女の席の前だった。突然の今村の出現にも慣れた様子の彼はお茶を置いて今村の方を見る。


「どした?ってうわっ!」

「大漁大猟…では!」


 他の人は授業中なので早乙女が助けを求めても誰も来ない。騒がしい早乙女を連れて今村は元の場所に帰った。



















「うわっ!何すん…て!阿桜リンちゃんだ!」

「…今村さん…?一級のバックダンサーをって…?この人ですか?」

「そうだ。」

「サイン…サイン…ちょ今村!何か書く物だして!」

「お前の表皮を剥いでなめそうか?立派な羊皮紙…あぁ人皮紙作るぜ?」


 今村は普通に笑って早乙女を見た。早乙女だけ若干時が止まっている中話は進む。


「えっと、皆女性アイドルなんですけど…非常に浮きますよ?」

「大丈夫だ。問題ない。」

「…それ私がいた所じゃ問題しかない…まぁいいんですけど。」

「性別が駄目なら変えればいいじゃない♪」


 今村はそう言って早乙女に何かしらの液体を飲ませようとするが流石にそれは不味そうだということで鈴音が止めた。


「え…じゃあ色々置いておきますけど、踊れるんですか…?」

「そりゃもう。『舞踊の王(ナタラージャ)』の名を冠するくらい。」


 因みに早乙女は現在書く物を召還術で呼ぶ準備をしており話を聞いていない。


「えっと術式耐性は…」

「俺が連れてきたのに駄目だと思う?」

「…それはないですね。はい。」


 鈴音が納得したとほぼ同時に早乙女は色紙とペンをどこかの世界から取り出した。


「ふぅ…あ!サインお願いします!」

「お前は今からダンスパフォーマンスだ。それがいい出来なら貰えるし何ならもっと良い物貰えるかもよ?」

「え?え?何?」


 混乱している早乙女を半ば強引に奥の部屋に捻じ込んで脳内に直接説明を施す。すると案外簡単に早乙女は納得してくれたようだ。


「…まぁ、踊るのは嫌いじゃないし。びっくりさせれると思うからいいよ。」

「じゃ、行って来い!」


 そして舞台は幕を開けた…



















 客席。2人だけの聴き手に対して20人のパフォーマー。目の前に幻想的な空間が広がり、イリアは思わず席を立って今村の手を引くほどの素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられていた。


「凄いです!凄いですよね!今村さん!」

「あぁ…特に奥にいる一人だけダンスキレッキレな人を見てごらん…?」

「…?え?あの大きな人ですか…?」


 今村は笑いを堪えながらスカートをたなびかせてダンスを繰り広げている奥のバックダンサーを指さす。大きいと言っても160㎝後半の人だ。


「…ま、今は鈴音の歌が聞きたいんだろうし…そこまで気にしなくていいけどね。」

「?はぁ…リンさん凄いですね…それにバックグラウンドミュージックも…」


 そして夢現のままパフォーマンスが終わり、イリアはスタンディングオベーションを以て終わりを歓迎した。

 そして今村が立ち上がる。


「じゃ、対バンしよっか。ん~1人で歌うかなー…それとも…アリア連れて「御前に」…来たんなら仕方ない。最近来るの早くない?」

「【魔神大帝】様のお呼びですのにまだタイムラグがあることが私の不徳のなすこと…!」


 登場と同時に伏せていた顔を上げて悔しそうに尊顔を歪めるアリア。その顔を見た者は時を忘れ全てを忘れる。


「そんな悔しがられても…あ、後色々ドン引きされるから今日はほどほどにして。そのモードは禁止。」

「ですが…「あ?」わかりました…」


 そして次の瞬間にアリアはその凄まじい美貌の顔を今村の胸に埋めて深呼吸を始めた。


「充電中ー充電中ー」

「…え?何こいつ…壊れた…?」


 思い当たる節が結構あるので何とも言えない。特にこの前ミニアンの手によって試練という名目の拷問は簡単に心を破壊する力があるだろう。


「いえ、お父様が、はぁ…ん…ますます好きで…」

「試練の後遺症…あーまぁいいや『魅力減退』。」


 とりあえず治すのは出来ないので後で変えることにして、今は引き剥がして対バンをすることにした。


「えーと、『jfkoyqdsbbku』な。」

「あ、はい。」


 アリアに術を掛けて顔を見ても大丈夫な位に『魅了チャーム』の力を弱めると今村はこの世界では聞き取ることが出来ない発音の歌を歌い始めた。


 伴奏・音響・演出全てを今村が一手に引き受けながら踊って歌う。アリアはその声に合わせて歌うだけだ。


 その結果、全員のテンションが破壊的に上がり、狂ったように笑いながら踊り出し、終ると同時に眠りについた。


「…2曲目が…」

「お父様ぁ…充電中ー充電中ー」

「何コレ…」


 とりあえず歌の能力に関して減少していないということはわかったが、目の前の惨状について少々後始末に関して面倒だな…とだけ思った。





 

 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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