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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十三章~強化年間~
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4.自治区へフライト

 そして、実験をしながら心身整理を終えた今村は帰ることにする。


(まぁもうなるようにしかならんな。一々考えるの怠い。あいつらのことは忘れよう。)


 こんなものでいいのか?と思うような結果に陥ったが、実際どうしようもないので諦めた。

 それに、原神を相手に出来るような状態になるのであれば失言から取られた言質から逃げることだってできるだろう。ならば強くなっても損はない。いや、むしろ得しかない。


「…っと?何だ…?」

「どうかしました?」

「いや…何か今世界に干渉が入った。ん~…見に行くか。」

「え、ですけど飛行機の時間が…」


 そこにすでに「レジェンドクエスターズ」…というより、今村専用機が来ているのだが今村はそう言えばそうだったな…と気付いた。


「まぁ…ちょっとだし…ん~時間遅延の術は最近効きが悪いしな~。1分位なら大丈夫だろ。」

「…多分大丈夫だと思います。」


 という事で急いで今村と祓は歪みの場所へと移動した。



















「…こいつかな?」


 中央大陸の南、ウトピアの南方で南の大陸のモナルキーアの北方。国境の境の海

にそれは落ちていた。


「…えーと…?」

「神だな。うん。第3世界…じゃ中級って所。」


 今村は小柄で中性的で整った顔立ちの子どもを海から拾い上げていた。腕を掴んで空中に吊るすという結構ぞんざいな扱いをしているが、敵の可能性もあるので警戒は怠らない。


「『呪式照符』っと…うん。」


 素性を確かめていると子どもは目を覚ました。一瞬祓の方を見た後、今村の方を見て目を厳しいものにすると手を振り払った。


「誰…?」

「ん?通りすがりの化物だよ。お嬢さん。ま、記憶喪失だから仮に俺のことを知ってたとしても知らんだろうがね。」


 祓はまずお嬢さんという言葉で子どもが少女だったことを知り、次いで記憶喪失という事を知って驚いた。


 少女は一層今村に警戒を強めたようだ。


「…何でボクが記憶がないのを知ってる…?」

「見たらわかる。後その一人称は止めてほしい。とある奴を思い出すんでね。」

「ボクがボクと言って何が悪い…」


 少女が今村を睨みつけると今村は馬鹿にしたような顔をした。


「まぁ自分の名前も憶えてないなら無理か。…お前さんの名前は茉優まゆだよ安心しろ本名だ。」


(…尤もそれは人に付けられた名前であって神号は違うけどな。クックック…色々面白そうなの拾ったなぁ…)


 「呪式照符」にはこうあった。


 人に恋をしてしまったユディアスム世界の海の泡沫を司る神の娘、アキュリオス。双子の姉である海の飛沫の象徴であるガーニュメルデスに謀略によってゲネシス・ムンドゥスに流され、不死の呪いをかけられる。現在、全エピソード記憶を喪失中…《以下対人関係及び役割などについて》


「何で知って…?」

「色々あってな。とりあえずウチに来い。住む場所もないのは困るだろ?」


 茉優は少し逡巡した後、祓を見て頷いた。


「…変なことはしないで。」

「少年にそんなことするかよ。俺はノーマルだ。」

「ボクは女だ!」

「はっ!こいつ見てもう一回言ってくれ。」

「お…女だよ…」


 祓を前に出して言わせてみると声が小さくなった。そして途中から目を逸らす。一頻りからかった後今村は茉優を連れて元居た場所に戻る。


「…フライトの時間は大丈夫だな。」

「お待ちしておりました。どうぞ。」


 飛行機に入れるにあたってびしょびしょでは困るので途中で乾かしておいた。塩が体に付着していたので服についていた分と外に触れている分だけ取り除くと飛行機の中に入れる。


 乗務員は特に何の突っ込みも入れずに今村が変なのを連れてきたことを受け入れていた。


(はー…慣れたらいかんのだよ。突っ込み精神を忘れたらなぁ…)


 自分の所為だと知ってはいるが、そこは突っ込みが欲しかった。そんなことを思いながら飛行機は離陸する。


「…これ自分で飛んだ方が速いんじゃ…」

「旅情を理解しな。あと多分空腹だろうから何でも食え。一応神の端くれだから何食っても大丈夫だ。…あ、機体は喰うなよ?」

「…頼まれても食べないよ…」


 祓はその間に術を使って軽い調理を行っている。少女の為ではなく今村の為だ。


「あ、どうぞ…ついでにどうぞ。」

「あ…ありがとうございます…」


 しかし、話を聞いていたので少女の分も作って渡す。今村は自分の分も少女に渡しておいた。


「…ありがと…」

「気にすんな。これから色々大変だしな~」


 祓はショックを受けているが今村は気付いてない。頭の中はこれから何が起こるかの想像と妄想でいっぱいだ。

 この少女の視点で良い物語を作ることを考えている。


(やっぱ序盤のパワーバランスがおかしいキャラは…うん。)


「あ、ついでに念話しとかないとな~」


 並列思考で色々やっておく。そんな中で祓が新たな料理を出した。一度少女の方を見たが、まだ先程の料理を食べていたため、そちらは食べておく。


 祓は隣で安堵しているが今村はまたそれに気付かない。


 しかし、対面の少女は祓の様子を見てえ?もしかして?とくらいは思った。それほど分かりやすいのだ。


「え?あー…マジで?…今から帰ってくんのに?…まぁしゃあないか…あいよ。了解。」


 そんな感じで飛行機の中で時間を過ごしていたが、今村の念話が終わって今村はテンションが微妙に下がっていた。


「どうしたんですか?」

「…サラとヴァルゴ…知ってるか?」


 もちろん知っている。第3世界の地獄と天国の主だ。脅威の胸囲を持つ地獄の女帝サラとそれと対照的なロリロリ少女の天帝ヴァルゴ。彼女たちは反独身貴族連盟でも幹部レベルにいる。


 ということで祓は頷いたが、今村は苦々しげにしている。


「…携帯買いに行くから付き合うようにって…超怠い。目立つし…」

「デートですか…」

「頭大丈夫か?あいつらが俺を相手にするわけないだろうに…」


 何とも言えない顔で祓は今村を見る。寧ろ相手にしてないのは先生の方なんですけどね…と思っていても言えないのだ。


 最近、寮の一階に設立された聴覚喪失ゾーン及びに襲撃・不安増幅ゾーンで一同こんな思いをさせてたのかと知り、最近は告白の類を控えているのだ。


 とはいっても1日1回はしているし、何かしらのイベントの際には確実に何か言っているのだが…


「はぁ…まぁいいけどね…帰ったら1日潰されるのが確定しただけだし…」


 そんなことを思いながら一行は飛行機に乗って自治区へと帰って行った。





 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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