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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間12
253/644

本気出す

「はっはぁ…本気ってのは基本的にやったことはないが…まぁ出さないといけない時まで出さないやつは唯の間抜けだ。」


 今村はもの凄く頑張り、家のスペシャリスト座敷童の力も借りることによって相馬に祓の「スレイバーアンデッド」の所有権を一時的に(半日ほど。新築した寮の中限定)付与して「アカシックレコード」にアクセスした。


「…来るのか。まぁ後回し。」


 精神体にアクセスがかかったが今村はそれを拒絶。「特典」の所為でそう言ったことにも制限が出るのだが、今回は今村のテンションが違うので跳ね除けることが可能だった。


 「アカシックレコード」に着くと司書に一応会釈だけしておいて鍛錬書を探す。


(うっへぇ…多いし並びがジャンルごとじゃなくて言語ごとだ…)


 今村が持っている「幻想図書館グリモワール」は今村の管理の下ジャンル別にした後日本語での50音順になっている。


 生徒たちに貸し出す貸出用の図書室はまた別になっているが…


 とりあえずは関係ありそうなものを片っ端から読んでいくことにし、目を通す。幸い、こちらの世界と元の世界は乖離しているので時間の流れもあまり気にしないでいい。


 ただし、精神体のイメージ力が弱まると体が衰弱するのでそこにだけは注意する必要があるが…


(…最悪みゅうの態度見るに俺と心中しかねんからな…神核持って白髪鬼になれば勝てるが…神核持つ前にやられたら終わりだ。)


 自殺はいいが他殺は望むところではない。死ぬタイミング位決めさせてほしいものだと思っている。


(というより死ぬのは別にいいけど負けるってのが気に入らん。)


 負けず嫌いの今村はそう思いながら自身が嫌いな術を行使した。


「ダブル」」


 嫌な顔をしながらその術を唱えると今村は2人になった。ついでに【玉】の能力で【目玉】を大量に複製してローブで書物を捲り大量の情報を捌く。


「「はぁ…この術嫌いなんだがなぁ…殺し合いしたくなるし…戦闘訓練以外じゃ使いたくなかったんだが…」」


 見事に小声をハモらせて更に嫌な顔をする今村。情報は統合するが出ている間だけ自分と乖離が進むので時々別人格になるまで発展するのが気に入らない。


 とはいっても主人格の今村には勝てずにサブとして使われる存在になるのだがそれでも自分という概念が増えるのが気に入らないのだ。しかし、今は手段を選んでいられない。


「一応アレの親に頼まれてるしな…約束は果たすさ。殺してでも真っ当な道に戻らせる。…お。これとかいいな。」


 自分の決めた道は譲らないがそれに沿う範囲内で約束は守る。そんなことを思考の隅に置いておきながら今村は情報の海へと身を繰り出した。






















「…まぁ帰りは捕まるよなぁ…」


 時間の流れという概念が希薄な神の世界で凄まじく長い年を過ごした気がする今村は元の世界への帰り道の途中で屋敷に撥ねられた。


「…この前はすまなかったよ。あんまりにも君が酷い事言うから僕も少し抑えが効かなくなって…」

「いーよいーよ。お前に殺されかけるくらいお前の正気を奪わせた年月の詫びに比べればどうってことない。…ただ俺に初物を捧げるという行為は絶対にダメだが。」

「まぁそれは決定事項なんだけどね。」


 今、今村は屋敷の中で6原神が1柱【可憐なる美】こと銀髪の滅世の美少女ミニアンと同じく6原神が1柱【無垢なる美】こと黒髪の滅世の美幼女セイランの居る屋敷に押し込められてミニアンから謝罪を受けていた。


「…だからお前ら相手いるだろ…【勇敢なる者】とあと変態。」

「……どうしたら許してくれるんだい?僕は何をすれば…」

「せーらん仁兄ぃとけっこんすうの!」


 ミニアンが絵画の一枚のような憂い顔を作り、セイランが今村に飛びついて抱き締める。そんな中今村は笑う。


「ハハハハハ!セイラン。笑えるジョークじゃないか。何の相手とか俺は言ってないぞ?ん?勝手に判断してるってことは脈ありだろうに……セイラン。ちょっと離れようか。精神体とはいえ俺の体の維持がキツイ。癒着する。」


 しかし、その笑いは途中で真顔に変えられた。セイランもあどけない顔つきに知性が宿っている。


「癒着すればいいと思います。…表の私は私になるのを基本的にとても嫌がるんですよ?こんなに短時間で何度も私にするって…どれだけ表が怯えてるかわかります?」

「諦めろ。世の中諦めが肝心だ。いい加減痴話げんかに俺を巻き込むなよ。」

「その言葉そっくりお返しします。いい加減私たちが本気と認めて諦めて結婚しましょう?世界が丸く収まりますよ?」


 消えるから無理!とか言ったら今回も酷い目に遭うのは間違いないので黙っておく。奥の奥の手もないし下手をすればセイランも迫って来るかも知れない。

 流石にそこまで来れば理性の勝率は1割を切る。前回だって面には出してないものの相当危なかったのだ。


 なので。


「いや、もしお前らと結婚するなら、あいつら2人を相手取ってもお前らを守り切るくらいの力が要るだろう?それもないのに軽々しくそんなことは言えないな。」


 と言っておいた。


 6原神2柱相手に勝てるというのは無理な話で、遠まわしに不可能!と言っているのだが、そこに突っ込みを入れれば「信じてないな。相手を信じれないのに…」的なことを言って逃れられる。


 そんなことを考えながら言った言葉だったが…ミニアンは目を輝かせていた。


「つ…つまり、認めてくれるんだね?」

「おにぃらいしゅき!」


 セイランも正のテンションが上がり過ぎて表に戻った。それでも力が緩むどころかますます入っているので今村は軽く死にかける。


「今の言質は貰ってるからね?可能性については拡大解釈しておいたから。」

「は…ざっけ…んっ!」


 セイランにキスの乱打を浴びせられながら目の前で何かの書類が出来上がっていくのを見せられる。


「古の法に則り、我が婚約者をここに制定する。独立する法に君臨する女帝よ!我が言葉、我が心を時の楔が果て、消えゆく中でも刻み付けよ!」

「せーらんのもすう!おねぇそのあいらおにぃおねあい。」

「うん。」


 不可能だろ。前世の全盛期でも「ε(イプシロン)モード」で女になって【勇敢なる者】の後宮に呼ばれたところでアレ(・・)をザックリいき、呆気にとられたところを不意打ちしまくって弱らせきったところで戦闘開始して引き分けだったのだ。

 しかもこちらは「魔神大帝」状態から「呪い」を付与され、とんでもなく弱化した。


 …まぁその後なんやかんやで「呪い」も使いこなしたのだが、それでも全盛期には及ばない。白髪鬼使って全盛期の6割といったところだ。


ほう・・のおねーちゃんおねあいします。おにぃとせーらんをこいびとにしてくらしゃい。」


 なのに、彼女たちは何も疑うことなく要求を吞んだ。怖い。


「頭おかしいだろ…」

「僕はね。生まれた時から決められていた僕とする時の予行と言って散々に手当たり次第女に手を出す変態が大っ嫌いだ。実際、奴は君が来るまで僕の所に殆ど来なかった。来たら来たですることしか考えてなかった。」


 何か自分語りが始まったな…と今村は疲れ切った頭で感じる。


「それでもあいつの力に勝てる奴はいないからね。誰も文句言わず、姉上と【創造せし者】は二人でいちゃいちゃするだけで何もなし。そんな時に君だけが助けに来てくれたんだよ?」

「助けたくらいで面倒な…この話もう何回も聞いた。」

「それだけ嬉しかったってことだよ。」


 どんな花でも勝てない魅力的な笑顔。それを前に今村は最近あった助けた話をしてみることにした。


「えーと、そうだな。この前異世界…まぁここからみれば大差ないけど。呼ばれた時に助けてくださいって言われた奴に後ろから刺された。」


 ミニアンの表情が凍りついた。今村は続ける。


「村を魔物の群れから救ってみたけど…まぁ化物呼ばわりされて石投げられたな。他にも【冥魔邪神】ってことでよく殺されかけるんだが、助けてくれ。見逃してくれって言う奴は何かしら持ってる。これはまぁちょっと系統が違うな…」


 セイランも儀式を終えて今村の方に戻って来た。


「あ、これも忘れてた。ちょっとこの世界を救ってくださいって言ってたところにバカンスに行ったんだが、生贄にされかけた。後、森で異世界からの侵略神が来て村が…ってなってたところに助けに行って蹴散らしたけど遅かったからメッチャ恨まれた。」

「……僕はそんなことしないんだけど?」


 ミニアンが少しイラついているようだ。今村は苦笑する。


「いや、別にお前がそうってわけじゃないが…助けてもそんなもんだろ?何で好きになるとか別次元に飛ぶのか今更ながら気になってね。」


 その後も前世の話をいっぱいする。脅威を退けると迫害。平和に導くと裏切り。仲違いに濡れ衣、その他色々に極めつけが【全】との一戦。


「…で、何で?」


 今村は素朴な質問として尋ねているつもりだ。しかし、ミニアンとセイランは何かを決めたようだ。


「仁。君はここで甘やかす。酷い目に遭い過ぎだ。」

「え、真顔で何言ってんの?」

「おにぃなんれ、そえれもたすけうの?」

「見てて気分が悪いから自己責任の下助ける。何か?」


 だいぶ前から馬鹿なことやってるよなぁ~と思わないでもないが特に労力でもないし自分から動いたものは助けることにはしている。


「おにぃ…」

「お前に憐れまれるほど落ちぶれてねぇ。」

「せーらんがんばゆよ!」

「何を?」


 とりあえず今村としては早く帰って「アカシックレコード」で得た情報を基に考えたことをしたいんだがなぁ…と思いながらこの2柱からは逃げられないので1泊することになった。




 ここまでお疲れ様でございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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