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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十二章~生徒と学校~
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11.ダンジョンじゃないですお家です

「フハハハハ!人がゴミのようだ!」

「んー…パパが言うと本気に聞こえるから気を付けてね?」


 10階の自室から見下ろした玄関にある復活の泉でずぶ濡れになっている生徒たちがわんさかいる。

 因みに、生徒でなければ入り口のドアに触れた瞬間即死だ。復活はその者が所有している悪意によって変わる。


「いやー…これ見てると昔を思い出すなぁ…俺がまだ若かった頃…あ、やべトラウマだった。」

「過去にもダンジョンマスターしてたの?」


 みゅうが可愛らしく小首を傾げるが、今村はとりあえずダンジョンじゃないと首を振る。


「ちょいと色々あったんだよ。」


 6原神に関しては口に出すだけで不敬と見做され直属の部下に殺される恐れがあるので抵抗できる状態でない限りは口に出さない。みゅうは少し不思議に思うがそれ以上は追及してこなかった。


「今ん所…最高階がマキアで9階か。」

「10階は酷いよね…1日1回しか挑戦権がないのに階段への扉に触れたら即死だし階段への道の一歩目でも即死だし…二歩目では髑髏マークがあるのにそこでは何にもなくてその先で即死だし…」

「ホップステップはい即死!って決まった時は今も昔も楽しいんだよ。」


 因みにそのエリアは地面に触れると即死か下の階に落とされる。各段の一定以上の空間には「神死毒かみごろしのどく」が散布してあり、ぎりぎり1メートルほどの空間を乱高下する重力加速度の中で突っ切る必要がある。


 当然一定の力で飛んでいると急に体が重くなり地面に触れ即死したり逆に軽くなって毒にまみれて死ぬので繊細な能力が必要だ。


 そんな中、髑髏マークの場所は休憩できるマスだ。その上空には毒もなく、下に落ちることもないし勿論即死もない。階段への道と13階段2つと4×9メートルの踊り場全てで60㎝正方形のマスが8個準備されている。


「…まぁ4マス使ったらその後は他のマスと変わらないけどね。」

「パパはあの子たちに恨みでもあるの?」

「いや~本性がちょっと出ちゃってな~破壊と殺しと快楽でつい…」


 今村はやっちゃった。みたいな顔で笑うが、一応9階が最高階と設定して攻略不可。立ち入りはしない方がいいよと立札を置いて10階の階段前の門には地獄の門よろしく「この門を潜る者は一切の希望を捨てよ」と書いてあるのだがそれでもマキアは諦めないのだ。


「まぁ、何気に結構楽しみだけどね。突破できるか。本当の地獄は上り切ったところからだし。」

「…みゅうも…ちょっとやり過ぎたかな…」


 因みにみゅうはそれら全部をクリアして今村の部屋に来ているが、建築した方であるし、色々規格外なので突破者の中に入れていない。


「さてみゅう。ここに来るのは別にいいんだが…」

「すぐ行って来るよ。パパ。連れてくるまで絶対に死んじゃ駄目なんだからね?」

「絶対って言葉はない。…それに見つけた後は死んでもいいってことか?」


 今村が意地悪く言うとみゅうは可愛らしい顔を顰めて今村の目をじっと見た。


「…いいって言うと思う?」

「あぁ勿論。」

「…こないだね。みゅうの所に変な人が来てね。テストって言って酷いことしたんだ。」


 急にみゅうは話題を変えて来た。歪んだ笑みを浮かべていた今村は意味が掴めず怪訝な顔をする。


「それはね、ずっとパパを想って裏切らないかってテストでね。幻覚の中でパパに殺されたり酷い目に遭ったり心を壊しにくるものな上ね。心のどこかで少しでもパパを嫌いになったら楽になれるって甘い声で言って来る奴なの。」


 今村はどこかで聞いたことあるものだな…何とも言えない微妙な笑いが出た。


「で、みゅうはそれ全部やったんだけど…目の前の人は残念そうだったの。」


 そこでようやく今村の顔にゆとりが戻る。


「そうかそうか。だよなぁ!有幻覚で殺したり酷い目に遭わせられたら流石に恋だの愛だの言ってられんよな!あったり前の感情だ」


 みゅうは首を振った。横に。


「ううん。ちゃんとクリアしたよ。でもその人が言うにはね、これ本物をクリアできたら特典があるんだって。恋愛許可証ってものが貰えて、それがあればパパに色々しても強い抵抗はされなくなるってものらしいんだ。その人の主さんが持ってるらしいんだけどね?」

「フフフフフ…」


 今村は何かもうえも知れない顔になって笑いだした。一定以上の感情が生まれると笑うしかなくなるのだ。

 みゅうはその幼い外見からは似合わない…しかしどこか絶妙に合っていると思わせる艶やかな笑みで今村の方に近付いた。


「ねぇ…パパ。話によるとクリアできた人が増えるとね。特典のグレードが上がるらしいんだ…みゅうもそれしたいなぁ…」

「知らんなぁ…」

「14人クリアでそれを持ってる人たち全員の愛情が続く限り添い遂げるって言う物らしいんだよね…今さっき言った人の主さんとその妹さんがね。」


 みゅうが迫ってくる中今村は回りくどい言い方にイライラが溜まり過ぎて目を据わらせ、神核合成を行った。


「面倒だ。殺っちまおう。」


 自分に対する確認のように呟いたその言葉にみゅうはこてんと可愛らしく首を傾げて首を元に戻すと平然とした顔で答える。


「いいよ?パパに貰った命だもん。パパが奪うなら仕方ないよ。でも出来ればでいいからみゅうのこと忘れないでね?」


 みゅうは今村の出した呪刀を前に普通にあどけなく笑った。そんなみゅうを見ながら切っ先を向けたまま今村は盛大に舌打ちをする。


「微塵も揺るがねぇ…気持ち悪い…理解できんな。」

「揺るがないよ…それにその呪刀だって元はパパの一部だよね?それで斬られて死ぬって死に方としてはとってもいい死に方じゃない?」


 狂気を思わせる瞳のまま今村を見上げるみゅう。今村は「真偽眼」で見て正気で本気で言っているのを理解すると本気で引いた。


「気持ち悪っ…意味の分からん好意の押し付け程不気味なものはないな。」

「何で意味が分からないの?普通にしてればこんな感じでパパのこと好きになると思うけど…」

「それが普通なら世界はとっくに終わってる。」


 みゅうを見ていると今村のテンションが落ちに落ちて神核状態を維持できなくなり人間状態に戻った。


「で、何で今こんなこと言ったかって言うとね?」


 みゅうは朗らかに…今村から見ると完全にイカレて闇の向こうにいる笑みで笑うと呪刀に刺されながら近づいてきた。


「これだけみゅうはパパが好きってことを伝えたかったの。…死んでいいとか…言う訳ないってわかった…?」


 今村は何も言わずにみゅうの血が付着した呪刀を仕舞うと目でみゅうに出て行くように示した。


「わかってくれたみたいだから…行ってきます♪」


 みゅうはにっこり笑って音もなくいなくなった。今村は一人残された自室で呑気に能力を取り戻すのを止めて本気で力の収集に乗り出すことを決意した。


(…あと、死云々に関しちゃ色々言われたが…あいつらが面倒なことになる前に消滅してやらにゃあな…)


 差し当たってはミニアンとセイランにバレるので行きたくなかった「アカシックレコード」に行って前世の全盛期の力を取り戻すことからスタートしなければと誓う今村だった。




 ここまでありがとうございました。


 みゅうさん毎回怖いですね…

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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