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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十二章~生徒と学校~
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8.就職先

「さてオルディニ。今日から封印のレベルを一段階解きます。」

「はい。」

「今から面白…じゃなくて、人助けをしましょう。」


(今面白いことって言い掛けた…)


 今村はオルディニと次の段階のテレパス試験に入った。この日の前の時点で何度か話し合いを済ませてオルディニはある程度死ぬ気は薄れている。


 そういうことは特に気にしていない今村は気配を二人分消してオルディニを連れて祓の部屋の前に来た。


「目の前にいるのは祓と相馬です。この二人は散々トラッ…応援しているのにまぁだくっつかない。いい加減にしてほしいと俺は思う。」

「…本人たちのペースがあるんでしょうに…」


 唐突にそんなことを言ってオルディニに呆れられるが、今村は首を振った。


「祓は…なんつーか…他の男を眼中に入れることからスタートだからよ…」

「………ですけど…今村先生は…」

「まぁ俺は結構適当だから男認定されてないんだろうが…」


 祓が今村のことを本気で好きなのをこの館で知らないものは…今村と相馬位しかいない。当然オルディニも知っているわけだが、こういうのは自然の成り行きに任せるべきだと思っているのではっきりと口には出さない。


 それでも訊いておきたかったことはある。


「…天明先生は今村先生と毎日顔を合わせないと酷く塞ぎこまれることに関してどう思ってるんですか…?」

「ん?『スレイバーアンデッド』の効果かね。あの時は『神核』なり立てだったから微妙に効果が変わった可能性がある。」


 駄目だなこれは…何かの呪いがあるとかそう言う次元の鈍さじゃない…オルディニはそう思って今村のことを若干諦めた。


「…あ、オルディニちょっと待ってろ…軽く滅ぼしてくる。」

「え?」

「何気に隣の世界から侵略者が結構来てるっぽいから片付けに行って来るから少し待機で。」


 今村はそう言うと消えた。待つことしばし。今村は戻ってくる。


「ふぅ。…ん。まだ話し合ってんな。」

「…その手に持ってるのは…」

「ん?あぁ…まぁ気にしないで。しつこいな…死ね。」


 首だけになっている何かを消し飛ばすと今村は相馬と祓のペアを見た。


「…部屋が近いことが逆に二人の溝を深くしてるって感じか…ストーカーっつっても部屋が隣なら結構な頻度で会うだろうに…」

「天明先生…相馬先生のことを明らかに嫌ってません?」

「いや、嫌いだったら名前で呼ばないだろ。俺とか先生だし、生徒も君とかで済ませてるらしいぞあいつ。」


 祓の心情としては他の男の入る余地が少しでもあれば今村に捻じ込まれるので必要以上に親しい者を作らないようにして、相馬に関しては先生・・という言葉を今村以外に使いたくないが、業務上必要なため他と混ざらない様に相馬と呼んでいる。


「…確かに…ですけど…」

「まぁその辺はどうでもいい。問題は相馬のアホがヘタレで告白を真剣にやってないことだ。…ということで後押し。」


 今村はそう言って神速で祓を後方から突き飛ばした。祓はよろめき相馬を押す形になり、相馬はそれを受け止めようと手を伸ばして祓の胸を触ることになる。


「…さて、こうすると祓は照れて機嫌が悪くなんのよ。因みに俺の時は何か向こうから来るけどあいつは意識してないから特に何にもない。精々『氣』の補給所位の感覚だ。」

「え、じゃあなんで…突き飛ばしたのか」

「ここでクイズ。テレパス頼みじゃなく、行動から人の心理を読もう!」


 背後では祓が本気で落ち込んでいる。そして相馬を追い出すと部屋に籠った。


「…一応、短い期間ですけど今村先生のことは少しわかってますから…面白そうだったからですよね…」

「お、正解。前変態に自分の家みたいな場所で袋小路に追い詰められた時より進化してるな。」


 今村はそう言いながらオルディニを撫でる。


「そ、それくらいは…」

「じゃあ次の問題。今、相馬は何考えてる?テレパス使用可能時間は3秒な。」


 オルディニは相馬の方を見た。相馬は手を開いたり閉じたりしてだらしない笑みを浮かべていた。


「…これ使わなくても…天明先生の胸の感触…」

「うん。こいつアホだな。」


 とりあえず頭を叩いておく。突然の衝撃に辺りを見渡す相馬だが、こんなことが出来るのは限られているのですぐに業務に移った。


「…あ、この書類今日までだったな…後でやっておかねぇと…でも一応守秘義務があるってのに往来で保護掛けずにするかね?後で芽衣に監視つけさせよっと。」


 そんなことをしていると祓が部屋から出て来た。相馬は気付いていない。


「…お風呂入ってたんですかね?どこ行くんだろ…」

「多分俺の部屋。怒ったり感情を相馬相手に出すと疲れるみたいだから『氣』の補給に来る。実際そんなに『氣』は使ってないんだけどなぁ…」

「え…戻らなくて」


 オルディニの言葉を遮って今村はその先を言った。


「いいよ別に。実際は自立してんだし補給は要らない。何回か説明したけどあいつ俺の話聞かないで無視するし。そんなことより他行こう。ミーシャは…アレ仕事が恋人だし…」


 オルディニは違うと断言できるが何も言わない。


「芽衣も今仕事にやりがい持ってるから浮ついた話したがらないし…」


 それは別の理由だと分っているが何も言わない。


「ん~…誰がいいかね。基本的にここに居る奴らの頭は危険だしねぇ…」

「…まぁ、初めて来た時は上級生の思考を見てびっくりしました。」

「俺別に戦闘特化とかしてないんだけどね…戦闘したくないやつ向けに科目作ってるんだが…誰も来ないが知ってる奴いんのかな…」


 別に今村は戦闘員を作りたいわけではないし好きな職業に就けばいいと思っているのでその辺色々な物を作っているが、ここの生徒は大学に行っても高卒でも「レジェンドクエスターズ」に就職する生徒が9割9分占めている。


 もう少し視野を広げろ…と言って色々見学させてはいる。


 しかし、異世界部門で戦闘もある。鈴音が先陣を切った芸能界部門もある。異世界交流場所で色んな文化交流もある。とある世界と繋がっている出版業界もある。政治の実質支配もしている…


 といった具合にやりたいことをひとくくりにしたような会社で、高給取りなのであまり他に行きたがらないのだ。


「…まぁ本人の自由か。俺と違って長生きするし。」

「…そういうのは止めた方がいいと思うんですけど…まだ若いんですし…」

「ん?俺ぁ爺だが…まぁまだ死なんよ。少なくとも高見東志って作家が今のままの面白い作品書き続ける間は生きる。後まぁ行くところがあるからそこには行くが…」


 今村が嗤っているのを見てオルディニは眉を顰める。


「ん?何か問題でも?」

「…いえ。とりあえず、私、これからの方針が決まったので。」

「おー良かったな。因みに何?」

「…今村先生に助けてもらった戦場とかあるじゃないですか。」

「…どれ?」


 かなりあるので今村は特に覚えていない。戦場に行った理由はメンタル強化したいと言ったオルディニの希望だ。


「あぁ、気にしないで結構です。私はメンタルクリニックしていきますよ。」

「天職だろうが…何か色々無駄だったか…」


 今村は呟くと解散宣言をして自室に帰って行ったが、オルディニはその姿を見送って艶やかに笑った。


「…今村先生の…恋人候補の…ですけどね。まぁ…これで私もあちら側ですか。」


 まずは祓の所に行くことからスタートすることにしたオルディニは今村の後を追うことにした。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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