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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十二章~生徒と学校~
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7.貴族との交渉

「…アッロガンテのトップは死んだことにしてもいいですか?」

「…何で?」


 レプグナンテ社のトップとその娘との交渉が終わった後、次に移ろうとしていた今村とミーシャだったが、芽衣の言葉で一時休憩に入る事にした。


「ところで今村さん。さっきの子ってどういう風に見えてたんですか?」

「ん?あの女?…何て言ったらいいかね…出来の悪い特殊メイクかな…って、あぁちょっとアッロガンテのトップは死んだ方がいいかもな。」

「急にどうしたんですか…?」

「まぁ…簡単に言えば質問しに来た生徒に偶々会って酷い口説き方をしてるって所かな。」


 今村は立ち上がりながらそう言うと「ワープホール」を形成。そのまま消えて行った。















「貴様ぁ…このフェデラシオン軍部第一公爵ムラヴィヨフ様からの誘いを断るというのか?」


 さっきからしつこい…まだ害意も敵意も持ってないみたいだから何も読めないけどどうすれば引いてくれるのかしら…


 聞こえない程度に溜息をつくとまた別の表現で断りの言葉を入れる。これで3度目だ。一応プライドを傷つけない拒絶の言い回しから取ってるけど何度も繰り返された時はどうすればよかったかしらね。


「身分は気にしないと言っておろうに…貴様の美貌が素晴らしいから我が後宮に入れてやろうと。」


 壁際まで寄せられて袋小路まで追いやられて退路を封じられた。まずいわね…いつもテレパス頼みで相手の手を読んでたから気付けなかった…


「もうよい。」


 しばらく私の顔をじっと見た後男はそう言った。私は安堵で気を緩める。しかし、そこで男がとった行動は私の想像していた解放ではなく…


「ここで私の誠意を見せてやろう。」


 服を脱ぐことだった。ベルトの留め具に右手を掛けると男は下卑た笑みを浮かべて左手で私の髪を掴んだ。


「痛っ!何を…」

「大丈夫だ。ここには監視の目もない。軍部…しかも暗部に長年仕えているとそう言う勘はつくんだよ。」

「放して!」


 その時だった。男の精神が一気に私の頭の中に入ってくる。怒り、そして…敵意を持ったのだと気付いた。


「貴様…私をコケにするつもりか?」


 マズイ。この男、示威の為に「|レジェンドクエスターズ《ウチ》」の既製品じゃない国で開発した独自兵器を持ってる…


「…反抗的だな。まぁ試運転替わりだ。ここで一つ使っておくか。『サイレンスフィールド』。」


 音が遠ざかっていく。そして男はぐちゃりとした笑みを浮かべて言った。


「これで逃げられんぞ。音を閉ざす代わりに通行も出来んからな…まぁこれが欠陥なんだが今回はこれでいいだろう?」


 最悪だ。しかも私の能力じゃこの男が別に持ってる『Dシリーズ』とかいうものに歯が立たない。

 愕然とする。こんな奴に犯されるくらいなら自殺…地獄は嫌だ…


 躊躇う私の前に男のモノが出される。醜悪で思わず目を逸らし…


「あらよっと!」


 その先で黒い穴から飛び出つつこの結界を蹴り砕きにかかっている人を見た。


「…オルディニ。こっちに来い。」


 一も二もない。その人の背に駆ける。




 男は震えている。


「…シュールだな…まぁとりあえずうちの子に何してくれてんだ?アッロガンテ社トップでフェデラシオン軍部第一公爵ムラヴィヨフさんよぉ。」

「そ、そこまで調べているのだったら話が早い。その娘が私を誘惑してきおったのだ。貴様、ここのトップに伝えろ。この一件は…」

「…俺がトップだ。」


 今村は憮然とした顔を作って男を見る。そして若干視線を下に送って失笑し視線をずらした。


「き…ゔゔん…今村殿?困りますなぁ…このような悪戯をされては…」


 オルディニは下を穿く男を見てまだ男が自分のことを諦めていない事実を読み取った。そして連れ戻した後の仕打ちもまざまざと見せつけられる。


 男の考えではオルディニが誘惑したことにしてこれを自作自演だということを見抜いたことにし、問題にしたくなければ寄越せと言うつもりのようだ。


 そして、貴族しかも軍事部のトップと言い争うのは確実に関係悪化の引き金となると分かっているはずだと思っており、すでに今村を眼中に置かず、交渉でもリードしているつもりでオルディニを持って帰るつもりだ。


「悪戯?オルディニちょっといいか?」

「……はい。」


 オルディニは半ば諦めた。どう考えても自分と国では釣り合いが取れない。ここは相手の言い分を逸らして自分を賄賂に交渉を進めるだろうと思ったからだ。


 だが、今村はオルディニに手を翳すと頷いた。


「うん。強姦未遂。及び強制猥褻罪だな。後オルディニ別に心配はいらん。俺は基本手近な奴を優先する。」


 そして今村は男を見る。


「マキシムナインさん。じゃないか、ムラヴィヨフさん。私はうちの子を信じますのでお帰り下さい。問題にはしたくないでしょうし。」

「…今村殿?本気ですか?」


 男が信じられないものを見る目で今村を見る。その目を見て今村は一気に冷めた。


「…っつーか面倒。『復讐法ハンムラビ』記憶喰っちまえ。うちの子に嫌な思いさせたんだし廃人になってもいいや。」


 冷めた目で男を見ると今村は能力を使った。基本能力が落ちているので細やかな操作が出来ず、基本的には常人には使えないのだが、大義名分オルディニのこともあるので特に遠慮はいらないと判断したのだ。


「…あ、ついでにあのグルメさんに依頼出しとくか。俺主催の会食とウチの系列ホテルの特選権をやればまぁ…影響は出るだろ。」


 ついでにフェデラシオンに縁のある結構な権力者のことを今村は思い出した。


「うん。明らかに不平等条約結んどくか。オルディニに酷いことしたんだし首括ってもらおう。」

「え…そこまでは…その…今村先生が来てくれましたし…」

「…そう?どこまでにしとく?」


 今村はしっかりオルディニの翡翠色の目を見た。オルディニは今村の目を見返すが…何故かここで先日の「傾世の美」を服用した時の今村の顔が被った。


「っ…こ、殺すまでは…しないでください。」

「わかった。」


 今村が「マリオネットデイズ」を使って男を操作している後ろでオルディニは熱を持って行く顔を叩いて心中で毒づく。


(そんなちょろい子じゃないでしょ…これじゃ訳わかんないじゃない。この人何か術を掛けたんだ。そうに違いない。…術なら仕方ない……じゃない!意識なんてしてない!)


「…大丈夫か?トラウマになったんだったら取るけど。」

「あ、い…大丈夫です。」

「…まぁ何かあったら言いな。で、質問に来てたんだろうからこれが終わったらまたな。」


 オルディニは離れて行く今村の背中を複雑な…認めたくない心境で見送った。




 こちらの方までお疲れ様でございます。



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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