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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間11
240/644

原神様と一緒

「みうえっぽー!」


 バルカン砲の数十倍のエネルギーの水の弾丸を放つセイラン。これでも完全に子どもの戯れレベルなのでミニアンと今村はそれを湯に浸かったまま止める。

 今村はそんな中で自身の内面を見て気付いた。


「…ん?お、嫉妬と色欲が溜まってる。7罪の力借りてちょっと能力回復を図っとくか。」


 今村は自分の中にある大罪衆をごちゃ混ぜにして捏ね繰り回し、「神核」外の自身の体にフィードバックしておく。


「…これで色欲系統は今なくなったな。何してももう意味ないぜ。」


 得意げに笑う今村。ミニアンはその辺を特に気にしないで今村の腕を胸に挟んで太腿に這わせるだけで楽しいようだ。


「たのしかったー。」


 水の壁を突破できずに逆にその壁の崩壊に巻き込まれたセイランは浮いて来ると今村の膝の上にまた座る。今度は前向きだ。

 しかし、今村の開いている方の腕を自分の体に巻きつけて手先に頬擦りする。


 結果動けない今村は所在なさ気に何をするのか考える。尤も、術式系統は今大罪の改変中で行使できないので何か他にやることを考えなければならない。


「何か楽しいことは…変なこと言う奴がいるからダメとして、何か面白いこと…」

「…面白いことかい?それなら最近僕の初めての侍女が居るのは知ってるよね?」

「…あの自己紹介がダイア食う奴?」

「うん。彼女がこの前行った世界で宿屋の店主に強制的に支配管理を剥奪してほぼバーサーカーになるように術を掛けたんだよ。」


 今村は基本的に他人に興味がないので人の事は覚えていないが、彼女のことは覚えている。同じ劇物及びに危険物と称されるオカシ(イ)を食べた仲だからだ。


「そして、彼女はその店主に追い掛け回されているんだ。求婚して欲しいと。それで最近は暇を出してるよ。」

「…面白い話?」

「いや…代わりに新任の子を後釜に据えたんだけど…その子がね。面白いんだけど今は秘密ってこと忘れてたよ。まぁいつかは紹介するけどね…フフフ。」


 妖しく笑うミニアンに今村は追及をしないでそれより気になっていることを訊く。


「さいでっか。セイランは何で俺の指吸ってんの?」

「んー?なんとなくー。」


 口の中から指を出して今村の方を振り向くセイラン。その目はどこか眠そうだ。おしゃぶりの代わりなのかもしれない。


(…これがあのイカれ野郎にバレたら俺の指切断されて保存されるんだろうなぁ…んで間接で…うえ。)


 そんなことを考えていると、突然扉が開け放たれた。


「ミニアン!セイラン!お姉ちゃんも混ぜなさい!」

「…ルーチェお姉さま…」


 女性の形を成している発光物は朗らかな声を上げて湯船に入って来た。その目に今村のことは認識されていない。


「…?何だか醜悪なオブジェだね。ミニアンにしては変な趣味じゃないか。」


 この程度の認識だ。その言葉を聞いてミニアンが嫌そうに形の良すぎる眉を顰めた。


「…仁、もう上がろう。」

「…うにゅ…おにぃ、せーらんもねうい…」

「二人ともそんな変なものから離れてこっちに来なさい。」


 今村にくっついていた二人は無理矢理ルーチェに引き剥がされる。今村は特に何もし返さない。


「やー!」

「…強引なのは嫌われますよお姉さま。」

「それで、この汚いのは処分するわよ?」


 二人が止める間もなくルーチェは何の気もなしに今村の存在を消しにかかった。流石にそれは嫌だが今の状態下では反応できても動くことすらできない。


「…許しません。『破壊躙演武極』」


 しかしそれは眠たそうにしていた顔を急に冷徹で無表情に変えたセイランによって今村に直撃する前に破壊された。セイランは非常に冷たい目でルーチェを睨む。


「【完成された美】様。最低です。」

「セイラン?いきなり戦闘状態になってどうしたんだい…?」

「お兄様。行きましょう。」


 セイランはルーチェを無視して今村の手を取り風呂場を後にした。


「…急にどうしたんだいあの子は…ねぇミニアン…」

「…断罪せよ。罪神の名はルーチェ・シェーン・フォルメコン。我が仇敵。怨敵なり。彼の者に明けぬ悪夢を。」

「ミニアン?冗談にしてもやっていいことと悪いことがあるんだぞ!『喝破』!」

「五月蠅い!『コシュマールイモルテル』」


 ミニアンも自分が使える術の最悪形式を使ってルーチェを悪夢に落とし込んだ。ルーチェであればすぐに自力で解くことが出来るだろうが、せめてもの仕返しと時間稼ぎだ。


「…この方が来たという事は【始まりの神】も…最悪だよ本当に…折角仁と…」


 手早く服を出現させ、セイランが行ったと思われる寝室へと足早に移動する。


「あぁ…これでまた仁の足が遠のく…しかも甘えたくても時間もない…」


 帰って来なければ良かったのに…そう思いながらミニアンは寝室へと急いだ。



















「…フム。あれで死んだら消滅までダメージ行ってたな。それはそれで劇的な終わりで良かった気が…でもまぁ風呂に混じったゴミ扱いで消滅も笑えないか…」


 今村は適当に藍色の浴衣を創って寝室へと移動していた。浴衣の理由はさっと着れるからだ。


「…そんな仮定はおやめください。悲しくなります。」

「消えるのも悪かねぇんだが…」

「おやめください。」


 長い睫毛を悲しそうに震わせるセイラン。今にも泣きそうだ。


「命を…存在をあまり軽んじないでください。あなたがよくても私が壊れます。」


(…その辺は呪い掛けてるから大丈夫だと思うけどね。…こんなことしてるから俺はこんなに弱ってんだなぁ…)


 内心で笑っている今村。顔だけ至って真面目だ。その頭をいきなり掴まれた。


「セイラン。この顔は内心で別のことを考えている顔だよ。…あれだ…あれだけ言ったのに…君はまだ変わってないのかい…?」

「変わり続けてるさ。刻一刻として俺は同じではない。ただ、俺は俺だ。」


 今村の表情が歪み始めた。笑いを抑えられなくなっているようだ。


「君が居なくなればどれだけの者が悲しみのあまり引き裂かれそうになるのか分かってるのかい?分かっていてそうなのかい?前に約束したよね?危ないことは…」


 ミニアンの言葉の間中今村は悲しみそうな神と人のリストアップをしてみる。頼まれているので消えても記憶が消えない者の中で悲しみそうなのは…


「多分26人位悲しむ。神は…1柱かな。あいつは俺が消えたら酒の一杯でも傾けてくれ――――」


 今村は最後まで言う前にミニアンに殴り飛ばされた。


「ってぇ…」

「…君も最低だ。」

「おめでとう!正気に返ったがっ…」


 水弾を飛ばして今村の腹部を思いっきり叩きつけるミニアン。そして今村を睨みつける。


「少し、黙ってくれないかい?」


 苛烈に怒っているその姿ですら美しい。今村はこれ以上いてもいないのと同じだと判断して帰ろうとするが、セイランに止められた。


「…きちんと話を終えてからです。」

「終わってんだろ。正気に返った。これで俺とこいつの縁は終いだ。セイランも正気に返ってっぐ…ひっでぇなぁ…内臓やられちまってるぜぇ?クスクス…」

「『癒神波』…ミニアンお姉様。」


 セイランがミニアンを窘める目で見る。ミニアンは光を無くしたような目で二人を見下ろして呟いた。


「…仁には全身統制があるから程よく痛めつけないと出来ない。出来たら責任取るって言ってたよね…?」


 いきなり話が飛んでいた。これまでの痴態を振り返って壊れたかな~?と思っていた今村が余裕綽々で立ち上がるとセイランが何かに気付いたようだ。


「痛めつける…全身統制…責任…」

「うん…もう、僕が考えた中じゃこれが最適手。襲う。『抑制解除』」


 銀色の閃光が走る―――瞬間、すべてが凍りついたかのような錯覚を覚えた。周囲の全て、余すところなくミニアンに見惚れて停止してしまったのだ。


「…っとぉ…俺にもかかるかよ…」


 それは今村も例外ではなかった。空白の記憶が存在している。何故全裸でベッドインしているのか全く覚えていない。


「…流石、素の僕を見ても正気に戻れるってね…でも…」

「待て待て待て、正気に返ったんじゃねぇの?何で狂気が孵ってんの?」

「僕を信じてくれないからだよ…それに…っ僕じゃない誰かより!僕の方がずっとずぅっと君を想ってるんだ!初めてだから…ちゃんと奪ってね。」


 今村は聞いていない。こういうことは却下だ。消える前に責任が発生する。打つ手を考えて…溜息をついた。


「……ここで、このタイミングで…【全】の時ですら使わなかった奥の奥の手を使うのか…何時壊れるのか分からんのに…」


 そう言いつつ今村は自分の精神内に抑え込んである自身最高傑作のアイテムを操作する。


「じゃあ始めよっか。」

「【永久黒之闇蓮華】」


 そして発動。掌で闇そのものを具現化したような蓮の花が咲き、八方に蔦を伸ばした。そして世界が停止する。


「…お、まだもった…よかった…でも次使えるのは俺の体感で66年後だよなぁ…」


 【永久黒之闇蓮華】。それは一度使えば今村の望まないことを能力の及ぶ範囲内で塗り替えられるあり得ない物体。そんなものを使って今村は今回、周囲の全てを止めた。


 原神相手に能力は通じない…というより、精神のスペシャリストのミニアンの精神にハッキングなど自殺行為だから出来ない。今の不安定な彼女なら逆に今村の頭を洗脳することまで考えられる。


 精神体であればこれでも止められない可能性があったが、幸か不幸か今の彼女は本体を出している。


「じゃ、ローブ。」


 黒衣が今村の下に帰ってくる。ついでにセイランもやって来た。案の定原神には今村の奥の奥の手も通じないようだ。

 セイランは残念そうに今村を見上げている。今村は視線を感じてしゃがんで目線を合わせた。


「…行かれるのですか。お兄様。セイランとの添い寝は…?」

「こいつが暴走中だから…」

「セイランのお部屋にくれば…」


 今村は少し考える。こっちの状態のセイランは少し過激だ。神としての職務を果たせる程度には頭もいい。

 ついでに今村より強い。奥の奥の手は現在充電中だ。その上セイランは極々僅かながら何かの魔法…気取られないようにしているつもりなのだろう。実際に見事な魔力の流れで何か準備している。


(…魔法の祖がバレるほどの魔力って言ったら…魔導術…?)


 不穏な考えが今村の頭をよぎる。


「そ、添い寝だけなら…後、ミニアンに取り成してくれるか?」

「はい。」

「…じゃあ。いいよ。」


 魔力は消え去った。代わりに頬を緩ませるセイランだけが残る。


「それでは…私も戻ります。それと、戻りますけど…それで嘘をついたら多分…」

「…ある意味あっちのがヤバいからな…分かってる。」


 この後呂律の回らない滅世の美幼女に戻ったセイランと今村は同じベッドで眠りについた。




 ここまでお疲れ様です。


 どうでもいいですが、今村くんはゲームのラスボス戦でもアイテムを極力使わないタイプです。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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