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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十一章~面倒事処理~
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17.帰って来ましたよ

「ミーシャ、これ…」

「あ!気付かれましたか!」


 今村が何か言う前にミーシャは今村に飛びついてそして持っていた書類を見るなり今村が何を言うか察して遮った。


「これで自治区は今村さんの物ですよ。」

「…いや、ここまでやったら依存されるだろ…」

「?そうしないと乗っ取れないじゃないですか。」


 今村は話が噛み合っていないことを速攻で理解した。そして彼女たちは自分の為に良かれと思って国を乗っ取ったというのだ。


「…乗っ取らなくてよかったんだが…」

「え?ですけど…この方が動きやすくなりますよね?」


 常識人だと思っていたミーシャはとっくの昔に常識を失っていたようだ。褒めてもらえると思っていたのが褒められずに何だか困っている。


 これで怒るのは筋違いだ。今村が居なかったのが問題なのだから。ここで怒るべきなのはレグバであってミーシャやレジェンドクエスターズの面々ではない。


「…はぁ、とりあえずご苦労さん。」


 今村が労いの言葉を掛けるとようやくミーシャの顔が明るくなり、頭を差し出してきた。撫でろという事だ。今村は無言で良い匂いのする頭を撫でてやる。


「えへへ…ふにゃぁ…」


(…後2年、あと2年早く戻って来てれば止められた。いやせめて後1年早ければ少なくとも国の方で盛り返しが効くようには持って行けた…)


 今村が居た頃には第3セクターとして官民共同で行っていた事業はすでにレジェンドクエスターズの手に主導権が渡っている。


 それは『ヲチ水』や生活保護を受けている者、更に賃金制を課したことにより推進している農林漁業。


 異能力者を配置した警備会社から警察予備隊への移入。


 法草案や民間からの単なる提案にすぎなかった法案関係の実質支配化。


 金鉱の支配と国債を買いまくることによる財政への影響力。


 魔道具等々による産業界への革命。


 労働、教育、その他色々と改造して、更に法案関係を抑えることによりこちらも形骸的に各省庁は残されているが、実際はこちらに事業委託がされている。


 さらにそれら全体の圧力を以て外交への圧力と変えるところまでがワンセットとなっていた。


 つまり政治の殆どを牛耳った形になる。


(アフトクラトリアも止めろよな…)


 更に時期が時期でもあった。自治区と接しているアフトクラトリアは今村の強制命令と「幻夜の館」による圧力で何もできなかった。

 また、北のフェデラシオンでは頭首が変わったことによって外国へと目を向けることが出来ていなかった。

 中央のウトピアは基本中立を保ったままで、西は西で財政問題や地域間紛争などで国内のことでいっぱいいっぱい。


 こんな中で南だけではどうしようもないと南のモナルキーアはさっさとレジェンドクエスターズと取引を始めていた。


(…これをやるためにこいつらの頑張りを考えたら…まぁ、何とも言えんな。少なくとも力尽くで改革をしなかったのは偉いが…)


 生徒たちの能力を以てすればやろうと思えば洗脳状態にして全て思い通りに出来たはずだが、悪戦苦闘した結果でこの現状まで持って来れたようだ。


 膨大な資料がそれを物語っている。


「ふにゃ…にゃうぉ…」

「先生先生先生!帰って来てたなら一回言ってくださいよぉ~あ、一回イって下さい!ふきゃぁっ!」


 今村は背後から突撃してきた何かをそのまま勢い良くローブで投げ飛ばした。


「…何だマキアか。」

「今、分かってて投げましたよね…?まぁいいですよ。ご褒美です。寂しかったのでホーミータイですよ!」


 Hold me tie!と流暢に連呼するマキアを見て今村は顔もスタイルもいいし、頭だっていいのに何故こんなに残念なのか…と可哀想なものを見る目でマキアを見下す。

 マキアはそれを受けて更に興奮し出した。


(…ダメだこいつ。)


「仁さ~ん!どこ行ってたんですか~?」

「全くもって…心配を掛けさせおって…」

「…お前ら最近仲いいな。」


 そして次には「幻夜の館」の窓を突き破って類稀なる美幼女、天界の主ヴァルゴと破壊的なスタイルを誇る美女、地獄の女帝サラが現れた。


「む?それはこちらへの門が開くのを待っておったのでな。流石に2対3では分が悪いしの。」

「…あいつらにあんまり迷惑かけんなよ…?」


 あいつらとは人間界を治めているタナトス、トーイ、イグニスの三人だ。生者の門と呼ばれる特殊な門を開け閉めしたりなど色々と働いている。


 尤も、この門を使って殆ど地獄や天界から人間界に降りてくる者はいないのだが…


「で、妾も抱擁を要求するぞ。」

「私もですよ~」

「…何で?別にいいけど…」


 そう言ってからミーシャを見ると目を細めてふにゃふにゃになっていたので放した。


「し…仕事行ってきまぁしゅ…」


 そしてそのままフラフラと机に戻り…仕事をきっちり始めた。


「先生…私のことは無視ですか?ねぇねぇ。ホーミータイっ!ベッドの上でホーミータイっ!」

「わかった。後でな。」

「うぇっ?ま……じゃ…じゃあ待ってますからね!」

「おー。」


 マキアは自室の片付けを始めるために消えた。まだ昼間だが、これから既にベッドメイキングを開始する予定だ。


「…で?抱きつけと?セクハラで訴えんなよ?」

「ハラスメントと全く思っておらんから大丈夫じゃ。早う早う。」


 むぎゅうと今村の胸板の少し下あたりにサラが誇る豊かな山脈がもの凄く押し当てられる。

 その上、サラの方から強く抱きしめる。


「…髪伸びたな。」

「長い方が好きじゃろ?」

「…俺はな。」

「次は私ですよ~」


 サラと1分ほどの抱擁を交わすとヴァルゴが今村の袖を引いたので今村はしゃがんでヴァルゴも抱き締めてやった。


 両者抱き締め終えると仕事仕事と言って別の窓を突き破って帰って行く。そして残された今村の袖をまた引く者がいた。


「……………お帰り。…………私には?……」

「座敷童…うん。まぁ何で抱き締め…ってあ。」


(…そう言えば原神あいつらの影響が…後で会いに行った時に除かせるか。)


 また斜め上の解釈をして今村はこの後もどんどんと抱擁をしていく。


「おぉ愛しの先生!あなたがいない間は胸が張り裂けそうで毎日5人しか女性を抱けませんでした!」

「テメェは死んでろ。」


 途中、志藤がふざけたことを言って急に抱きついてきたので今村は鯖折りからの投げっ放しジャーマンスープレックスを決めておいた。


 そしてその後今村は地獄のような書類責めに追われた。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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