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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十一章~面倒事処理~
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16.椅子

「…今村くん…これって…」

「ん?あぁ…まぁ、お察しの通りだ。さて、一から説明して行く時間はないからさっさと行かせてもらうぞ?まずは契約書。」


 今村はまず、森だけ来ているので森に契約書等々を見せて書類にサインをさせた。

 森は良く見ずにサインを行う。今村は少し何か言いたくなったが、これから起こることを鑑みるに些細な問題という事で片付けて森を別室の執務室へと案内する。


「…うわ~…リア充の巣窟みたいなところだねここ…美男美女ばっかりで…」

「…まぁ時々俺もここで場違い感が出て来たりしてたな。…久々に帰ってきてなんだけど…」


 決してイケメンとは言い難い二人が談笑しながら廊下を進む。その途中で森は今村の帰還を知った子供たちの反応を見続けさせられた。


「…モテモテだね…爆破していい?」

「モテモテ?お前の目を抉り出して見えるように調節してやろうか?後、爆破できるもんならやってみな。」


 軽口と判断して今村は森の言葉を聞き流すが、森はジト目で黙った。今村の説明を聞き流しながら腕の中にいる祓の太腿をちらちら見るだけになる。


「…さて、ここでお前にはちょっと作業訓練を受けてもらう。」

「ん?執務室ってここ殺風景だね?ってアレ…?ギミック…?って、これ絶対ヤバい奴だよね!?」


 そして着いた先の部屋。その部屋の本棚の裏の中にある部屋は電気椅子を髣髴とさせるメカニックが施された椅子が5台ほど置かれていた。

 今村は実に良い笑顔で森をローブで捕まえる。


「さぁさぁ。行けよ。書類にサインしただろ?」

「死なない?」


 心配そうに聞く森。今村は笑顔で答えた。


「だいじょーぶだいじょーぶ。…ちょっとビリッとするだけだ。」


 今村のこの言葉を受けて森は脱兎の如く逃げにかかった。右腕の触手群を今村に襲い掛からせて自分はその一部を利用して壁に向かわせる。


「ハッハッハ。温い。」


 今村は触手をローブで全て押さえつけると森の首根っこを摑まえて椅子の方へ引き摺った。そしてそのままローブで椅子に固定。本棚を元の位置に戻す。


「離…っ」


 最後まで言わせずに森の触手をローブで動かして猿轡にする。そして半笑いのまま椅子に備え付けられている何かの電源を入れた。


「――っ!」

「…そんなに騒ぎ立てるほどのマシンじゃないけどなこれ…ビビり過ぎだろ…」


 実際に受けてみるとそこまで問題はなかったらしく、森も大人しくなった。しばらく椅子による森のダウンロードのために今村はこの場に残る。


「しっかし…そろそろ祓には起きて欲しいんだが…本が読めない…」


 腕の中で眠り続けている祓を見てぼやく今村。色々な情報を仕入れているが、まだまだ足りていない。

 業務だけであれば別に知識として知っていればいいので、文字情報を頭の中に入れればいいのだが、本は読んで楽しみたいのでそんな邪道なことはしたくない。


「……あの阿呆が俺を拘束してなければ…いや…そっちにキレるのは違うか…悪いのはレグバの方だ…いっそあいつの愛の歌をばら撒くか…?」


 イライラが再発してきた今村。流石にこれは出せないな…と思うほど酷い内容の歌詞だったのでアカシックレコードには置いて来なかったが、やはりおいて来るべきだった気がし始めた。


「…んぅ…ありぇ…?先生…?」

「…起きたか。っ!!?」

「ぷはぁ…んにゅ…」


 起きると同時に祓は今村に熱烈なキスを交わしてきた。今村は訳が分からな過ぎて一時的にフリーズする。

 銀糸を引きながら満足したかのように唇を離した祓はそのまま眠りの世界にいざなわれる…前に今村に落とされた。

 先程までコアラの様にくっ付いていた祓だったが、今度はすぐに落ちた。そして目覚める。


「っ?え…あれ?…先生…?」

「お早う祓。」

「お早うございます…」


 この程度ではダメージを一切負わない祓はすぐに立ち上がる。そして森がダウンロード用の椅子から解放されるまでに今までの経緯について説明を受けた。


「…4年…先生は大学にもう行かなくていいってことですね?」

「…確かにキャンパスライフは崩壊したな…何そんなに嬉しそうにしてやがる。」

「『幻夜の館』で暮らすんですよね?」

「質問に答えやがれっての…で、まぁそうだな。こっちに戻って来るよ。何そんなに喜んでんだ?人の不幸を嘲笑うように育てた覚えしかないぞ!?」

「育てた覚えあるんじゃん…もっとも…僕には違う感じにしか見えないけどね…」


 森が復活して今村に突っ込みを入れる。今村はその突っ込みを待っていたとばかりに笑って後の分は聞き逃した。


「さて、仕事内容は分かったな?」

「…強制的にね…ってか…こんなことしてるんだ…何者なの?」

「唯の一般人だ。」


 今村は質問を半笑いで受けて森を連れて本当の執務室へと移動した。




















「…じゃあ、始めよっか。」

「何コレ!?ある意味さっきより見たくない光景なんだけど!?」


 今村と森、それに祓が来た場所は上級幹部と生徒たちに称される教員の一部が入る執務室だった。

 そしてそこは床が抜けんばかりの膨大な資料や要綱。書類に果ては「幻夜の館」用の入試テストなどで埋め尽くされていた。


「…さ、お前の触手の役立つ時が来た。」

「…うへぇ…今村くんの技術を知ったから出来なくはないけど…」


 今村のローブと森の触手が部屋を舞い。そして書類の内容分けが済んだ。


「じゃ、俺がこっちのやつやるから。」

「では私はここで。」

「…うわぁ…絶対寝る…」


 ぼやきつつ森が執務室の椅子に腰かけた瞬間。椅子から胴体を拘束する金属ロープが出て来た。


「うわっ!」

「あ、ノルマが終わる前に寝たら電気が走るから。」

「ここに人権はないの!?」

「……ん~いや、冗談で渡したつもりの書類にサインしたのお前だし…まぁそっちの書類群の重要度と緊急度はそれほどまででもないし。」


 森は一枚目をちらっと見る。


 異能力者によるテロ事件鎮圧に向けての対策要綱 〆切:明日の正午


「そんなに問題ないだろ?」

「問題しかないよ!?明日!?え?何書けばいいの!?」

「落ち着いて洗脳された時の知識を思い出せ。」


 色々不穏当な今村の言葉を森は不承不承ながら聞き入れると記憶を探ってみる。すると自分の知識ではない知っている情報が見当たった。


「…え?これ…全部書くってなったら…50万字くらい…」

「がーんばっ!」

「他人事だと…全然他人事じゃなかった…ごめん…」


 森は書類を軽く扱う今村を睨もうと書面から目を上げたが、その先にあった手先が全く見えない今村の作業風景を見て黙って仕事に取り掛かることにした。


「…先生…」

「んー?何か分からないところでもあったか?」

「これ終わったらご褒美欲しいです…ダメですか…?」

「…じゃ、量を増やすか。これ出来たらいいよ。」


 森は目の前で行われている書類の移動を見て絶句。そして下手に何か言って矢面に立つのを恐れて最早完全に空気と化した。


 そんな作業風景の中で、今村は書類を見ていく内に顔を顰めた。


(これは…ここまでやってしまったら…レジェンドクエスターズ無しでの自治区の政治が成り立たなくなるぞ…?というより…乗っ取りに近い。どう考えてもやり過ぎだ。)


 しかし、流れを急激に止めれば大混乱に陥ることはまず間違いないだろう。更に書類を見ていく内に今村は溜息をついた。


「…はぁ。こりゃまいった…ここまでやったら駄目だろうに…」

「…?どうしたんですか?」


 祓が今村の小言を聞き逃さずに質問する。今村は書類の山の中で本日中に片付けなければならない分だけを終えると休憩と称してミーシャの下へ行くことにした。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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