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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十一章~面倒事処理~
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13.一悶着

「…は?」

「…だから、大魔王を倒してしまったからこの世界は後1時間弱しかもたないってよ。」


 朝目覚めたミニアンに告げられたのは今村のこの世界崩壊のお知らせだった。


「け、結婚式は…?」

「…ナシだな。」

「そんなぁ~…」


 見る見るうちに元気をなくして行くミニアン。因みにこの後今村は昨日会った恋愛増加促進委員会の面々と遊ぶ約束をしている。


「僕との時間はあと少しってことかい…?すぐに遊びに来てくれないか…?久し振りに会って…やっぱり僕には君が必要なんだよ。」

「依存。よくない。」

「僕にそんなこと通じないよ!結婚式の約束を破ったんだ!それくらいしてくれたっていいじゃないか!キス一回じゃ誤魔化されないぞ!」


 そこまでチョロくはないか…と思ったその時だった。強烈な殺気がこの部屋に叩きつけられたのだ。


「……最悪なのが来たね…」

「…まぁこの世界内だったらあんまり問題はないが…」

「姦夫が…死ねっ!」

「そこは無言でやるべきだろっと。」


 現れたのは銀髪に精悍な顔つきの鍛えられた体を持つこの世ならざる美しさを持った青年だった。

 その彼は問答無用で今村を斬り殺しにかかり、今村がミニアンを押して自身も躱すために離れたところでミニアンと今村の間に割って入った。


「よぉ。元気?性病とかにかかってない?俺に斬られた傷は大丈夫?」

「ミニアン。もう大丈夫だからな…」

「僕に触れていいのは仁だけなんだけど?」


 突如現れた彼に随分な挨拶をする今村。彼はそれを無視してミニアンの肩を抱いたがミニアンはすぐさま身を離し、睨みつける。

 それを生暖かい目で見る今村。いつの間にか恋愛増加促進委員会の面々もここに来ている。


「貴様ら…ミニアンに何をした!」

「うわ~今僕ら悪役っぽいね。」

「何だその簡潔な自己紹介は。それでもリア充撲滅委員会・副会長補佐か?これくらいはやれ。フハハハハ!【勇敢なる者】ユーシアよ!姫の心を取り戻したければ我らを倒すがいい!」

「今村さん…ノリノリですね…」


 瞬間。ユーシアがぶれた。その直後に今村のローブと彼の大剣がかち合って漆黒の氣と純白の氣が鬩ぎ合っている。


「んなっ!」


 驚くのはユーシアだけだ。今村は冷徹な目でユーシアを視た。


「『死出シイヅル所より我が眼に宿れ』『死出シイデ眼』『睨み壊し』」

「ぐっおぉっ!『聖闘気』!」


 今村の高速の詠唱と共に目の色が変わり、ユーシアの体の一部が弾け、壊死する。ユーシアはそれを強引に引き剥がし回復させると今村から距離をとった。


「やる…」

「…以て神核による解除を行うっと。原罪降臨。『αモード』『Ωモード』『全刃モード』っと。で、『殺人皇帝』『魔下落王』『陰王発剄』を全合成。更なる血を以て『進軍のワルツ』。」

「…な。」


 距離をとったユーシア。敵にも賞賛を惜しまないユーシアだが、その間にも今村は己に科されている封印術式を一つ一つ解いて行く。

 その姿は堕天使を思わせる漆黒の翼に龍鱗の尻尾。更に絶世の美男子となっており、黒曜石のような瞳がいつもの倍以上の黒目になってユーシアを見据えた。

 それを受け止めたユーシアの本能に警告が走る。


「ちっ!『神聖氣魔大神大発剄』!」

「『白髪鬼』ふぅっ!精神世界内だからできることだな。後はこそっと…」


 神々しい氣を纏うユーシア。それに対峙している今村は楽しげに嗤った。しかし、その刹那の時間にも彼らは数十合にも及ぶ様子見を行っていた。


「…で、あんまり手の内明かしたくないしっと。『白礼刀法・奥義・一の極意【一閃】」

「んぬっ!?」


 だが、その様子見は今村のいきなりの奥義によって潰された。誰の目にもとまらぬ速さで刀身を真っ白に染めた呪刀から繰り出されたその抜刀術はユーシアの大剣を一刀の下に引き裂く。

 そして勢い冷めやらぬまま鎧に襲い掛かった。…が、それでもユーシアはそこに残っていた。今村は舌打ちを打つ。


「…ちっ。流石原神…これ俺の必殺技で【全】も一撃だったのに…当たっても死ななかったとなれば名前変えないとなぁ…」

「ふざ…貴様ぁっ!」


 大剣。それに加えて鎧まで引き裂かれたユーシアは実際の所死んでいたが、身代わりとなる道具がロストしていた。

 そんなことを知らない今村は必殺技のことを知ったユーシアを生きて帰すつもりがなかったので続けざまの奥義を発動しようとする。


「『白礼刀法・奥義・二の極意【双…あぁ?」

「ミニアン!待っていてくれ!いつか必ず助けに来る!」

「…来るな。死ね!」

「こっち来い!逃げるな!『飛髪操衣』!」


 しかし、それはユーシアの遁走によって行われなかった。今村は盛大な舌打ちと顰め面で全てのモードを解く。


「…逃がしたか…『ドレインキューブ・セオイアル』は…成功してるが…」


 一応記憶の回収は行われていたが、全盛期でもありえないレベルの力で必殺技を繰り出したのに死ななかったというのが今村的には気に入らない。仕方がないので委員長を正座させることにした。


「え?何で儂?」

「つべこべ言うな。それとも…」

「いや…いいんじゃけどね?それにしても…世界最強の神の一柱を…」


 正座しながら今村に畏敬の念を放つリア充撲滅委員会の面々。しかし、今村から言わせてもらえば全然の出来だ。


「まず、その最強の一角のミニアンが助力してた。」

「まぁここ僕の世界だし…それでも流石僕の旦那様だね!何か良く覚えてないけど一発で逃げて行ったよ!」

「次に、精神世界に無理矢理割り込んで来たからそれだけ相手が弱ってた。世界の理に反しつつ精神界のスペシャリストにレジストして全盛期以上の俺と戦うってなれば…これで俺が負けたら恥だろ。」


 実際、今村が元の世界でユーシアに相対すれば真逆…それどころか様子見の時点で死んでいるだろう。その上消滅までされるに違いない。

 下手をすれば相対した時点で消滅させられるかもしれない。


 そんな感じのことを説明しておいた。


「…じゃあ一生僕と精神世界で暮らせばいいってことかな?」

「脳味噌沸いてんのか?」


 結論がおかしいミニアンを半眼で見て、そんなことを言いながら今村は途中で閃いた。


「外でもお前を守れるように強くなるから待っててくれないか?」

「……でも…ぅむっ。」


 反論しそうだったので今村は自分とミニアンの体全体を包む暗黒の霧を生み出し、そして反論の言葉を口で塞いだ。


「中化『χモード』…俺を信じて、待っててくれるか?」

「ひ…ひきょうらじょ…そんなひゅうに…そんにゃかおれ言われたりゃ…ことわれないりゃにゃいか…」

「頼んだよ?」

「…はい…」


 中で何が行われているのか非常に興味があるリア充撲滅委員会の面々だが、今村が怖いので何も言えないし何もできない。

 そんなことが起こっている間に霧は晴れた。そろそろお開きの雰囲気が出ているので瀬目野たちも立ち上がり、ミニアンに暇乞いをする。


「僕に触れていいのは仁だけだ。」

「…おや、失敬。」


 跪いて臣下の礼としてミニアンの手にキスを落とそうとした瀬目野は手を取る前に睨まれ、立ち上がる。


「それでは、今度【可憐なる美】様と会えるのはあなた様と今村さんの結婚式になりそうですね。」

「うん。そうだよね?」


 デレデレ状態に戻ったミニアンは今村に上から抱き締められながら返事をする。上のリア充撲滅委員会の面々に早く行けと顔で示している今村の顔は見えない。


「ね?ねぇ?ねぇってばぁ…」

「…そうだな。」


 リア充撲滅委員会の面々は後で仕返しされない内に帰って行った。


「…ねぇ?この世界がなくなるまで…このままでいてくれないかな…?」


 そして静かになり、ミニアンによって修復されたこの部屋の世界に残された二人は世界が終わるまで抱き締め合っていた。





 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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