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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十一章~面倒事処理~
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11.ブライダルコンサルタント

「そう言えば気になっていたんだけど…レジストしたのにこの世界に連れて来られたらしいじゃないか。どうかしたのかい?」

「ん?あの頃は俺も連勤し過ぎてて精神が弱ってたからなぁ…第1世界の神相手にレジストが成功しなかった。」

「…成程。精神だけならまだ第1世界並なのにおかしいと思っていたけどそういうことか…無理はしちゃ駄目だよ?」

「無理しかしてない。」


 今村とミニアンは未だにいちゃいちゃしていた。しかし、その光景はミニアンのあまりの美貌によって誰の記憶にも残らない。認識外に置かれてしまうのだ。


「…あんまり心配させるようだったら僕と…」

「心労で死ぬ。飼われるのは趣味じゃない。後俺のやりたいことがまだ…」


 今村はそこで言葉を切った。そういえば自分の目標はミニアンと出会った後に見つけたという事を思い出したのだ。


「…そういえば、君の生涯の目標探しはまだなのかい…?それを見つけて達成すれば帰って来るとも…」

「んー…」


 ここでおそらく本当の目標、『死ぬほど面白いことに出合って消滅する』ということを言えばおそらくガチギレされて幽閉され、本当に壊れるまで…壊れても治されて彼女が飽きるまで愛され続けるだろう。


 そしてそれは彼女の今までのやり取りからして見て短時間では済まない。それに彼女の愛しようはまさに異常だ。


 昔、嫌われようと色んな手を打ったのだがすべて看破、もしくは突破された。


 今の今村では太刀打ちできないレベルだ。この少女は本当に凄いのだ。それこそ今村がいちゃつかれてももうほぼ文句を言えなくなるくらいには。


 なので、誤魔化しておいた。


「…そういえば、彼女が出来た。」

「……へぇ。言っておくけど、前にもやったのと同じなら…君には責任とってもらえるようなことしてもらうからね?で、その側室はどんな…?」


 例え、今村が不義理に出ても彼女は動じない。寧ろその別の娘と一緒に攻勢に出て来るくらいにはアグレッシヴだ。


 が、こういった話題になると多少頭が混乱するのは間違いない。その間隙によって今村は話を完全にすり替えることに成功する。


 多少話題の矯正転換の後の更なる誤魔化しの言葉で好感度がまた上がった気もするが、そちらは気にしない。


 どうせ消えてしばらくすれば彼女も忘れるのだから。今村は自嘲的な笑みを内心で浮かべる。


「…おや、あそこの店は結婚式のプランを考える所か…」


 ミニアンが今村の方をちらちらと見る。今村は好きにすればいいとミニアンのなすがままに中へと移動して行った。


「いらっしゃ…いませ。」


 ミニアンの姿を近くで見たブライダルコンサルタントの女性が一瞬で昏倒しそうになったのを今村が補助魔法で立て直した。


「おやおや…随分と年若いカップルですね…結婚をお考えで…?」

「うん。ちょっと話が聞きたくてね。」

「…冷やかしは勘弁だろ…」


 今村の呟きにミニアンは笑顔を張り付けたまま今村を無言でじっと見る。今村はすぐに降参とばかりに両手を上げた。


「あなたの方が結婚をお勧めに…?」

「何か問題でもあるのかい?」


 とても不思議なものを見る目でミニアンに問いかけるコンサルタントの女性。ミニアンは今村を貶された気分になって少々不機嫌になる。


「いえいえ!滅相もございません。」

「…僕の旦那様を馬鹿にするなよ?永遠に醒めぬ悪夢を見せて…」


 怒気をはらみだしたミニアンを宥めるように今村は自分から抱き締めにかかる。それだけでミニアンは目の前の人物から興味を失った。


「だぁりんっ♡」


 羞恥心さえ感じなければミニアンの操作は簡単だ。今も全力全開で甘えに来てる。今村は溜息をついた。


「で、結婚式の話だろ?何か望みは…」

「僕的に言わせてもらえれば君と行くものならどんなものでもいいんだけどね…それでもやっぱりお披露目したいじゃないか。僕の素晴らしい旦那様を!」


 小さくガッツポーズを作って力説するミニアンはとても可愛らしいが、今村にとって内容はあんまり納得はできなかった。


「…結婚するにも今はこんなんだけど?『神核』すら持ってないのにお披露目ってねぇ…それでもいいのか?」

「今の時点で考えてくれるのかい!?」


 ミニアンが目をキラキラさせ始めた。今村は自分の言葉を思い直して少々しまった感を出す。


「え…そういう…」

「もう少し先の話になるかと思ってたけど…そうか。君は今からでも…よし!じゃあ君の気が変わらない内に『契制約書』を出してくれないかい?」


 今村は心底ここに呪具が来ていないことを感謝した。この精神世界内で新しく作ることはできるが、元の世界では効力を発揮できないので本気で感謝した。


「…呪具が来ていないのか…折角『言霊』を獲ったのに…」

「言質返せ。」

「とりあえずはこの世界だけでもいいや。僕と結婚しよう?さ、『契誓約書』を創って!」


 今村は一応抵抗したが、自身の持つ言霊の所為でかなり劣勢になり、結局は屈した。

 せめてもの救いはこの世界は創造神が居なくなっているのでそう長くはもたないという事だろう。

 そんな今村の心中を見透かしたのか、ミニアンが少々悪い顔で今村に囁いた。


「現世でも…僕らはいつでも君の失言を狙っているからね…?」

「…ら?」

「僕は寛大だからね…君のことを本気で好きな娘にはほんのちょっとだけ君を貸してあげるのさ。あくまで僕が本命だということは覚えていてもらうけどね。」

「…はぁ?誰だそいつら。とりあえず一回はぶっ殺すけど?」


 今村は訝しげに物騒なことを口走った。ミニアンは飄々として答える。


「大丈夫だよ。僕の方ですでにテストはしてるから。間違っても君を裏切るような娘はいない。」

「…いや、そう言う問題じゃねぇけど……」

「何回かは既に死を経験してもらってる。僕が君に受けたものと大体同じような目には遭わせてるよ。」


 想像してみて結構酷いものばかりな気がする。自分で言うのもアレだが、ミニアンに対する拒絶はそれはもう厳しいものばかりだったのを覚えているからだ。


「……なんか…いかれきって狂ってんなぁお前ら…本っ当に考えられん…」


 今村は遠い眼+引いている眼でミニアンを見るが彼女は狂気とも言える目で今村を見返した。


「君を想って狂えるなら本望さ。それにすでに君が僕にしたことだからね?それはさておき、今は結婚式の内容に入ろうじゃないか。」


 今村の意識が逸れている間にミニアンの顔をしばらく見ていたせいで心拍等生命活動の全ての挙動が停止し、その間の記憶も意識もなかった女性コンサルタントは今村とミニアンの意識が向くことで意識等々取り戻した。


「それでは、ご希望の様式から…」

「旦那様。君はどれがいいかな?」

「…まぁ、どうせやるなら…」


 こっから先は今村もそれなりに乗り気で話し合いに応じた。その感情の中に少しだけこれで満足して現世では…という未だに諦めの悪い感情を少々残しながら…




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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