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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十一章~面倒事処理~
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10.デート中

「んふふふ~♪」

「ご機嫌そうで。」

「そりゃあそうだよ。他でもない君とのデートなんだからね。」

「…まぁいいけど。この辺に欲しいものとかあるのか?」


 ミニアンと今村はレグバが創った世界の中を移動していた。この中であれば大抵の神々相手でも今村が排除できるからだ。


 因みにミニアンが歩くと道行く人々は男女問わず呆然と立つだけで、通り過ぎた後に軽い記憶喪失になっている。


 もしくは、認識できない。


 何をするわけでもなくミニアンが可愛過ぎるために起こる現象だ。ミニアンを見るだけで脳のキャパシィティが越えるので起こる。


 そんな滅世の美少女に腕を取られて歩いている今村は一言で言えば困っていた。何がいいのか全く分からない自分にどうしてここまで好き好き言えるのか理解が及ばないのだ。


「む。君はまた何か難しいこと考えてるね?」

「思考停止は知恵ある者の最大の怠慢だからな。」

「全く…今はデート中だよ?僕のことを考えてくれないかい?」

「お前のことを考えてたんだよ。」

「僕のこと?」


 ミニアンは上目遣いで今村を見上げてきょとんとした顔になった。


(一々可愛いんだよなこいつ…)


「あぁ…何がよくて俺を好きとか…」

「恥ずかしいことを言わせるな君は…まずは僕をちゃんと見てくれたことだろう?僕の料理を食べてくれたこと、料理を教えてくれたこと、相談に乗ってくれて命懸けでそれを解決してくれたこと。話をしていると楽しい所、一緒に居ると心安らぐこと、何だかんだで優しいこと。…これじゃ足りないかい?」

「うん。その程度誰でもできる。」


 得意げだったミニアンの顔が今村の真顔の返事で半眼になる。


「誰にもできないから僕は君が好きなんだが?」

「…そうかぁ…?」

「大抵僕の顔を見て勝手に理想を押し付けて来るからね。その点…」


 ミニアンの両手に力がこもり、今村の腕を一層強く抱きしめた。


「君はを見てくれた。しかも取り合わない僕に気を悪くした風もなく初期の僕のあの料理を普通に食べた。」

「…まぁ…確かにアレ食えるのは俺くらいか…?」

「姉さまたちにあの凶悪な【暴食現象】を一部封印しなければよかったと言わしめたものだからね…」

「…今の料理はいいじゃん。」


 落ち込み始めたミニアンの為に今村は話題転換を図る。ミニアンの顔が上がった。


「そこが問題なんだよ。僕がどれだけ頑張ったかも知らずに『やっぱり上手』みたいな感じで見られるのが嫌だ。特にあの馬鹿は…何だい君。微笑ましそうな顔をして…ふざけたこと言うんだったら僕にも考えがあるよ?」

「何でもない何でもない。」


 今村は顔に出てたか…とばかりに真顔に戻す。


「…あんまりふざけてたら行き先をホテルに変えるからね?僕はとても楽しみだが君はまだそう言う気分じゃないだろう?」

「あー。んー…」

「気を遣わなくてもいいよ。今更その程度で君を嫌う訳も無いし。これだけ待ったんだから覚悟は出来てる。」


(出来れば待たないでほしいなぁ…)


「待つからね?」

「へーい。」


 今村の表情を伺い、そこから推定して先回りした答えを出しておくミニアン。そんな釘刺しにも今村はやる気のない声で応じる。


「何だその気のない返事は…普通嬉しそうにする所だろう?」

「…ところで行き先は?」

「ここは精神と直結している世界だよ?僕が思えばいつでも出せる。でもまだ君とお喋りしたいからまだ出さない。…で、少しは嬉しそうにしたらどうだい?」


 話題を変えようにも逃げられようもなさそうだったのでとりあえず今村は空いている方の手で頭を撫でて「ありがとう」と言っておいた。ミニアンはご満悦のようだ。


「素直にそうしていればいいんだよ。うん。」


 極上の幸せを顔に表しながら彼女たちはデートを続けた。















「皆さん。中級職になれますので早く行ってください。」


 祓はレベリングを行って全員の強化に勤しんでいた。その為に彼女は攻撃手段の多い『魔術師』を取り、苦戦しつつも一回、また一回と戦闘をほぼ休むことなく行って彼女は『賢者』の職に就いていた。

 周りは一応一日6時間は寝ていたが、食事とトイレ以外は全て戦闘だったのでもうボロ雑巾になっている。


 比較的元気なのは森だけだ。こいつは戦闘中でも寝ている。代わりに触手が勝手に戦闘するので誰も何も言えないが…


「…げ…あれだけ頑張ったのに『イケメン』の派生先が『アイドル』しかない…」

「それでいいので早くお願いします。」

「おぉ…『暗黒騎士』と『聖騎士』どっちがいいかな…?」

「…『踊り子』から『バトルダンサー』か…それとも『キュアダンサー』か…」

「…おっ!特殊ジョブが出てる!『エンチャンター』だって。」


 ワイワイやっている中で祓だけがそわそわしていた。レグバが捕まってからそれなりに時間が経っており、その間ずっと今村と会っていないのだ。


「…早く攻略しないと…」


 祓は何だか嫌な気分を感じながら職が決まった際に着く場所に一人先に移動しておく。

 空を見上げると流れ星のようなものが見えた。


「先生に会いたい先生に会いたい先生に会いたい…」


 ただそれだけを祈って祓は一行を待つ。
















「…お昼ご飯にしないかい?僕、お弁当作って来たんだよ。」

「店まで辿り着いてもいねぇぞ?別にいいけど…」


 その頃、今村とミニアンは1階建ての建物の上にもう1階創造してそのテラスで食事に移っていた。


「フフフ…僕の腕も上達しているんだよ?さぁご賞味あれ!」


 可愛らしい自慢顔に対して今村は重箱の様になっている弁当箱の一部を素早く見て全て自分の皿に移した。


「………これとこれとこれ。俺が食べるから。」

「…僕が作ったんじゃないやつばっかり…」


 その取ったおかずを見てミニアンは少々落ち込んだ。今村がすべて自作でないものだけ取ったのだから気落ちするのも仕方がない。

 しかし、それに対する今村の答えはミニアンの想像を越えていた。


「じゃあいいや。これ毒だから。避けとくよ?」


 落ち込むミニアンに今村はさらっととんでもないことを言う。ミニアンは顔をがばっと上げた。


「…僕が作った物だったら毒でも食べてたってことかい…?」

「頑張ってたしな。」


 平然と答える今村にミニアンは胸が締め付けられる。そして顔を緩ませた。


「この…もうどうしようもなく…あぁもぅ…君は本当に卑怯だなぁ…僕を壊す気かい?」

「…?そんな気は一切ないが…」

「僕だってもう料理できるんだ!変なものはもう作らないよ!」

「ふーん。因みにその毒物、誰から貰った?」

「侍女長の一人だね。一昨日かな?美味しいからどうぞって…」


 今村はしばらくその毒物を見て解析を終了する。


「…致死量までぶち込まれた媚薬だった。…大変だな。」

「そうか…後で背後関係を洗い出しておくよ。あの子も僕の所に勤めて長かったんだけどなぁ……それはともかくありがとう。」

「いや。気にしなくていい。後これ、美味しいな。ガジャウルウマイの風味がするが…」

「!わかるかい!?」

「これは合うな…」

「えへへ…僕も色々頑張ってたんだ。一回で分かられたのは何かアレだけど…褒めてくれて嬉しいよ。」


 すでに相好を崩しまくっているミニアン。そんな二人の下に影が…


「…ちっ。ここまで来させたか…無粋な。『ロワンリベロ』『茨の城』」

「…あ…もしかして…?」


 …来たが今村に速攻で飛ばされた上にこの世界外の遠く離れたどこかで閉じ込められ、逃げようとしてズタボロにされる。

 そんなやり取りを見てミニアンがあることに気付いて今村は気まずげな顔になる。


「…さりげなく守って…」

「気のせいだ。気にしないでいい。それよりデートの方が大事だろ?」

「君は…」


 一瞬何か言いたげにしたものの、今村の言葉に対するミニアンの反応は満面の笑みだった。




 ここまでありがとうございます!



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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