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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間10
220/644

アイドルさん

 ごめんなさい…

 多くの書類、人から人へ流れていく情報、開いたステージで踊る若い少年少女たち、それらを見ながら複数の仕事をこなしていく一人の少女。


 そんな彼女の前に今村は立っていた。


「…何かお前って思ってたより凄いんだな…」

「思ってたよりって言うのが引っ掛かりますけど…少し時間がかかるので…後、後ほんの少しでいいので待っていてください!」

「…まぁいいけど…」


 今村は書類を取り出して本日今村を呼び出した地球からの飛来者、朝倉鈴音を待つことにした。



















「はぁっ!今村さん!お待たせしました!」

「おぅ。お疲れ。」


 しばらくして鈴音が今村の方に駆けて来ると今村は書類に一区切りつけることにしてこの書類で終了することにした。


「うへ…数字がいっぱい…これ何ですか…?」

「ウチで開発中の新型コンピューターの売り上げだ。そっちは合計特殊出生率の修正予想値。それは地方分権にするための核都市形成の…しまうからもういいか?」

「はーい。」


 どんどん螺旋階段状になっているローブの上に乗った書類を見ていく鈴音に今村は答え、そして書類を仕舞った。


「…にしても…お前の事業部もかなり大きくなったな…」

「私の力じゃないですけどね?」

「…いや、少なくともアイドル事業部に関しちゃお前の手腕だろ…」


 鈴音は今村から借りた資金を既に8割返済し終わっていた。が、鈴音からしてみると殆ど今村の力でやったものなのでまだ返せたのは3割と言っている。


「あ、オーナーさん!こんにちは!」

「…よぉ。」


 今売出し中のアイドルが今村に向かって元気よく挨拶して来たので今村も手を挙げて返す。


「阿桜リン(鈴音の芸名)先輩。こんにちは!」

「こんにちは。今日はこれから収録よね?」

「はい!」

「しっかりね?」


 少女は元気いっぱいに去って行った。今村は感心して鈴音を見る。


「ようやってるみてぇだな…」

「…今村さんには負けますけどね~もうすぐ自治区の土地をアフトクラトリアから買収するって話本当ですか?」

「ん?…まぁ、国が負債を払い終えたらな。何十年かかるか知らんが…」

「マジックアイテムもほぼ独占販売じゃないですか。すぐ取り戻せると思いますけどね~」

「…ウチから金巻き上げるってのが何かな…まぁ今はそう言うことは置いといて。何するんだ?」


 世間話もいい怪訝長くなって来たので今村は事務所から出る前に鈴音に本題について切り出した。


「いや~…ショッピングに行きたいなぁって思いまして…」

「…別にいいけど…何でまた俺と?」

「それこそ別にいいじゃないですか!良いなら行きましょう!」


 今村は鈴音に引っ張られるが微動だにせず、その少し後に流れに身を委ねて連れて行かれた。


「まずはご飯食べに行きましょう!」

「おう。」


 そんな微妙な間を二人はものともせずに移動して行った。





「…ここです!土曜日限定で超有名なシェフが来るんですが、土曜の予約取るのに結構…」

「おぉっ!兄貴!いらっしゃぁせっ!」

「よぉ。」


 鈴音がご機嫌で説明していたところに客から見えるところで調理をしていたシェフが今村の方を見て声をかけて来た。


「今日は何か世界有数の超大物有名人が来るってことで貸し切りなんですけど、兄貴が来たってんなら話は別でさぁ!どうぞ!」

「多分ウチが貸切ったな。…だよな?」

「え…っと、はい…」


 もの凄く微妙な雰囲気になる今村と鈴音だが、炎の料理人はそんなことを気にすることもなく裏メニューの限りを尽くしてきた。


「…ドミグラース。今日はデートだから静かに。」

「うぃっす!」


 こんなやり取りで鈴音の顔が一時的に熱を帯びて放電したが、デザートまで食べ終えるとこの店を後にした。


「…今村さん…これ、デートだったんですか…?」

「…何回目かな?さっきのは冗談だ。」


 店から出ても同じ質問しかしない鈴音に今村は8度目になる答えを返した。しかし、鈴音の今回のそれへの応答は少々変えられた。


「…少しはデートですか?」

「角度変えて来たな…別にお前が嫌じゃないんならデートでいいと思うけど…」

「じゃあこれデートですか?」


 今村は答えが一つしかないようなので首肯した。鈴音のテンションが上がる。


「じゃ…じゃあ…」


 鈴音はおずおずと手を出してきた。今村はしげしげとそれを見て判定する。


「太陽線の終点に星が出てるし、金運線に運命線、太陽線が綺麗に繋がってるな。今、何やってもいい感じになりそうだ。恋愛に関しちゃ感情線からみていい出会いがあるもの成就は難しいらしい。で…」

「そうじゃなくて!いや、結構気になりますけど!」

「ん?生命線の終点近くが三角…?おぉ、お前三角関係の中にいるぞ?二人くらいマジで告白して来てる…」

「じゃないです!手を取って下さい!」

「ん?千切るのか?斬るのか?」


 今村は鈴音にしか見えないように冥刀「残雪」を取り出した。


「からかわないでくださいよ…デートですよね?」

「…あぁ。成程。」


 今村はようやく鈴音の手を握った。


「…固いですね。いや、離しませんよ?」

「…何か、まぁいいけどよ。」


 今村がどこを見てよいのか分からなくなってふと建物を見上げるとそこには鈴音の大きな写真が出ていた。


「…ふむ。写真より実物の方が可愛いぞ?」

「…何を急に…?」


 鈴音が今村の手をしっかり握って見ている状態から今村の視線の後を追って上を見上げ、今村が言ったことの意味を理解して顔を真っ赤に染め上げた。


「い…今村さん…そういうのさらっと言うのどうかと…」


 今村はにやりと笑うと「傾世けいせいの美」を一滴舐め、そして言った。


「じっくり言ってほしいのか?」

「ぅううぅ…薬は卑怯ですよぉ…」


 鈴音の目には今村が前世イケメン状態で見える。それを直視するのが恥ずかしいので鈴音の方から目を逸らした。


「ん。あっちにもお前のポスターか…もっと褒めれってか?」

「違いますよ!?これ以上は私がギブアップです!」


 今村はその言葉に笑って、「傾世の美」が解けるまで映画館に行くことにしてそしてその後も和やかに時間は過ぎて行った。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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