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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十章~卒業と就職と進学~
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17.お引越し

「…あぁいるいる。出て行くか消えるか選んでいいよ?」


 今村が分譲のマンションに行ってみると、若い女性たちが恨みがましい顔でうろうろしていた。


「…ふむ。死んだ自分たちの仇ねぇ…自分で取ってくんない?え~と…この前妖学校に行った時に色々作ったよな…」


 今村は引っ越しの荷物の中からドールを10体ほど取り出した。


「これに入って動きな。単体でも死に残れるくらいだし、動けるはずだ。自分の元の姿をイメージすれば元の姿になれる。別の姿なら別になるが…まぁ基本形は人な。」


 霊たちは真っ白なドールに入って行く。するとドールが色を付け、形を変えた。そちらに布を投げると今村は月美との会話を始める。


「月美はなぁ…霊として死に残れなかったからなぁ…俺と一緒とか面倒なことに…」

「…私としましてはこれの方が良かったのですが?」

「…大体、もっと神になるのが早いって分かってたらなぁ…あの洗濯させた時点じゃもうちょっと慎重にやるはずだったのに…」


 会話ではなくドッヂボールだった。その後微妙に死にかけたことに対する苦言などを聞き流しているとドールたちの着替えが終わったようだ。


「…じゃ、復讐頑張れ。」

「…姿形がかなり変わってるんですけど…?」


 黒髪細顔の少女が不安そうにそう言った。今村は僅かに眉を顰める。


「…こうだったらいいなぁ…とか、もしかして…とか思ったろ。その所為だ。…流石にお岩さんみたいになってる奴は…まぁ…仕方ない。」


 幾人かリトライさせた。この場にいる元幽霊少女たちは復讐の顔から一転。きゃいきゃい盛り上がっている。


「…うん…下の方も…だいじょぶ…」

「…じゃ、帰れ。多少姿が変わっても歳月が流れたせいにすりゃ…」

「あ~…え…っと。言っても信じてもらえるかどうかわからないんだけど…私たちって…実は違う世界から来たんだ。」

「どこ?知ってる土地なら送るが…」


 言い辛そうにオレンジ色の髪をした少女が言った言葉に今村は仕事をしながら答える。

 少女は一瞬ポカンとなったが、何故か急に慌て始めた。


「え、えっと?違う世界って意味分かる?違う星の住民とかじゃないんだよ?この世界と違って魔物は居るし!魔法とかあるんだよ!」

「…多分『魔術』だがな。まぁ訂正は面倒だし時間かかるから後でにして、魔力とか魔物ならこの世界にもそれなりにあるぞ。」

「え、えぇ?え…えっと…」

「今村さん!お部屋…また女の子…まぁ暴行監禁・殺害事件場ですからしかたないですけど…」


 仕事に区切りをつけて来たミーシャが今村の所に飛んできた。そしてその場に居る元霊の少女たちを見て溜息をつく。

 対する少女たちはミーシャの元気なさげに垂れた猫耳に視線を集中させる。


「え、えぇ…?……えぇ?」

「大丈夫か?」


 今村を見て猫耳を指さし、口をパクパクさせる少女。


「…とりあえず、事件は二つの部屋を貫通させて作った部屋で起きたので、隣の部屋も除霊しますよ!」


 ミーシャは気を取り直して猫耳を立てると隣の部屋に今村の腕を取って移動して行った。

 ついでにドールズも付いて行く。


「あ~こりゃまた…レイプ目になってんなぁ…あ、後…依存症になっての精神崩壊か…死んでんのに難儀な…」

「…酷い…っ!姫!お気を確かに!」

「…死んでるけどな。じゃあまぁ直すか。」


 今村はテレパスでハッキングを仕掛けた。未だ霊の少女の霊体から何かしらの白い物が空中に放出されていく。


「…ぁぁあ…………ぁぁあああああああぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!ゔあ゛ああぁぁあぁああっっっっ!お゛ぉほぉぉぉぉぅっ!…ぅうううぅっ!」


 激しくのた打ち回り、体を酷く痙攣していく少女。今村は表情一つ変えずに作業をこなす。ミーシャは顔を背けて赤くしていた。

 そんな中、オレンジ色の髪をした少女が驚いて前に出る。


「な、何をやって!」

「房中術。ついでにクンダリニーをある程度。」


 するとオレンジ色の髪をした少女が激昂して今村に掴みかかった。


「き!貴様ぁっ!姫様に何を!そんな淫らなことをしていいと思っているのか!」

「黙れ脳内ピンク色。半端な知識で何語ってやがる。」

「し、知っているのだぞ!私もあの辱めを受けたのだからな…」


 今村は面倒なので聞き流す。どうもクンダリニーを半端にしか聞き取れずに何かと勘違いしているらしいし、房中術についても変なことにしか使われていないらしいので説明が面倒だからだ。

 が、脳内ピンクのオレンジ髪の顔が変態になっていたので一応軽く説明を入れておく。


「房中術は体内の陰の気と陽の気の運用の手助けしてるだけだ。乱れてたから苦しんでるわけ。で、クンダリニー。はいリピート。」

「ク…ン…言えるか!」

「…ドピンクめ…クンダリニーは性欲の昇華だよ。ヨーガの一種。」

「ヨーガ…知ってるぞ…変な体位を…」


 もう五月蠅いので黙ってローブで殴って昏倒させた。


「…あ…ぁぁ…ぁぁぁああ…」

「…まぁ結構痛かっただろうな…神経の焼き直し的なもんだし。で、突っ込んでっと。」


 精神体をドールの中に捻じ込んだ。


「…服は…まぁ何かさっき着てた奴でいっか。思い入れがあるみたいだし。」


 意識の飛んでいる彼女の代わりに今村は布に魔力を通す。ついでにしたから擦り寄って来る目のイカれた少女の頭も鷲掴みにして同じ処置を施した。


「……何か俺が悪者っぽいよな。事実だが…」

「…他に治療って…」

「今の俺には無理。俺、今は単純な治癒って使えないからな~…何か別の行為を混ぜればいけるんだがね…今回みたいに破壊とか。後は…薬湯。もの凄く苦いとか、常軌を逸した味とか、毒だけど。みたいな奴なら許容範囲内。」


 処置を施した者はポイポイドールに突っ込んでいく。


「状態耐性上昇と併用しないと回復出来ないけどな。普通。…あ、そういえば祓は一回常軌を逸した味を体験したな…大変なことになりかけたから一部の感覚をマヒさせたっけ…」


 ミーシャはその言葉に少々ながらムッとする。


 体験なんてもちろんしたくないが、祓だけが少々リードしているというのは彼女にとって好ましくはない状況だ。


「…………でも流石に…」


 今村から看病されてみたいという気持ちはある。が、訓練後の筋力回復ドリンクを飲んだ時の重く蓋を乗せておいた記憶がそれを拒絶した。


「終わり。…じゃあ…どこの世界だ?」

「…え…と…私たちが住んでいたのは『アースガルド』という大陸で…」

「いや、世界の名前を訊いてるんだが…ほら、この世界だったら『ゲネシス・ムンドゥス』的な。」

「星の名前は『ソルバヌトゥス』なんですが…」

「…そんなん結構あるぞ…?世界名は…?」


 首を振られた。どうやらわからないようだ。


「…しゃあねぇか。ミーシャ。」

「手配しておきますね。」


 ということで「幻夜の館」に新たな生徒が誕生した。


「はぁ…来週から大学生活なのに何で入居にこんだけ疲れにゃあならんのじゃ…」


 本日も仕事の為に忙しいことになりそうだなと感じた今村は最近増えたなと実感している溜息をまたついた。




 ここまでありがとうございます。後、ごめんなさい。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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