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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十章~卒業と就職と進学~
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15.バトルロワイヤル

 廃工場から帰って来たら「幻夜の館」の外側に闘技場みたいなところが完成していた。更に、その周りにはすり鉢状の観覧席まで設けてある。


「……そこまでやるか。」

「ふぇ…?」


 今村は着地と同時に保護した二人を解放。そして芽衣に預けた。


「…結構酷い目に遭ってるからカウンセリングよろしく。…それと、メンタルにあんまり問題なければ相馬に連絡取って、それ以外に何かあれば俺を呼べ。」

「はい。」


 芽衣は少女たちを連れて「幻夜の館」内に入っていった。今村は建設中のミーシャの方に飛んでいく。


「あ、今村さん。一応原案が出来てます。」

「…お前らさぁ…一応あの子らの心配とかしろよ…」


 今村は眼中にないらしいミーシャを少し窘めると紙に目を通し始める。


「…明日かよ。」

「はい。待ちきれないので。」


 祓が横からひょこっと出て来た。今村は目もくれずに紙を見終えるとミーシャに返しておく。


「…まぁいんじゃね?予選は俺あんまり見れなさそうだが…まぁその辺は任せる。」

「?何かあるんですか?」


 今村の言葉に祓が小首を傾げながら質問する。今村は事もなさげに答えた。


「ガニアン締めた後、製品の改良の検討をしてついでに大掃除済ませて来る。…で、戻ってきて観戦しながら改良草案を作ることにする。」

「…手伝いますね?」


 ミーシャが唯でさえ忙しそうにしているのに更に仕事を増やそうとするのを今村は止めた。


「いや、いい。グロイことするし。」

「私は…」

「俺の代わりに仕事して。」


 それだけ言うと今村はこの場から「ワープホール」で消えて行った。

















「…はぁ、とりあえず…日付が変わってるな…今何時だ…?」


 今村が今回のゼネコンのあったま悪い作戦が成功してレジェンドクエスターズの弱みを握れたという情報(撒き餌)を流して一網打尽にした後、「幻夜の館」に移動したころにはすでに上位の決勝と下位のワースト争いが決まっている時間だった。


「…ま、いっか。誰も俺のこととか気にしてないだろうし『傀儡』でも大丈夫だが…まぁ一応…」


 そして何食わぬ顔で本部の方にいる「傀儡」と場所を入れ替わると「傀儡」を収納した。


「…ふんふん…………ん?何か…大番狂わせばっかりだな…にしても、マキアと志藤が下位8位…?ふざけやがって…」


 会場の荒れ具合からして見ればもの凄い激闘が繰り広げられていたことが見て取れる。

 それでも志藤とマキアのレベルは別格のはずだ。負けるはずがない。わざと負けたのであろう。…が、もし罰ゲームが嫌で死にもの狂いだったとすれば…


(…石田…どんまい。)


 それほど罰ゲームが嫌だったのか…と自分のことはすでに忘れて可哀想なものを見る目で石田を見ておく。

 …下位グループの志藤以外が全員女性なのが痛々しい…そう思っている今村だが、勿論全員負け進んでいる者の方が強い。


 相手を即座に気絶させ、マインドコントロールで意識のない相手に勝利宣言させ自らは無傷で敗北宣言をした初戦のマキアを見て全員(男子陣・相馬ファンは除く)が死力を尽くした結果闘技場はこうなったのだ。


「…あ、今村さん。お帰りなさい。」

「よう。ミーシャ、それに芽衣。審判お疲れ。」


 猫耳ーズがやってくるのでなでなでして褒めておく。戦闘参加したかったのに審判役が必要という事で泣く泣く諦めてもらったのだ。

 代わりに今夜は添い寝となっている。今村的には訳が分からないがまぁそれでいいなら…と気にしないことにしてある。


「どう?」

「いや、結構レベル高かったですよ?もうすぐ最後の試合が始まりますけど…」

「…でもこれじゃあなぁ…生徒たち用に別試合組んどけばよかった…」


 今村としては教師枠には空気を読んでくれるミーシャ辺りに出て欲しかったのだが、周り無視の祓と純粋培養バージョンの相馬では仕方ない。

 負け越したのがマキアと志藤だからよかったものの、他の生徒が全力でボコされて最初から心を折られて罰ゲーム行きになっていたら本気で可哀想だった。


 …まぁ、狙って負けている者の方が多いのだが…


 そうこうしている内に実況解説コンビ、ゴルフレドとベルの声が放送から流れて来た。


「さぁ決勝前のワースト決定戦です!個人的感想では頂上決戦のような気もしますがどうでしょう!?」

「まぁ…正直な所、この二人の戦闘は見てみたいですね。どうなるのか予測できません…と言うより、グロ・マキア選手が戦闘を真面目にしているのを見たことがないですからこれは期待できますよね?」

「私もこれから楽しみです!ではレディ…ファイッ!」


 戦いのゴングが鳴った。両者互いに武器を持つ。


 マキアが紫色の長いムチで、志藤がいつもの通りの性剣だ。


「手加減なしでいくわよ?『乱れ牡丹』!」

「スペルマを舐めるなよ?『戸渡り』!」

「だからスペルマスターをんな風に略すなっての…」


 今村の溜息交じりの言葉が本部から聞こえるその間に闘技場の中央では白い光が爆発し、チカチカとした光りが舞う。


「おぉっと何となく不吉なことを叫んでいる気がします!」

「…太古の言葉で、意味が…」

「ベル。そこまで解説はしなくていい。」


 今村が実況解説コンビを止める。その間に両者の激突は激しさを増していく。どうやら両者とも短期で決めるつもりらしい。


「『時雨茶臼』!」

「『御所車』!」

「…もう…黙れよテメェら…」


 本人たちは至って真剣に戦っており、実際大気が震え、轟音とともに世界に軋みが入るくらいの戦闘なのだがどうにも言い難い雰囲気だ。


「…志藤のアレって普通に『回し受け』じゃ…「『御所車』です!…しまった!」…あいつ何やってんだ?」


 今村の技の改名を注意した瞬間、志藤はマキアから注意を逸らしてしまった。結果、ムチで剣を絡み取られた上、返すムチによって拘束。その上頭を掴まれた。


「チェックメイト。…参りました!」

「ボクノカチダ!」

「…え?何やってんの?」

「勝者は志藤隆選手だ~!さて、こちらはもうほとんど決まっている所ですね。」

「はい。相馬先生には頑張ってほしい所ですが…まぁ優勝は決まっている様なものですね…」


 今村が混乱している間に皆の切り替えは凄まじいものを見せ、決勝戦へと移った。


「相馬先生は優勝すれば天明先生と結婚の約束を取り付けるらしいですからね。」

「…無謀な挑戦頑張ってください!それではレディ…ファイッ!」


 相馬は開始1秒で沈んだ。祓に話し掛けようとした直後の出来事だった。


「やっぱり!これで天明先生は清い体のままでいられますね!」

「そーですね。…というか、こちらにはもう興味がないのでさっさと校長先生とマキア選手のキスに行きたいんです。天明先生。何か、誰かに言ってください。」


 ベルがもの凄くやる気なさそうにそう言った。因みに今村は何でマキアが負けたのか意味が分からないまま決勝が終わったのを見届ける形になる。

 マキアは唇のケアをしっかり行っており、忙しい。そんな中、祓はにっこり笑った。


「マキアさん?負けた権利下さい。」


 会場が静寂に包まれる。今村はマキアが負けた理由の動機を考えるので忙しい。そんな中、沈黙を破ったのはゴルフレドだった。


「そ、その手があったか~!何と言う機転!相馬先生との婚約を認めないために優勝して校長先生とのキスは諦めた物と思っておりましたが!」

「成程、一本取られましたね。」

「ちょ…それは酷くないですか先輩!?」


 冷静に感心する周りに対してマキアは納得いかない。それはそうだろう。ここまでの戦いは熾烈を極めていたのだから。

 対して勝つ方はほぼ棒立ちでも勝てたのだし。


「…ルールはルールですよ?ね、先生?」

「………は?仕方ないから『ウィズダムウォーター』…うん。意味分からん。何で俺がキスすることに決定してんの?」


 色々思考放棄して現状に追いついた今村はまずそこから入った。


「まぁ、それは今は置いておいて、優勝者は負けた方になら何でも言うこと聞かせることが可能ですよね?」

「そうだな。」

「なら、マキアさん(敗北者)の権利も(優勝者)が貰うことは可能ですよね?」

「そうだな。」

「では、いただきます♪」


 こうして訳の分からないまま、ほとんど戦闘と言う戦闘も見れずに初回のバトルロワイヤルは終了を告げた。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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