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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第九章~クラッシャー&ブレイカー~
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19.文化祭準備前の会議

「ということで、第一回文化祭の会議を始めよう。で、とりあえず俺は口出さないから。」


 今村は戻ってからフリースとの戯れによって更に力の減少が進んでいたので軽く不機嫌な状態で職員室に入ると唐突にそう告げた。


「…えっと?ミーシャさんは…?」


 職員朝礼の時間になっても来ていないミーシャのことを心配する石田ウサミミ。祓は少し顔を顰め、芽衣が微妙な顔をし、相馬が普通に答えた。


「あぁ、多分疲れて先生の部屋で寝てるんじゃないかな?気配がないってことは先生の家以外に考えられないし。」

「…まぁ、そういうことだ。こんなこともわからんとはそのウサ耳は飾りか?レーダー的なこともしないとか…無駄だなぁ?千切っていい?」

「駄目に決まってるじゃないですか!?」


 今村の機嫌が石田を虐めることで少し戻ったところで議題を元に戻す。


「ミーシャは大枠を決めてる。この内容で大きく逸脱しないように。あ、このリラルってのは俺が持ってる世界の通貨単位。セグメンテーションもターゲッティングもご自由に。でも、予算を越えないようにな。」


 今村はそう言ってミーシャが昨日他の仕事と並行しながら頑張って終えた書類を祓に手渡し、回させる。


「リラル…って、通貨単位なのはわかりましたが…この1万リラルって言うのがどれくらいの価値なのかが分からないんですが…」

「ん~…大体店の経営を本気でしたいと思ったら必要となる最低限の資金だな。あんまりヒントを与えすぎると面白くないから現地に行ってからその辺の相場は調べてほしい。」


 今村はそう言うと本を開いて黙ってしまった。やはりご機嫌斜めのようだ。仕方がないので今村以外で話し合いを進める。


「何か店を開くにあたって許可とかは…」

「157ページ。」

「全体としての動きとかは…」

「4ページ。」

「準備期間における留意点は…」

「496ページ。」

「…何か話し合う事ってあるんですか?」


 全て書いてあった。ミーシャの夜なべの成果だ。


「…あぁ、一応中央特設ステージで出し物とイベントやるからその内容の決定。因みに俺とミーシャは忙しいから除外。…って、書いてたはずだが?」

「あ、すみません…私で止まってます。」

「…まぁいいよ。決めといて。ゴルフレドとベルの解説実況コンビにその辺りは仕切ってもらうから。」


 目と口、それに解説のベルの方は知識に特化した校内では数少ない男子陣の名前を出しておく今村。

 それとついでに暇してる妖怪どもも使っていいことを告げておいた。


「まぁ、グチャグチャかグダグダにならないようにね。一応見に来るのは一般人だし。まぁ、ある意味娯楽に関しちゃその辺の奴らより大分舌が肥えた連中だ。」


 この後の会議の内容で決まったことは、


 1-1(祓クラス)オリジナル演劇。「奴隷たちと王子様」

 2-1(相馬クラス)オリジナル演劇。題名は決まっていない。内容は王道のファンタジー

 3-1(芽衣クラス)個展。作品は自由。


 となった。


 今村はまぁいんじゃね?で通してしまったが、祓が作った台本を見ていれば止めただろう。

 通ったことに祓は内心しめたと思ったが全くもって表情には出さない。今村が相馬の内容の無さに大丈夫か?と訊いている間に少し人の悪い笑みを浮かべただけだ。


「じゃ、後は各クラスから文化祭実行委員を決めて、出せばいい。はいじゃあ今日の朝礼はここまで。」

「ちょ…私まだ決まってないですよ…」

「知ってる。決められなさそうだからクラスで話し合うと良いよ?」


 今村の提案に石田は黙って顔を赤らめて受け入れた。


「じゃ、今度こそお終い。俺はちょっとみゅう連れて異世界行ってくる。」

「パパ、呼んだ?いったぁい!」


 今村は現れたみゅうに反射的に攻撃を入れてしまった。


「…あ、ごめん。」

「みゅうじゃなかったら死んでるよ!?謝るならちゅうしてよ!」


 みゅうの訳の分からない謝罪請求に今村は黙ってみゅうの髪の毛を一筋抜き去った。


「みゅぅっ!」

「仮権利委譲。祓。これ持ってろ。」


 針のようになったそれを祓の机に投げ刺す。その後に今村は嫌そうな顔をして頭を押さえて涙目になっているみゅうに口付けした。


「ん~…おいしぃ…」


 勝ち誇るように態々口が塞がっているから別音源でそう言うと今村はみゅうと離れた。


「…日本に飛ぶぞ。後、そろそろ飽きた?」

「うん!いーよ!一生飽きない!パパ大好き!」


 微妙に最後の辺りがエコーがかかった状態で今村とみゅうは消えて行った。



















「さて…、陸奥に連絡取った後は…何しよっかなぁ…」

「…パパァ?みゅう…訊きたいことがあるんだけど…?」


 みゅうがおどろおどろしく今村の背の上で声をかけて来た。今村は嫌いになったかな?と期待して後ろを振り向く。


「何?」

「…何でさらに弱ってるのぉ…?これ以上何かあったら死んじゃうんじゃない…?パパは死にたいの?」

「それなりに死にたいな。弱った理由はフリースに祓とミーシャを渡さないように戦った事だね。あのアホすぐ人の物を欲しがる…アレは俺の物じゃないっつぅのに…」


 みゅうは納得いかなさそうにしていたがとりあえず嫌われたいと思っているくせにそういうことは分かっていない今村に溜息をついた。


「…とにかく、死んじゃ駄目なんだからね?パパが居なくなったらみゅう手当たり次第に八つ当たりしていくから…」


(…穏便に消えないとな…さぁて…特異点相手にどう誤魔化しを入れて死に遂げるか…まぁまだ死なんけど。)


 みゅうの言葉に応えずに今村は陸奥と待ち合わせのカラオケボックスに移動した。



「し~てやんよ~♪」

「…で、一応文化祭を開くけど、内容は大体こんな感じ。」


 今村は電子精霊を出して好きにさせている間に陸奥との取引を終えた。陸奥は電話帳の如き厚さを誇る計画票を見て虚ろな目になった。


「あの…何で歌ってるんですかね…?」

「歌いたいからだろ。ついでに言えば基本的に俺は祓とセットで、祓は俺が音楽聞いてるとじっと見て来るからたまにしか聞けない。だから今歌ってるのを聞いている。」


 因みに今村の音楽の好みはアップテンポの曲だ。アップテンポで歌詞がダウナーだと尚よし。


「…まぁ代表がかなり変わってるのはもう知ってますけどね…集中できないんですけど。」

「ん?何で?俺が一時的に人間だった時は音楽流しながら課題とかしてたけど?」

「…なんか油断してるとサイリウム振って応援しそうになるんです…」


 今村は歌っている少女たちのイメージカラーのサイリウムを出して横に置いた。


「じゃ、話を続けようか。」

「30分経ったよ!お膝の上に移動ね!」

「…後30分黙ってろ。」

「じゃあギュッてして~今と、30分あとにも!」

「震える私を…」


 この後、みゅうがいつの間にか頼んでいたフライドポテトを運んできた店員が歌っている面々を見た後フリーズして、結果的に陸奥もサイリウムを振った。


 今村はそれをしっかりと映像に残した後、みゅうを抱き締めた。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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