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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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19.買い物

 二人で歩いていると露天商の一つに今村が気になるものを見つけた。


(……これは呪具だな……魔具じゃねぇ……)


 今村がじっと見ていると店主らしき外見は若い女が声をかけてきた。


「いらぁっしゃい。何か気になるものあったぁ?」


(口調も声も女だが……こいつ多分男だよな……別にどうでもいいんだが……)


 何の力も使わないで店主の正体を見破ると今村は色気を振り撒く店主のことを無視することにして品を見ていく。


(……ん~材料はいいんだがなぁ……肝心の呪力が全っ然入ってないな……素材の味を活かしました調味料はなしですってぐらい。)


 色々見ていくと店主がお勧めとばかりに小瓶を出してセールストークを始める。


「こぉれなんかどう? 隣の美人の彼女もあなたに夢中になってぇ、離れられなくなりますよぉ?」


 今村は小瓶の中身の液体を呪力の入り方だけで鑑定してみる。


(……ん~『傾城けいせいの美』か……でも、うっすい。瓶全部飲んでもって一日ってところかな……)


 今村は鑑定が終わると無言でそれを返す。店主はセールストークを続けていたが、今村は無視する。

 しかし、彼は一つのネックレスで目を止めた。ネックレスは金の細い鎖の先に黒い宝玉がはまっており豪華なもので、それを見て今村は初めて口を開いて店主に訊いた。


「……これ、いくらだ?」

「えぇ~……それぇ? ん~綺麗だけどぉ殆ど力もないから50G(50万円)でいいわぁよぉ?」

「ほらよ。じゃあな。」


 今村は貨幣袋から大金貨五枚を渡すとそのネックレスを首に掛け、その店を後にした。


(……あいつ阿呆だなぁ~こんないいもんを50Gって……)


 今村は満足顔でそうしていたがふと後ろに続く祓が何も買ってないことに気付いた。


「……? お前は何も買ってないけど……いいのか?」


 いい物を買えた今村は自分だけ楽しむのも気が引けるため祓の買い物にも付き合う気になっていた。しかし、祓は首を振り「行っておきたい場所はあるので」と言って今村を先導した。今村は本を開いてそれに付いて行く。


 道を外れるとすぐ、祓は多くの男魔導師に声をかけられ続ける。しかし祓は尽く無視し続け、今村と話そうとする。だが今村は聞いてない。聞いてないどころか祓のことを見てもいない本しか見ていない。

 その上、道も知らないのに祓のことを追い越してしまい、行き止まりに向かうのを祓に止められたりする。


「……あのー……ご機嫌がいいところ悪いんですが……ちゃんとこっち向いてもらえます?」

「え? あぁうん。」


 とうとう祓は今村に直接言ってみるが今村は一向に気にしていない。それどころか何故か目を閉じて言った。


「寝る。着いたら起こして。ローブ。補助・自動歩行。付随対象:天明 祓ウェイクアップ動作:付随対象の動作停止」


 やりたい放題だった。


「……折角なのに……どうしてそんなことをするんですか……?」


 祓は心の中で反芻して思い起こしていた雑誌、若者向けのデート紹介雑誌と現実のギャップに訳が分からなくなる。

 当然のことだろう。デート中に寝たまま歩き続ける彼氏など不気味すぎて雑誌に挙げられる訳も無い。寧ろ別れる案件ですらある。


 尤も今村にしてみれば偶々あった知人という感覚にすぎないの辺りにズレが生じているのだが……


 軟派は止まないが会話は止み、祓は表情を僅かに暗くして黙々と歩く。この状況が嫌な祓はさっさと目的地に着くことにして歩調を速めた。


 そしてすぐに目的地に着く。


「ん~あんまし寝てない……着いた?」

「……はい。」

「? テンション低いな。軟派になんかされたか? ちょっと殺してきてやろうか?」


 もの凄く軽いノリで言う今村。その言葉は祓の中で、自分を害したものを許さない……つまり自分のことを大事にしてくれているという感じに聞きかえられる。


「……ありがとうございます。ここがオークション会場で、目的地です。」

「……へぇ。」


 沈み気味の気分からいつもと同じ、いや僅かにそれを上回る状態に戻った祓。今村はそんな祓の変化にも気付かずにオークション会場の中を目を細めて見ていた。




 ここまでありがとうございました!


 今村くんのお金は使われなかった4月、5月分の理事長給付金から出てます。


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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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