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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第九章~クラッシャー&ブレイカー~
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10.とりあえず学校見学

(…足ないのに椅子の意味は果たしてあるのだろうか…)


 今村が校長室に入った時に思ったことはそれだった。まぁ実際は今村も特に椅子は不要だが良く使っているので何とも言えない。


「…えぇと、どちら様ですかな…?」

「お前らを強制成仏させに来た。」

「えっ」

「冗談だ。」


 全く笑えない冗談で場を凍らせた今村。相手の校長と思わしき霊は半透明の顎に蓄えた髭を撫でる。


「冗談でしたか…あまり笑えませんな…心臓に悪いですぞ?」

「元々心臓動いてないだろ。」


 こちらのジョークは笑えたらしい。今村と校長が笑いあう。その間に首がほぼ千切れ、皮だけで繋がっている秘書らしき人物が頭をひっくり返したまま血を噴水のように出してお茶を持って来てくれた。


 その様子を見ただけで祓とマキアは今村にしがみつく。今村は普通にお茶を飲んだ。


「…ん?ほう。良い毒使ってますなぁ…」

「生者が憎い…憎いぞ…死ね…」


 今村の賛辞に目から血を流しながら喜ぶ(?)秘書。一応大事を取ってマキアと祓には飲ませないことにした。


「さて、校内に活気がありますが、もうすぐ文化祭の季節ですね~」

「まぁ、皆さん死んでますから活きはないんですがな。」


 お互いまた笑い合う。その感性が祓とマキアには分からなかった。


「だ、大体非常識なんですよ…黒魔術で動くならまだしも、何だかよく分からない原理で動いてるし…」

「……魔術で動いてても嫌なんですけどね…」


 魔術の専門家マキアが誰にも聞こえないようにぼやき、祓がそれを聞きとって弱々しく突っ込みを入れた。


「…で、うちもそろそろ文化祭始めようと思って、参考になるかな…と思いましてね。それにウチの先生と生徒を一人ずつ連れて来てますし、そちらにもメリットになるかと?」

「ほうほう…願ってもないです。確かに知識だけしか入れておらず、実践はまだまだでしたからな…この話お受けいたします。」


 そんな感じで現実逃避していると今村と校長はいつの間にか話をまとめていた。


「…じゃ、クラスは…」

「先生の方は、すべての学年を回ってもらいましょうか。…あ、内臓を見せてほしいと言ってくる子が居るので気を付けてください。見せると正気を失った彼にミンチにされます。」

「見せませんよ!?」


 頭がおかしいとしか思えなかった。祓の手に籠る力が強くなる。


「え~…あ、生徒さんの方はどのクラスに…?」

「ん?どのクラスでもいいけど…マキアはどんなクラスがいい?」

「せ、先生と一緒に居られるように…お願いしますね。」


 マキアの頼みは次の校長の言葉できっぱり断られた。


「いえ、生徒さんは不死クラスに行ってもらいます。今村先生は特別教室を臨時に開いてもらうという事で…」

「え…せ、先生?私たちと一緒じゃ…」

「ん?さっきの話の時に聞いてなかった?カウンセリングしてくるぞ俺は…」


 その言葉に二人の顔が絶望に染まった。今村は流石に酷いかな…?と思い始めて来たので手に「死神の大鎌」を出した。


「…分離せよ。汝、我が下から離れ、彼の者に仮初の忠誠を誓え。」


 今村がそう言うと「死神の大鎌」から逆刃の15cmほどのナイフが出て来た。


「ん。祓に貸すよ。これだったら不死とかそう言うの関係なく殺れるから。」

「…!先生!これ前世の先生の歯ですよね!?ペロペロしていいですか!?」

「…よし、マキアには貸さねぇわ。」


 事実と言えば事実だが、柄の部分は違う。持っていても汚いと捨てられることはないだろうと思ってとりあえず渡してみたが、マキアの反応が予想の斜め上だったのでもう出さないことにした。


「…先生の…歯…」


 祓はしばらく「死神の刃」を見ていた。そして今村の方を見ると少しだけ離れて頷いた。


「が、頑張ります。その代り…これ、くれませんか…?」

「…ん~…まぁ…いいっちゃあ…いいが…それ、霊力付与49日しかもたんぞ…?」

「いいですよ?」


 因みに校長と首が落ちかけの秘書は今村が「死神の大鎌」を出した時点で怯えて何も言えなくなっている。


「…私は?」

「お前は一応神だろ。自分で何とかしろ。」

「ケチ!祓さんだって『神核』持ってるじゃないですか!」

「…ありゃ半神だろ。つまり半分人間だ。」


 今村は肩を竦めながら「死神の大鎌」を体の中にしまった。


「と、とりあえず。案内しますね?」

「こわぁい…あの人怖い…怖い…」


 若干腰が引けている校長と完全に怯えている秘書に促されるままに今村たちは移動を開始した。



















「ということで、この学校に短い間ですが、訪問にやって来てくださったニンゲンの方と、神様です。それでは代表の今村。お願いします。」


 瞬間、今村から圧倒的な霊気が放出された。


「紹介に預かった今村だ。うちの子に手ぇ出したら…どうなるかわかったか…?」


 今村のローブには目玉が落ちかけのゾンビが居た。今村はそいつを一瞬で細切れにして踏み躙る。


「さて…ネクロマンシア。」


 霊気と魔力の混合で行った黒魔術でゾンビを元に戻すと今村は霊気を収める。


「…ってことだ。まぁうちは自由恋愛だから厳しいこたぁ言わん。だが、限度は知れ。今みたいに舐め腐って半霊化してれば何してもいいとか言う甘い考えは…」


 「死神の大鎌」を今村は出してステージの壇にぶっ刺した。


「今度はこっちで相手してやるよ。」


 今村の凄味のある笑みと共にホールが沈黙に支配された。その後は今村も軽いノリに戻る。


「ま、セクハラするならバレるつもりで真正面から行けってことだな。嫌がったら止めること。こんだけ美人なんだから思春期男子が何かしたくなるのも分かる。女子たちは…今度イケメン連れて来るから。」


 人知れず相馬が犠牲になる事が決定した。霊たちは何か良く分からないがほどほどになら遊んでも良いことが分かって安堵したようだ。


 今村は思ったよりこの学校の質悪いなぁ…と思ったが、もう契約済んだしなぁ…とか思って「死神の大鎌」を仕舞って後は無難な挨拶を行っておいた。


 その後壇上を下りて文化祭の準備が始まる放課後までカウンセリングを始めるのだ。

 最初のお客はガシャ髑髏(ミニ)だった。


「…あの、僕。牛乳も飲んでるし、死体の骨もよく食べてるのに、体がおっきくならないんだ…どうしたらいいと思いますか…?」


 かたかたと頭蓋骨を鳴らしてしかいないが今村には普通に聞きとれる。


「あぁ、多分コラーゲン不足。それと、霊力の流れが悪い。大方どっかの骨ばかり喰ってたんだろ?」

「えぇ…流石…都会の神様は違うなぁ…うん。僕、女性の大腿骨がおいしくてつい…」

「バランスよくいろいろ食べることだな。あ、後はフカヒレとか、そんな感じ。」

「はぁい、ありがとうございました。」


 こんな感じで今村の業務は始まった。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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