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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第九章~クラッシャー&ブレイカー~
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4.国の手先が来たよ。

「さて、今日がなんか来る日だが…名前は何か地味な感じ。顔は…普通。性別女。で、今大学生らしい。仕事をしながら大学に行ってるんだとさ。…因みに俺が行こうと思ってる大学に通ってるんだって。」


 今村はもの凄くやる気なくそう伝えた。徹夜明けでテンションが低いのだ。


「…あれ?俺の机の角が欠けてる…」

「あ、借りてます。使い終わったら元に戻しておくので気にしないでください。」

「…何に使ってんだ…」


 今村は欠伸交じりに訊く。今村の机は木製だが、かなり特殊なものなので取扱注意なものなのだ。


「え?何ってナニに決まってるじゃないですか。よくあることですよ?机の角でナニするって。椅子とか使う人もいるらしいですけど、ほら、先生の椅子って私じゃないですかっ!」


 殴って強制終了。今村はローブを戻しながら目を擦ってマキアに眠そうに告げる。


「も、いいや。黙ってろ。さっさと返せ。」

「え?今濡れ濡れなんですけど…欲しいんですか?嬉しいです。ちょっと待っててくださいね…いや~先生が嫌がるかなって思って乾かしてたんですけどね~」


 今村はこれ以上何も言わずに机を「呪炎」で燃やした。


「もう要らん。俺に戻すな…」

「…テンション低いですね…」

「もう朝起きるのが嫌だ…永眠したい…」


 この後、この場の女性陣に結構説教紛いのことをされ、相馬に人生とは何ぞやとか説法まがいのことをされるが今村は半分寝て聞かなかった。


「…あ、そろそろ時間だな…あぁ、俺の応対は面倒だし…あ、朝のホームルームに関してはもう行って来て、昼休みとかに顔合わせればいいから。」


 その言葉を受けて、ミーシャ、芽衣、相馬、祓などは退出して行く。その後しばらくしてから扉の前に妙な気配が現れた。


「失礼します!」


 気配を感じ取った後、しばらく扉の前で立っていたが、やがて扉がノックされ、眼鏡を付けたクールな印象を受ける女性が入って来た。


「本日より、アフトクラトリア特別自治区における能力者育成学校に従事することになりました。石田 琴音と申します。」


 通る声でそう言い切った石田。しかし、今村の関心は全く別の所に向いていた。


「…一つ質問がある。その触角は何だ?見た感じウサ耳付いてるし、兎人って感じなんだが…」

「ふぇ?」


 この場の空気が固まった。石田はポーカーフェイスだが、今村視点ではその頭頂部にあるウサ耳に挟まれた毛の束がせわしなく動いて落ち着かないですよ!とアピールしているようにしか見えない。


「…あー確かに確認できました。うわ~あざといですね~」

「…え?アレって…突っ込んでいいの…?」


 マキアはすぐに確認。それに続いて咲夜が小首を傾げる。今村はしばらく沈黙が舞い降りたことで触れない方がいいかと判断して別の話題に移ることにした。


「突っ込むのは先生の≪自主規制≫…」

「妄言を垂れ流すな。死にたいか?…あ、君…うさ子だっけ…?俺眠いんだよね…担当を言い渡すから頑張って。今、君の尻を視姦してる変態と、今妄言を垂れ流した変態。」


 尚、両方とも粛清済みだ。


「で、後は…まぁ適当に。各クラスを一回ずつ担任した後は各クラスが担任を勝手に選ぶから。待ってればいいと思うよ。」

「え…あ…と、あなたが今村さんですか?」

「…まぁ、そうだね。」

「あ…僕も将来的に、今村になるよ…」


 混乱している石田に対してもの凄くテンション低く対応する今村と平常ながらテンションの低い咲夜。変態二人に石田はどういった顔をすればいいのか分からずとりあえず立ち尽くしていた。


「え…と、私の席は…」

「あ、今俺が居る席。」

「え…じゃあ今村さんはどこに…」

「さっき机燃やしたから。机が足りてないんだ。気にするな。ちょっと寝てからすぐに出す。じゃ、本日の業務に移ってくれ。」


 そう言って咲夜たちと一緒に石田を追い出した。そして少し職員室ではない半分今村専用となっている部屋に入ると「雲の欠片」を使用して眠りについた。



















「フフフフフ…この感じは寝てますね…?それじゃ…部屋に入ってその寝顔を拝見させて…」

「…まだ授業中だろ。帰れ。」


 寝ていたところをマキアの入室で起こされた。正確には入室前の気配で起こされた。


「…警戒してるんですねぇ…あ、授業中ですけどウサ耳っ子は志藤くんに言い寄られてそれどころじゃないですね。…それに、『魔術』と『魔法』の違いも分かってないひよっこに教えられるほど馬鹿じゃないんで…」

「…まぁそりゃそうか。…もっと言うならあのウサ耳ここから国に人材引き抜くために来てるんだろうけど、そのために教員として入れるってねぇ…何かズレてるな…」

「…ま、先生が怖いんでしょ。」

「だろうな。」


 今村は苦笑しながら「雲の欠片」から降りる。そして月美に紅茶を淹れるように頼んだ。


「はぁ…まだ隠し側女持ってたんですか。…後どれくらいいることやら…」

「…別に側女にしたわけじゃないんだがな…」

「仁。結構不味いのがこの世界に来ているぞ?…って、もう来ていたのか…」


 いきなり冥界の主で美女と間違うばかりの美青年。チャーンドが現れた。そして今村に向けて発言した直後にマキアを見て顔を引き攣らせる。


「結構不味いのって…結構どころじゃねぇんだがな。」

「…いや、もう二人いるんだが…まぁそれはともかく土産だ。」


 冥土の土産かと思ったが今村は口にせずに貰う。クッキーだった。ついでに月美の紅茶が入ったみたいで持って来たため、開けて食べることにした。


「……あひゅい…」

「…それは俺のだ咲夜。月美。温めにしたの咲夜に。」

「はい。」

「…もう一人もいたのか…」


 普通通りの今村たちに対して何か呆然とするチャーンド。また、その外からどたばたとした足音が聞えてきた。


「すみません!今村校長!マキアさんが居なくなりました!」

「私ならいつでも先生の心の中に居ますよ?」

「いた!」

「…これで全員だな…」


 石田とそれに続いて志藤が来た時点で最早呆れしか感じられなくなったチャーンド。今村は今村で志藤と落とせないか落とせるかについての会談を行っている。


 そんな時だった。


「え…?」

「…何だ?」


 石田の目がチャーンドで止まった。そしてその後、顔がじわじわと赤くなっていく。

 その様子を見て今村は笑みを止められない。しかし、チャーンドは特に興味なさそうに今村がクッキーを食べている方を見る。


「…どうだ?」

「ん。美味いよ?」

「…そうか。ならいい。…情報が遅くて済まなかったな…だが、これで一応帰るとする。」

「あ、茶ぐらい飲んでけよ。」

「…心苦しいが、これでもかなり多忙なのでな…あの馬鹿犬がいなくなったから…」


 その件に関しては半分くらい今村の責任なので何とも言えなかった。チャーンドは結構名残惜しそうに去って行った。


「あっ…」


 石田から漏れる声。それを聞いて今村の笑みは深まる。


(兎は月ってか。いいねぇ…楽しくなってきたねぇ…)


 今村のテンションが野次馬根性によって上がり始めていた。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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