3.自己紹介 IN 職員室
遅れました。すみません。
「…そう言えば何で咲夜は女体化したんだ?」
今村は書類などの手続きを行いながら反省中の文字が書かれた紙を貼って簀巻きにした3人に訊いてみる。
因みに縛ったのは落ち着きがなかったからだ。
「…あ、そこの二人がね、僕の抱いてる感情は、友情なんかじゃなくて…劣情だって言って…」
「あ、よしわかった。ぶちのめそう。」
「ありがとうございますっ!」
今村は髪でハンマーを作ってマキアの頭を殴った。祓はその様子を見て不思議に思う。
「…先生…何で喜ぶってわかってるのに痛めつけるんですか?」
「格付け。体に覚えさせる。」
「嫌だ陰王様!体に覚えさせるなんて…ひ・わ・かふっ…」
「…とりあえず口の利き方に気を付けろ。後、ここじゃ俺は陰王じゃねぇ。今村だ。」
今村が書類を書きながらそう言うと、マキアが嬉しそうにまた声を張り上げた。
「陰王様!」
「…よし、祓。お前が痛めつけろ。」
「え…」
突然の指名に驚く祓だったが、それよりも早くマキアの方が撤回した。
「そんな!そんなの酷いです!今村様!お慈悲を!ついでにお情け下さい!」
「…今村様もなぁ…ん~…まぁ、無難に先生でいいと思うよ。」
「お情けの方はスルーですか!先生!性教育してください!」
「生きるか死ぬかの生教育…か?祓、こいつの後始末任せた。」
今村はその横でずっと深呼吸している志藤に盗られている氣の流出を止めて祓にマキアの処遇を任せた。
その後、これ以上は本気で見放されると感じ取ったマキアは黙って書類を書く今村を見続けた。
「…え…と、ご主人様…その女性は…?」
「セフレのマキ…はい。ごめんなさい。嘘つきました。【魔女帝】のグロ・マキアです。好きなタイプは先生で、好きな人は先生です!これ位は良いじゃないですか!」
所々で今村が殺気を飛ばして軌道修正を入れるのでマキアの職員室モドキでの自己紹介はほぼ今村との対話になっていた。
しかし、そんなことは女性陣にとっては些細なことだ。
マキアは自分たちでは歯が立たないレベルの美人。これが今村を狙っているという事の方が問題となっている。
今村が一瞬だけ見惚れていた相馬を殴っている間に芽衣などは素早く全身チェックをした。
黒に近い紫色の腰過ぎまで伸びているのに纏まったロングストレートの髪、きめ細かく嫌味でないくらいの白い肌。少し濃いめのピンク色をしたタレ目がちな目に合わせたかのように綺麗に配置されている鼻と口。
プロポーションも人並み外れでかなりよく、漂う匂いからして人を引き付ける匂いだ。
「…え、と…その方は…今村さんの…何ですか…?」
「知り合いA。」
今村は特に何の感傷もなく言い切った。
「もうちょっと親しく!」
「………いや、どう考えてもこれじゃね?」
しばらく考えた後の言葉に納得いかなかったマキアは抗議を開始、その間に咲夜が出て来た。
「じゃ…僕ね。先生とは…」
「あ、お前は先生じゃなくていいや。何か違和感がある。」
「私の話聞いてますか!?」
今村の言葉で仕切り直しとなって咲夜は再び自己紹介をやり直した。
「僕は、咲夜。……ねぇ。仁さんで行くね?」
「いいよ。」
「仁さんの…友神…今は。これからもっと仲良くなる…予定。基本人間に興味ないけど、使徒みたいだし…うん。大丈夫。…これでいい?」
「…もういいや。志藤。ふざけんなよ?」
「振りですね。わかりました!」
一発殴られて志藤の自己紹介に移る。
「男性の性行為を司り、命を育むもの、志藤 隆です!ご利益欲しい?じゃ、パンツ頂戴!」
「死ね。」
今村は星一つ爆散させるエネルギーを凝縮して威力を余すところなく志藤だけにぶつけた。
「ありがとうございますっ!」
「…まぁ、こんな感じだ。全員黙ってれば美形だが、騙されないように。」
「失敬な!先生に操を立ててますし!女子は別腹ですけど!」
「そうだそうだ!」
「…まぁ…僕に関しては…本当に、興味ないけど…」
「フム。別に合意の上であれば構わんのだが…無理強いしたら『終わりの世界』産のオークの餌食にしてやるからな…」
その発言にマキアと志藤が固まった。
「そ…そんな変な真似するわけないじゃないですか~やだな~」
「ご、合意の下しますとも!」
「…因みに弱体化してるが、解析に関しちゃそこまで問題ないからな?出し抜けるとか思うなよ?」
「「Sir. Yes, sir!」」
「僕は仁さん一筋だし…」
「…ここにいる間に正気に返らせてやるからな…」
今村の生暖かい眼と共に送られる言葉に咲夜は頬を膨らませる。が、この場にいた祓以外の女性陣の挙動が完全に停止した。
「…え?どうした?…あ、また聴覚が…」
「何で聞こえてるんですか!?どうやって!?」
「すみません!そこの方!教えてください!」
「…えー…あ、単純に僕が好みなんじゃない…?」
そう言われて咲夜を観察する一行。
黒髪ロングストレートがとても艶やか。それに、カラーコンタクトを入れたわけでもないのに完全に白と黒しかない少し理知的に見える目。全体的に言えばどことなく幼めの顔に小柄な体型。
「…これが、ご主人様の好み…?」
「まぁ、この方自力で呪いをぶち壊したんですけどね。」
ここでマキアがネタばらしを行った。
「え…今村さんの呪いを…どうやって…?って、今村さんは…?あ、いた。」
相馬を変な道へ連れ込もうとしていた志藤をぼっこぼこにしていた。
「…荒業…多分…このやり方で呪いを解けるのは、僕か、仁さんしかいない、
よ?カテゴリ的に…無理。…まぁ、それに近いことなら、教えれば、できるかもしれないけど…」
その言葉を聞いて祓とミーシャと芽衣は血塗れになっている志藤の上に座って殴り続けている今村の方に行った。
「あの…咲夜さんは教師側の方がいいと思うんですが…」
「え?」
今村は手を止めて3人を見た。その時点で志藤の怪我はすでに消えている。
「…あ、相馬。掃除しといて。」
「はい…にしても…また女性教員が増えるのか…」
職員室内で数少ない男の相馬はそう溜息をつきながら相馬の血の後始末をした。それであることを思い出して今村は立ち上がった。
「…で?咲夜が教師?いいよ。あ、それと相馬には悪いけど、この学校に国から派遣される教員が一人来るらしい。で、俺が美女を侍らせるのが好きだとか変な噂が流れてるからそれも女らしいよ。」
「事実ならどれだけ楽なことか…」
「あ、先生失礼しま~す。『チャームジャミング』はい。オーケーでーす。」
溜息をつく芽衣とその話を聞いてすぐに今村に術を掛けるマキア。今村は訝しげにマキアを見た。
「…何で魅力減退術…?鏡見て死にたくなるくらい魅力ない顔なのにこれ以上魅力なくなったらヤバくない?」
「…はい。一回先生は黙っていた方がいいと思いますよ~?」
「テメェに言われたくねぇ…で、これじゃ解けるぞ。ほれ。」
今村は特に何もしていないのに「チャームジャミング」は綺麗に消えた。それを見てマキアは呆れたように呟く。
「…流石『魔神大帝』…」
「まぁ…来週くらいに来るらしいけど仲良くしてやって。因みにマキアと志藤はそいつが来るクラスにぶち込む。」
今村は特に気にしないことにして話を続けた。それに志藤が食いつく。
「…え?襲っちゃいますけどいいんですか?」
「合意の下にな。それでヤルならちゃんと、躾もしろよ?」
今村は歪んだ笑みでそう答えた。
ここまでありがとうございます!




