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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第八章~八大罪とその主~
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9.怒った後は自己嫌悪

 今村が療養だの何だのして個人的には一区切りつけた時に今村はようやく作戦に手を付けることにした。


「よし、ダクソンと安善の新居探しに異世界を巡ろうか。」

「…やめてあげた方がいいと思うんですが…」

「まぁ安善にその気がなかったとしても誰かの為にはなるだろ。ということで…」

「仁さん~!」


 旅立とう、そう言おうとしたところに空からものっ凄い美幼女が降って来た。


「…先生…あの子は…」


 祓は室内と言うのに天上のすぐ下から出て来た透き通るような水色の髪をして薄ピンク色の目を輝かせて受け止めてくれと訴えかけるあどけない顔立ちをした幼女と今村を見比べて誰だ?というニュアンスを込めて訊いてみた。


「…仕事は?」

「終わらせました~」


 何となく避けてやろうかな?と思ったものの黙って受け止めることにした今村が胸の中にいる幼女―――ヴァルゴにほぼ無表情に近い顔でそう訊くと何故か嬉しそうに今村に擦り寄った。


「えへへ~えへへへへ~…ところでそちらの女性は誰ですか~?」

「…両方とも自分で自己紹介位すれば?何で俺がしないといけないわけ?」


 出鼻を挫かれて何となく不機嫌な今村。その後は微妙に聴覚を失ったりしたが最後には両者溜息をついて終了した。


「…大変ですね。」

「そちらこそですよ~…」

「おい、何で俺をちらちら見てやがる。何?ヴァルゴは天界はもう軌道に乗ってんのに来るなって?」

「ち…違いますよ~!寧ろもっと来てください~!」

「出来れば働きたくない。で?祓はいい加減解放しろって?」

「…寧ろ一生束縛してください。」


 祓の方は聞こえなかった。今村は悪態をつかれたものだと判断して話を切り上げることにする。


「で?ヴァルゴは何の用?」

「…用がないと来ちゃ駄目なんですか~?」

「用がないなら俺の所なんか来ないだろ…」


 呆れたように溜息をつきながらそう返す今村。そしてヴァルゴを床に下ろした。


「仁さんは何するつもりだったんですか~?」

「ちょっと出掛けるつもりだった。」

「じゃあそれにお供しますね~」

「…何しに来たんだ…?」


 今村はかなり疑問に思ったがそれよりも出かけることを優先してすぐに準備に取り掛かった。


「はぁ…あ、祓。今の俺じゃ遠くでも生存可能に出来るほどの余裕がないから付いて来てもらうぞ?」

「…え。はい。」

「悪いな。…にしても…前だったら『ワープホール』で一瞬だったのにな~」


 空間に術式を指で描いて行く今村。その空間に急に何かが現れる。


「ふむ…これでよいのかの…?おぉ!仁!」

「術式がっ…」


 術式の代わりに現れたのは地獄の女帝にして脅威の胸囲を誇るワインレッドのショートヘアーをした褐色の肌を持つ妖艶な美女。サラ・ドラゴニカル・ヘヨルミだった。


「…おや?仁…これは何じゃ?」

「…あ゛ぁ?…っといかんいかん…危うく起こす所だ…マジでタガが外れ気味だなぁ…」


 そんな今村を置いておいてサラとヴァルゴが睨み合っていた。


「おやおや~?何かもの凄い不快な物体が来ましたね~…胸に栄養盗られ過ぎて私のことも思い出せないんですか~?ホント馬鹿ですね~」

「悪いの。虫けらは全て同じに見えるのじゃ。こんなにちんまい者などすぐに忘れてしまってのう…」


 互いに舌鉾を振るい合って睨み合う。祓は今村の方を見た我関せずの状態で、今村は術式を再構築し始めた。


「そうですか~目がおかしいんですね~それに頭も悪いんですか~一遍地獄に居る亡者と両方入れ替えてみたらどうですかね~?あ、どちらにせよ腐ってますか~」

「やれやれ…救いようのない馬鹿じゃのう。精神体しかないというのにどうやって妾の肉体と入れ替えるのじゃ?幼子でもわかりそうなものじゃが…」

「今のは言葉の綾です~その程度のことも分からないって本当に終わってますね~その神生もついでに終わってしまった方がいいんじゃないですか~?」

「そうじゃな。仁と共に神生の墓場というものに行ってみたいものじゃ。主は一人で本当の墓場に行けばよいと思うぞ?」

「…よし、出来た。『転移』」


 ガン無視を決め込んでいた今村は術式の成功と共に空間の裂け目に飛び込んだ。それに習って祓も飛び込む。


「…と、とりあえずえい~」

「決着は向こうで付けるぞ!」


 両者ともいったん矛を収めて閉じようとする空間の裂け目に飛び込んでいった。



















「…ん?付いて来たんだ。へぇ。喧嘩しに来てたのかと思った。」

「…先生…いきなりの宇宙空間にもの凄くパニックになっている人たちに掛ける言葉じゃないと思いますが…」


 祓の言葉通り宇宙空間に放り出されて息ができない何も聞こえないとパニックになっていた両者。その両者に今村は術を掛けた。


「ふはっ…し…死ぬかと思いましたよ~…」

「う…宇宙空間なら先に言っておいてほしいものじゃ…」

「いや、来るって思ってなかったし…」


 今村は少々困り気味にそう言った。そしてサブ思考でこの世界の管理主と連絡を取っているとかなりイラッと来ることを言われた。

 それは今村以外にも聞こえており、周りも顔を顰める。


「『下等なる者ども』…か。ムカつくのう…」

「『下賤なゴミどもが我が世界に入るでない』って…死ぬほど屈辱ですがこの駄乳と同じ感想ですね~…」

「僻むでない。ほれ。」


 腕組みをして見せつけるサラ。そんな二人を後ろにして祓は顔を青くしていた。今村の目が赤く光って口の端を吊り上げていたのだ。


「『灼炎呪刀しゃくえんじゅとう』…死ね。」


 そう言って燃え盛る「呪刀」を右手から出して一振りするとこの世界の何かが決定的に壊れた音がした。


 ―――これは…?まさか…―――


「知ったな?じゃ、バレる前に死のっか。『炎呪式:崩壊』」


 刀を顔の前に掲げると瞑目して何かを念じた。その直後に叫び声が辺りに響き渡る。


「…『喰い散らかせ…』ってあぁ…やっちまったなぁ…」


 そこで我に返ったらしい今村が壊れ行く世界を見て大きな溜息をついた。


「…それなりに時間は経ったし大丈夫と思ってたが…今は不安定なんだからマジであんまり怒らせないでほしかったんだがねぇ…」


 一応、最初の方は下手というか丁寧に対応していたのだが、それで相手が増長したのが気に入らなかった。

 たったそれだけのことで今村の中の【破壊竜】が片鱗を出して今村の思考を破壊に誘導したのだ。


「…これだから全員俺から離れるようにしておかないといけないんだよな…まぁ。」


 それはともかく、と今村は周りで固まっている美女たちになるべく明るい声を出して言った。


「この世界は壊れる。逃げるよ。後、今俺がやったことは内緒ね。」


 美女たちは何度も頷いて今村に続いて元来た世界に戻って行った。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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