6.一方的なる者
「…ちっ。誰だ?悪意に対する結界張ってたのに…」
「…いや~『瞬喰らい』流石だね…」
今村は暴食スライムとのフードファイトに勝った。というより基本的に両者満腹と言う概念がないので準備していた食べ物を多く食べ終わった今村の勝ちと言う判定になっただけだ。
「…【獅子王】外に居たのは何だ?」
今村が帰って来ていた【獅子王】に何があったのか訊いてみる。しかし、それには曖昧にぼかすだけだ。
次いで帰って来た【孤独なる狼】にも訊いてみるが、こちらもぼかすだけ。
「…まぁどっちにしろ【破壊竜】に壊されますから。」
「…それはあんまりいいことじゃねぇんだがなぁ…とりあえずさっさといくぞ【蠍】」
今村は次なる相手、この中での紅一点の今村を睨んだ。「εモード」状態の今村そっくりでだが、今村はこいつだけ完全に別型と思っている。
そんなかなりの美女だが今村はその頭を乱暴に掴んだ。
「あん。乱暴ね♪」
「…テメェのことだからいつもと同じと思うが…今回は時間がないし本気を出す。まともな言葉を発せれると思うなよ?『房中術』」
「望むところですよマイマスター。さぁ【傾世の妖姫蠍】参ります。」
この戦いも別室に移って行われた。
「…あ゛ぁ?この屑どもが…消し炭になれ。」
目を閉じたと思った今村が目を開けるとその口から漆黒の火炎を吐き出した。
「『土王氣戦波』!」
「『炎王氣操炎!』
白い髭を蓄えた仙人のような容貌をしている男と赤髪の壮齢の男がそれに対抗する。
「ちっ…殺り損ねた…あんまり負担かけれねぇし…あぁイライラする…死ねよすぐにぃ!『灼熱炎帝地獄』」
止められたことに激高して追い打ちをかける。防御陣はあっさりと崩壊した。そして逃げ遅れた者たちを焼く。
「がっふ…」
「ぐぁあぁぁ…」
「ざまぁみろ。素直に死んどかねぇから無駄に苦しむ。そら殺してやる。ありがたいと思え。『炎壁』」
「きゃぁっ…」
とどめを刺そうというところでアリスが今村を急襲。しかし、それはあまりにも呆気なく黒い炎によって阻まれた。
そこでようやく祓、芽衣、ミーシャがこの場にやって来る。
「先生?これは…」
「…あぁ思い通りになんねぇ…マジで死ね。思い通りにならねぇもんは消えちまえ『葬霊白炎』」
祓の問いも聞こえずに今村は両手に持った炎で仙人のような男と壮齢の男を殺そうとする。
しかし、それもまた本人の動きが止まることで実行されることはなかった。
「…今の内に回復を!」
「『水麗氣魔発剄』!」
淡い水色の髪をした少年が手を翳した瞬間水が迸る。それがかかると燃えていた炎がやっと沈静化してきたが、それも長くは続かない。
いきなり水が凍りついたのだ。
「…あぁ怠い…皆動かなければいいと思うよ。」
「兄ぃは…何を…」
それを見た途端アーラムはすぐにまたこれも異常なモノだということに気付く。
「…あぁ…好意やら愛を免罪符と勘違いしてる馬鹿たちじゃぁないか…目障りだなぁ…とりあえず居るだけで『気配探知』して寝るのに邪魔だし死んで。」
氷漬けになって行く全員。「熊」は「寒々…」と言って布団にくるまった。
「そのまま緩やかに終わりを迎えて…それじゃお休み。」「…勿体ない。これだけ大量の素材があるというのに…」
寝たと同時にまた起き上がる。コロコロ変わっていく今村に最早絶望を覚えながら氷漬けの者たちが起き上がった今村を見る。
「…うむ。エネルギー源として培養液に浸して恒久炉として使った方が何十倍もいい。勿体ない。」
「があぁぁああぁっ!」
今村は燃えていた上に一部凍りかけていた壮齢の男を四肢をバラバラにして空中に浮かした。
「…ほう。【竜神皇帝】の一族か…第一世界原産のはずだが…?もしかして、【五柱神】か…ならば殺せば俺ら以外の『火』が第三世界から消えるな。危ない危ない…非常に勿体なかった。奴隷傀儡にしておけば主のエネルギー問題もある程度は解消できそうなものだしなぁ…」
にたりとした笑みを浮かべて壮齢の男を観察する。その動きがいきなり止まった。
「『デッドリーハック』」
紛れもなく今村自身から発せられた言葉によって今村が吐血し、全員が唖然とする中、すぐさま右手から「呪刀」を出すと自身の腹部を貫いた。
「…最っ…悪。マジ、で…この屑ども死んでろ…死にてぇ、なら別に構わんが、ゴホッ…俺を巻き込むな…って…の。」
「せ…先生…?」
「ど、け。邪魔…だ。封印し…き、が…出来ん…」
「今だ!」
緑髪の青年が今村に攻撃を仕掛ける。弾丸より遥かに早いスピードで撃ち抜かれたそれは今村の額に完全に命中した。
骨が砕け、顔が血まみれになる中今村はそれでも反撃や防御をせずに術式を創り上げる。
「あぁ…いってぇ、なゴミ屑…マジで死ね…カス。手一杯っつってんだろ…どけ。」
その直後、術式の一部が完成して今村を除く全員が部屋から追い出される。その後で今村は自分の体に起きた傷を一時的に消す。
「『封魔大社』『風前退沙』…あの糞ゴミ屑マジで覚えてろ…沈め。」
部屋に文様が浮かび上がる。薄れ行く意識の中で外で絶叫が迸った気がするがそれを気にすることもなく今村はダメージによってその場に倒れた。
そして、自動的に起き上がる。
「【偽りを飾る魔大鵬】…後始末に出かけましょうか。」
消した傷をダメージごと完全に治すと三日月の様に口を笑いの形にして今村は漆黒の翼を広げた。
「あぁ…とりあえずは、あの塵男を殺したい、それに外のゴミどもの虐殺もしたい、後、善意の意味をはき違えてるカスどもを屠殺したい…さて、その次はピックアップしておいた脅威度の高い星と世界を潰していこうか…【原罪】様が起きられる前に…」
そう言って部屋から出ようとする今村。だが、結界が張ってある。
「あぁ…自分の力には勝てないんだよなぁ…弱った。これじゃ殺戮が…遠距離の手さぐりで行うしかない…なら、仕方がない…近場のゴミからは記憶を貰って回復に充てるか。『ドレインキューブ・セオイアル』」
今村の前に六角柱の黒い透明の切り取られた空間が出来上がる。
「…よし。これで回復の補填はまずまず…それと、遠くの世界をドカン…フム。今回の世界は小規模だったな…大体976不可思議の星とまぁ…適当な数の生命を喰えたか…まずまずといったところか。…で、我らが主に攻撃をした不敬なるゴミを…ちっ…何故かすでに拷問し終わってるな…【五柱神】のおそらく『木』を象る者に植物性の猛毒で苦しめるとは中々いい趣味だ。うん。」
今村は『玉』という技によって外の状況を見ておく。
痛覚は保全し、精神にも耐久術を掛けておきながら体が光速で壊死して行き、再生が行われる。
普通であれば再生に限りがあるのだがその植物毒で外部から養分が入り、その苦しみを永遠化している。
「…まぁ、部屋が汚くなるから後で別に拷問しようか。…よし、開いた。」
今村は前言をすぐに翻して外に出た。
ここまでありがとうございます!
補足類
八つの大罪…七つはおそらくご存知の『傲慢』・『嫉妬』・『憤怒』・『怠惰』・『強欲』・『暴食』・『色欲』です。それに『虚飾』を足して八です。
『原罪』は本体の今村くんみたいな感じです。『憂鬱』は後で来ます。
『五柱神』…「火」・「水」・「土」・「木」・「金」の神が居ます。
不可思議…10の64乗です。那由多と無量大数の間の単位です。
 




