13.アレ?どうしたんだ?
ワープホールに入った今村は何か悶えている人間が隣にいるのを見つけて驚いた。
「えー?何だこれ…とりあえず『クラックエンブレム』」
今村はそこでもがいていた青年を助けて近寄ってみた。
本来なら気にも留めなかっただろうが、ここが今村の改造した「ワープホール」内で、時空の狭間だという事が青年にとって幸か不幸かわからなかったが、助かった要因になったのだ。
「ゲホ…あれ…あなたは…神様!?」
時空の狭間で呼吸もできない環境にあった青年はしばらく呼吸を咽こみながらして、今村を見て驚きの声を上げた。
今村は微妙な顔をする。
「…あー確かに神でもあるなぁ…で、何してたの?」
「そうなんです!色々あって…!あの!」
青年はここに至った経緯を語り始めた。今村はアーラムに創らせた八百石を見ながら青年の言葉を聞いた。ついでに色々話をしたり盛り上がったりして話を脱線しつつも聞き終わる。
まとめるとこんな感じらしい。
今村が出たテレビを見た。
今村が言ったことを信じて大量のゲームを送ったりした。
見事VRMMOに当選。
それがバレて学校で虐められる。
光に包まれる。
ここに来た。←今ここ。
という事らしい。因みにその話を聞いた今村の感想は…
「あのエロゲ。お前からだったのか…」
「はい。『こんな世界観だったらいいなと思うゲームを祈りと共に送れ』って言ってたんで…勿論さっきも言いましたけどファンタジー系統も送りましたよ!」
ファンタジー系統のものは大量に送られてきた。ただ、恋華の前でしていた大量のエロゲは殆どがこの青年からのものだったらしい。
因みに、送られてきたゲームに関してだが、初日、最初の1時間だけで2000本。内この青年が送ったらしいエロゲが約900本となっている。
その後はゲーム云々ではなくその中に込められていた念と性格で選んだ。
「あー…そりゃ当選するな。インパクトあったし…」
今村が作ったVRMMOのようなものを送る基準は性格等の判別に関しては祈りの質で何となく把握して、いいかな?と思った人物のリストをYKZに送るもので、性格が悪くなくてなるべくインパクトがあった人には当たっている。
そして本体に関しては選ばれた時点で天啓的なものを送り、その時点でコードを結んでその後実際は健康診断以外の何の役にも立たない「幸運を呼ぶ壺」を着払いで送るという仕様だ。
つまり、この青年は壺が来ていない状態で何らかのトラブルがあって時空の狭間に紛れ込んだのだろう。
「ん~…今の地球がいつの時間なのか知らんが…壺が来てからは一応VRMMOに関する悪意への防護的なものは働くはずだが…?」
「あ…喋っちゃったんで…」
「自業自得だな。…さて、でも一応ここに居たら死ぬし…送るよ。」
何となく気まぐれで助けることにした今村。青年の状態を見て…口の端を吊り上げた。
「お前、異世界からの召喚がかかってる。」
「えぇっ!?」
青年が驚きの声を上げた。今村は笑って続ける。
「しかも珍しい世界だな。ライアーと同じ負の神が創った世界だ…」
「え…と?」
「まぁよく分からなくていい。…で、あぁ、成程。イカレどもにチート渡してしっちゃかめっちゃかさせて最後にはドーンって感じだな。」
もの凄い擬音が多くてよく分かっていない青年に今村は説明を行うことにした。
「簡単に言えば、俺が便宜上呼んでる『負の神』ってのは大体は破壊神とかそんな感じだな。で、その思考じゃ《破壊することがこの世で最も善いことだ》ってなるわけ。反対に《何かを創ることは悪》って感じ。」
青年は理解しようと努め、首を傾げている。今村は一応待って、何となく理解したんだろうなと思ったところで続きを話す。
「そう言った場合だと、《世界を創ることも悪》ってなるから、世界の創造は起きない。それに周りの世界を破壊して回る。」
「最悪じゃないっすか…」
青年の呟きに今村は邪悪な顔を作った。
「全然。『負の神』にとっちゃ寧ろ最高のことだ。…何もなくなったところで最後に残った自身を壊して終わる。この世界は元々無だった。それが一番善い状態だったのだからそこに戻すことこそ至高。ってな感じだな。」
今村は顔を元に戻す。
「で、大体の創造神は『正の神』、命を育み、守るをモットーにしてる感じ。…これだと世界を創るだろ?」
「はい。」
「だから大体の世界じゃ同じような世界観が広がる。殺しはいけないとか盗みは駄目とか…で、お前らもそう思ってるだろ?」
「そりゃそうですね。」
今村は哂う。
「因みに俺は正でも負でもない化物だが…どっちもどうでもいいと思ってる。だから基本何も生さない。ま、気分次第で変わるがな。」
「…それで…その…何が言いたいんですか?」
「あぁ…話が長くなったな。要するに、お前を呼んでるのは『負の神』、思考はおそらく怠惰。全ては徒労って思ってる奴。そいつがお前のクラスを世界に呼んで、何かしら行ったところで全部破壊して正が間違ってると思って悦に浸りたいんだろうな。」
今村は面白すぎる馬鹿がいるとばかりに忍び笑いを漏らす。
「アレだ。他の世界を侵略する力がないから自世界で済まして悦に浸るとか…高校でぼっちになってる奴が小学校に乱入して俺は強い!って威張ってるようなもんだ…」
「それは…その…」
何とも言えない表情になる青年。だが、今村はもう世界間の移動が済まされている青年に何かすることはできない。
…実際は出来なくもないが、面倒臭い。
「お願いです!元の世界に…」
「無理。」
「そんな!折角VRMMOで遊べると思ったのに!」
今村はそこから青年がやりたかったことを訊き続けさせられる羽目になる。…まぁ煩悩まみれで面白かったので思考の少しを頂いたが…
そのお礼という事で今村は青年の精神を少し弄ってあげた。
「今回行く世界で自然死すればVRMMO…ってか俺が創った世界に転生するようにした。」
「マジですか!?自然死!?」
「うん。殺されれば魂が結構減るから。」
「無理ゲーじゃないですか!神がチート持たせて皆殺しにするんですよね!?」
「バレなければいい。速攻逃げれば?俺基準でそこまで強くない奴だからずっと全員の監視は出来ないはずだぞ。」
「…因みに神様基準で強くないって…」
「ん~…大体…君の考える少年漫画の主人公全員が束になって闘えばギリ勝てると思うレベル。」
「滅茶苦茶だ!」
今村は困っている青年を見て楽しんだ後、青年で少し実験してみることにした。
「そうだ、冒険譚を書いてもらおうか。それなら少しばっかり協力してやろう。」
「マジっすか!?ありがとうございます!」
「死ぬまで書けよ。死んだら俺が創った世界で俺に書き上げたのを渡すように。…あ、その時に俺が死んでるか忘れてたらその世界に行かないから。」
「ハイ!」
今村は青年に能力の授与をし終えると青年を別空間に飛ばして自身もさっさと目的世界に飛んだ。
そして、そこには何故か鈴音がいた。
「…アレ?どうしたんだ?何でここに居る…?」
「…本気で気付いてなかったんですね…ある意味感心です…でも、今は喋っている暇はなさそうです…」
鈴音が辺りを示す。すると、今村が治めていたパラディーソ領が幾重にも包囲されているのが目に入った。
「あっるぇ?マジで何コレ。王国位は攻めて来るかも知れんとは思ってたが…あ!」
今村はそこで何かに気が付いた。…と同時に目の前に祓が現れて今村を力いっぱい抱き締めた。
「よかった…お帰りなさい…先生…」
何やら感動しているようだが今村はあんまり現状を把握していない。…おおよその見当はついてるのだが、今日もの凄い回数言っている気がする言葉をまた使わずにはいられなかった。
「…どうしたんだ?」
ここまでありがとうございます!
因みに別にいいんですけど、今村くん漫画はあんまり読んでないので一般的に日本の人が知っている有名どころの主人公を集めと異世界の神に圧勝できます。




