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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第七章~地球編~
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12.最終日、帰りましょう。

「…結局何でお前来たんだろうな?」


 今村は自称虫除けとか言っていたアーラムにそう言って陸奥を置き去りにして学校を後にしようとした。

 だが、その前に鈴音が立ちはだかる。


「…今村さん…もう帰るんですよね…?」

「あ?うん。最終テスト的なものも済んだしな~」


 軽く言う今村に対して鈴音の表情は浮かないものだ。そしてしばらく両者が黙っていた後で、鈴音は俯きがちに口を開いた。


「…さっき、その…牡丹さんが…クラスに来ていたとき…いや…」


 鈴音は一度言葉を切って顔を上げる。


「異世界に行った時から思っていたんですよ…私って…周りから顔だけで判断されているんでしょうか…?」

「んなもん知るか。」


 斬り捨てた。だが、これでは流石に酷かな?と思った今村はここまでの案内をして貰ったことと、家を借りていた礼を兼ねて少し実験をしてあげることにした。


「みゅう。」

「呼んだ~?」


 今村が呟くほどの声量で名前を呼んだだけで銀髪のもの凄い美幼女が現れた。そして今村の横にいる人物を見て露骨に嫌そうな顔をする。

 対するアーラムは顔に影がよぎった後は顔を俯ける。


「…パパ何でそんなのと一緒にいるの…?八王やおうって裏切り者ばっかりのゴミ屑みたいな…」

「僕は裏切ってない!あんなのと…あいつ等なんかと一緒にするな!」


 興奮して否定するアーラムに対して向けるみゅうの視線の温度は氷点下を遥かに下回るものだった。

 今村は軽く認識阻害した方がいいかな~とか考えてそれを実行に移していた。


「…でも…パパが帰って来なかったのに…君たちだけ帰って来てたよね…?」

「それは…」


 その言葉で辛そうな顔になるアーラム。ちらりと見た今村は特に興味がなさそうな表情をしている。


「それに、パパを皆の所に戻さずにずっと今まで隠してたんだよね!?」

「それは…必要なことで…」


 どんどん弱くなっていくアーラムの声。そんな二人の会話が続くかと思われたが今村が強引にそれ打ち切った。


「悪いがみゅう。」

「…何?」

「お前、俺のこと好きって言ってたよな?」


 アーラムの擁護かと思って不機嫌だったみゅうが一瞬だけ何を言っているのか分からずに呆気にとられる。


「え…あ、うん。愛してるけど…何?」

「あの時は別にどっちでも良かったんだが…今から考えてることをやるなら…アーラム八百石やおせき作れ。」

「え?あ、うん。『カーレリッヒ』…嘘発見だけでいいんだよね?」

「あぁ。」


 今村は直近の誰かが嘘をつくと振動する石をアーラムに創らせて自身の能力で改造するとみゅうに訊いた。


「お前は俺の事が好きなのか?」

「大好き!愛してる!異性としても家族としてもパパとし…」

「あ、もういい。」


 今村はみゅうの方を全く見ずに微動だにしない八百石だけを凝視して溜息をつくと頭をガシガシ掻いてみゅうの顔に自身の顔を近づけた。


「ふぇ?ちゅー…してくれるの…?」

「『俺の目を視ろ』…フム。幻覚状態なし、催眠状態なし、状態異常なし…結果は精神オールグリーンっと…じゃ、少し覚悟しろよ~」

「ふぇ?何?何?っとむぷっ…」


 今村はみゅうの口の中に以前冥界に行った時の木…今村がフィトと名付けた呪刀でもきれなかった上、「呪式照符」でも何の正体も分からなかった木を抱き締めた時に出来た木の実を突っ込んだ。


「…これ使う訳ないじゃんとか思ってたけど…まさか使うことになるとはなぁ…後みゅう俺の指を舐めるな。しゃぶるな。」


 突っ込んだまま軽く思考の海に出かけていた今村は指をなぞられる感触に強制的に正気に帰らされる。

 口から指を出すとみゅうは木の実を飲み込み、そして自身の変化に驚いた。


「な…何コレ…?」

「よく分からん。まぁ効果だけは何となくわかってるんだが…説明はしたくない。で、鈴音の時間軸、座標位置を少しずらして。」

「ん!」


 みゅうは言われるがままに実行する。何が起こったのか分からない鈴音に今村は軽く言った。


「今からお前は少しタイムスリップ的な感じのことを味わう。まぁ…少し難しい話になるから適当に言うとちっさいパラレルワールドのような所に行ってると思っていい。因みに俺とみゅうは特異点だから今回の世界には居ない。」

「え?…え?」


 今村が何を言っているのか全く分からない鈴音だが、目の前に自身がいるのを見て黙った。


「これは…」

「この世界には俺がいないからな。序でに異世界に行くこともない。…で、しばらく見てればいい。」


 鈴音は自身が学校生活を満喫しているのを見てとてつもない違和感を覚えた。


「可愛いからサービスだ。」

「え~?それ似合わないって!こっちにしなよ!」


 …この人たちは私を見ていない。表面しか見ていない…老いていく続きの光景から鈴音は目を逸らしたくなった。

 一気に転落して行く人生後半。その最初が映っていたのだから逸らしたくもなる。そこまでで今村は切った。


「はい。こんな感じ。この無数の選択肢の中で偶々今回見た世界からお前が何を感じたのかはお前しか知らんことだ。ただ、参考には使えるだろ。」

「…今村さん…私は…」

「だからお前がどうしたらいいのかなんざ知るかっての!あ、みゅうお疲れ。」

「みゅ?終わり?じゃあパパ行ってきます!」


 みゅうはまた去って行った。そしてアーラムもいつの間にか消えていた。


「人は何の為に生きるのか考える為に生きる。…そういうものらしいから大いに悩め。で、分かってもらえないとか言って何も行動しなけりゃ誰もわかりゃせんわ。分かって欲しいなら自分で伝えろ。」


 今村が何か言っているのを鈴音は聞きながら心中で鈴音は色んな考えを一気に飛躍させていた。

 そして軽い人生相談が終わると今村はこの場から消えることにした。それを鈴音が押し留める。


「少し時間を下さい!渡したいものがあるんです!」

「…何?別に何もいらんのだが…」

「今村さんが探してた絶版の本の…」

「よし、すぐに持って来い。」

「わかりました!今村さんは『ワープホール』の準備をして待っていてください!」


 見事な掌返しをする今村を背後に鈴音は走り始めた。今村が作った結界内から出て廊下を走ることで注目を浴びたり色々したが、鈴音はすぐに目的地に着くとそのまま折り返し、今村の方へ帰って行った。

 今村の下へ帰ると今村はすでに


「お待たせしました!これっ!」

「おぉ…おぉぉぉぉ…おぉぉ!」


 今村がその本を手にして喜んでいる間に鈴音は「ワープホール」の中にダイビング。今村はそれに全く気付かない。

 一頻ひとしきり喜んだ後にふと周りを見て鈴音がいないことに気付いたものの、別れの挨拶のようなものはしたからいいか。と自身も「ワープホール」を潜って祓たちがいる世界へと帰って行った。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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