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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第七章~地球編~
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10.六日目後半、人材発掘を行おう。

「なぁなぁ?そこの君~さっきから見てたけど景気良いね~?お兄さんたちにも少しお小遣いくれない?」


 不良少女(?)をアーラムに押し付けてふと立ち寄ったところで大量のゲームを買って店を出るとすぐに汚い金髪をして口にリングをつけたチャラい男たちが3人組で今村を捕まえた。

 今村は愉しそうに顔を歪めてその男に対して口を開く。


「この国のどこが景気がいいんだ?財政赤字を見てみろ。脳内お花畑か?後、お前ら幾つだよ。少なくとも俺より年上ってことはないだろ。」


 男たちはしばし唖然としていたが今村の言葉の意味が分かると顔を真っ赤にして怒った。


「テメェ…」

「円高・円安で景気が変わるとでも思ってんのか?目出度めでたい頭してんな。工場が海外移転して現地で人を雇ってる昨今じゃそこまで…っと、人の話は最後まで聞こうぜ?」


 今村のふざけ半分の口上を最後まで聞くことなく男は実力行使に出た。その2秒後、男は何もわからず地面に倒れることになる。


「ん~ヤクザの影響かねぇ…お薬が高くなって暴力で以て金を得ようとする若者がいるのかぁ…じゃ、お薬はいけませんってことを頭の中に捻じ込んで差し上げよう。…ここで言うと何か恥ずかしいな…『悪夢の追跡者』」


 今村は罪悪感を過剰にする呪いを植え付けてみた。序でに特定の人々に感染するように弄って戦利品代わりに財布と身分証を抜き取って、男を裏路地に捨てる。

 因みに、特定の人々とは外部からの何らかの刺激によって一定以上の脳内麻薬物質が分泌されている人間を指定している。


 そんなことをしていると美少女バージョンのアーラムが帰って来た。


「…はぁ、行こ?」

「お前何処に行くのか知ってんのか?」


 何故か腕を絡ませてくるアーラムに今村は何となく辛辣にアーラムにあたる。何か気持ち悪いのだ。


「知らないよ。」

「じゃあどけ。面白いガキがこの辺で遊んでるはずなんだよ…」

「じゃあ僕は兄ぃとギュっとしてればいいんだね?」

「…これ持って帰れ。買ったけど荷物になって邪魔い。」


 今村はさっき買ったゲームを押し付けてアーラムを三度朝倉家に追い返した。そしてアーラムと一緒にいたことで同伴中の金持ちと間違えられ襲われ、返り討ちにするという流れ作業を終えてしばらく探すと今村は目的の人物を発見した。


「見っけ。探したぜ陸奥むつ英雄ひでお。」

「…あんた誰だ…?」


 発見したのは10代半ばの青年。目は淀んでおり、基本身形が薄汚れている。今村はこの青年のことを児童養護施設で知った。


「お前が元々いた施設を全部買い取った化物だ。序でに…今話題になってるVRMMOを開発した奴だな。」


 その言葉に青年の目が一瞬だけ光った。


「へぇ…そんな雲上人様が底辺の俺に何のようだ?」

「スカウト。…あぁ…何かもう面倒になってきた。ヤバいなぁ…死にかけてるから躁鬱に近い状態になってきてる…」


 急にテンションがガタ落ちし始める今村。そこにアーラムが再び現れる。


「兄ぃ?どうしたの?」

「死にそう。…まぁそんなことはいいとして、これ連れて帰るぞ。」

「ぜぇんぜんっどうでもよくないんだけど!?すぐに帰るよ!?」


 アーラムは自身を舐めるような視線で見ている男を無視して今村を連れて朝倉家に戻って行った。



















「今村さぁん…私どうすればいいんですかね…?」

「…何が?あ、今から忙しいから用件があるなら今のうちに早くして。」


 何か急に言ってきた鈴音に今村はそう言って向き直る。そうすると、後ろにいる陸奥が驚いた表情を見せる。


「こりゃ驚いた…スーパーアイドル様のお出ましじゃないか…」

「…まぁこの人が誰かも置いておいて、今村さん…私アイドル辞めて今村さんに付いて行っちゃ駄目ですかね…?」

「お好きなように。自分の人生だ。好きにしろ。」


 鈴音の何か訴えかける眼差しにも今村は気付かずに平然とそう言った。鈴音は少しムッとする。


「あーあー…これですから…はぁ…」

「…そう言えば今日の仕事は?」

「…今日学校で辞めるかもしれないって言ったら…お休みくれました。そう言う問題じゃないんですけどねぇ…」


 因みに今更だが、鈴音が通っている学校は芸能科という特殊学科がある学校で、鈴音はそこに所属しながら勉強をして高校を卒業しようとしている。

 …後、何気に偏差値は高い。ついでに恋華はそこの学校の特進コースに所属している。


「はぁ…気付いてもらえないまま終わるのもアレですしねぇ…ん~…アイドル稼業も短い時間しか出来ませんし…今村さん…どうしましょう…?」

「ん~…この世界は良く知らんが…この前の世界に行くなら、魔術師として一生安泰だろうな。で、ゲネシス・ムンドゥスに来るなら…魔術は隠して…」


 今村が最後まで言うのを待たずにアーラムが口を挟んだ。


「あ、色々あって魔術系の事が大っぴらにされてるから僕が創った世界でも隠さなくて大丈夫だよ。だから兄ぃ早く帰ろう?」


 最後はしれっとアピールしつつ今村にそう言ったアーラムは今村が固まっているのにしばらく気付かなかった。


「…兄ぃ?」

「…そんな面白そうなことやってたならはよ言え!」


 今村はそう言って速攻で陸奥に携帯を渡した。お手製のものだが、売られているのと比べても何の違和感もない。


「…これは?」

「養育機関の子供たちにも何人か渡してるが…世界間とかの隔たりを無視して通信が可能なものだ。…あ、言ってなかったが、俺は異世界から来てる。その辺は追い追い話すから、説明をよく聞け。お前には会社を経営してもらう。」

「…はぁ?」

「形式はヤクザが使ってた架空の会社を実体化させたものだ。実質的に俺が支配してる個人企業だが、ヤクザが集まって作られた合名企業ってことになってる。まぁ利に聡い奴等は俺にコンタクトを取って来てたからバレバレだがな。」

「え…あ?ヤクザ?」

「だが、速さが命なのにちんたらやってる暇がなかったから仮としてこんな感じになってる。これからはキチンとした形にするんだが…俺はもう帰る。指示は出すが現場は臨機応変に対応する必要があるから…」


 その後も混乱している陸奥に今村は容赦なく情報を叩き込んだ。そして陸奥が孤児になっていた理由まで明かしたところで陸奥は頭をガシガシ掻いて諦めたかのように溜息をついた。


「…はぁ、それ知ってるならこんな演技は要らないですね…」

「無能な親を持って残念だったな。これからお前はうちの会社でその腕を存分に振るってくれ。」

「…はぁ、もの凄いずさんな会社ですけど他のどの会社も真似できない技術と先行資金があるだけマシか…このまま終わるわけにはいかなかったので、この仕事は受けましょう。」

「よろしく。」


 今村はぽけっとしている鈴音の方をまた見た。


「悪い。明日の夕方って言ってたけど朝一で帰る!」

「え…そんな…まだ…」

「悪いがこの世界にいるだけで俺の能力値は減り続けてるんだよ。帰ったら魔導世界になってるのにこれ以上弱ってたら不味い。ガニアンとかが蜂起してくる可能性があるからな…」


 懐かしきマジックアーケードの番人のことを思い出す今村。実際ガニアン相手だったらここに1000年いてもお釣りがくるのだが何となく気がいているのだ。


「よし、じゃあ陸奥!この世界の法はあんまり知らんけど人間の動かし方なら知ってるから今から叩き込む。行くぞ!」

「ちょ…あぁ…」


 鈴音の言葉を最後まで待たずに今村は割り当てられている部屋の方にアーラムと陸奥を連れて行った。





 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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