6.三日目、大変なことになる。
若干シリアスです。途中まで。
「ん~…色々気になる本があるんだけどなぁ…もうあんまり時間がないしあの手を使うか!」
「何するの~?」
「VRMMOを開発するって銘打って実際の所、異世界を創ってそこに一般人は精神体だけ送るようにし、裏で普通の人間…まぁこの世界からすれば人間じゃないけど…そいつら使ってゲネシス・ムンドゥスと貿易する。」
「ぶいあーる?げねしす?」
「まぁその辺は適当でいい。」
今村は漫画や小説が読みたいという理由で新しい世界を創ることにしたようだ。
「要するに、俺が今回の生を受けて過ごしてる世界とここは離れすぎてて一回で飛ばすにはかなり面倒だから中継貿易地点を作るってこと。」
「ん~?」
「まぁ…説明してもよく分からんだろうからみゅうは俺の邪魔をしないで何かしてろ。」
「みゅう何かお手伝いできることない?」
「空間圧縮。」
「ん♪」
二人はこの世界に穴を開けた。
「レッツゴー!」
「ごー!」
世界の創り方講座始めます。
①範囲指定
②世界の法規設定
③なんやかんや
④世界の細々とした設定
⑤色々
⑥見直し
⑦駄目だったら①からやり直し良ければ終了
「出来たー!」
「やったー!」
「ふぅ…ところでみゅう。」
「なーに?」
「俺色々やりすぎた。死にそう。」
「え?」
みゅうは今村のことを観察してみた。そして固まる。
「パ…パ…?」
「てへ♪」
「てへじゃないよぅ!何してるの!?」
「あーおっけぃ!」
「何にもオッケイじゃない!ど…どうしよ…どうしたらいいんだろ…」
みゅうは何気に死にかけ状態の今村を前に慌てる。治せない状態なのだ。エネルギーの枯渇、及び異常状態への進行。
今村の容体的にはもって…
「長生きして100年くらいだな。うん。」
「そんなのやだよぅ!」
100年くらいだ。
…結構長生きな気もするが神々にしてみれば一瞬のこと。みゅうは泣き始めた。
「やだやだやだやだやだやだやだやだ…」
「まぁ落ち着いてお茶でも飲め。」
「バカァっ!そんなのどうでもいい!パパの馬鹿ぁ!」
「…お茶はどうでもいいものじゃないぞ。落ち着いたら頼みたいことがある。」
今村は緑茶を出して抹茶羊羹をお茶請けに和んだ。みゅうは今村をぎゅっとして離れない。しばらく無言で時が流れ、みゅうが切れ切れに今村の頼みを訊いた。
今村はお茶を置くと答える。
「4次元生命体がどっかにいるから連れて来て。そしたら俺の今の状態を改善出来るから。」
「え…?」
「まだいろいろ約束事を果たしてないから死ねないんだよねぇ…困ったことに。」
「困った…ことじゃ…ないよ…っく。死なないで…」
「ん~…何か永遠じゃなく限りある生命だから今が輝く的なことを漫画が言っててね…」
「そんなの知らない…今が輝いても後が真っ暗ならそんな世界みゅうは嫌…」
「いや、実際俺もアレだ。永久に続く日々より熱い刹那が…」
「ふざけないでっ!」
みゅうが今村に面と向かって初めて見せる憤怒の形相。今村はそれでもまぁ顔が幼いなぁ…雰囲気に反して可愛くて残念と思えるが、今創ったばかりの世界がみゅうの放つ氣に悲鳴を上げる。
「どれだけ…どれだけみゅうが…」
「落ち着いてお茶を…」
「ふざけないでって!パパ最低!もう知らない!死んじゃ…」
そこまで言ってしまってからみゅうは今自分が何を言おうとしたのか、そして今村がどうなっているのかを自覚した。
今村から発される視線の温度が下がっているのだ。みゅうは急に冷や水を浴びせられた気になる。
「ち…違…」
「いや…気にしなくていいよ?事実を言ってるだけだし。うん。ようやく目が覚めた?」
冷めている。…だが、どこまでも穏やかに、そして優しく告げられた今村の言葉にみゅうの心が悲鳴を上げる。
「やめて…」
「いやぁ…これで約束の一つは果たせたな。…じゃあ100年で足りるかもしれん…いや…どうかなぁ…ん~…あ、気付いたならもう俺の加護は要らないな。寧ろ邪魔だろ。だ…か…ら…っと。名前は回収して…っと【時空龍】。長いこと目を晦ませて悪かったね。お詫びに何かしてあげたいけど知っての通り俺は今死にかけで大したことは出来ん。一応リクエストは聞くけど…」
「やめて…お願いだから…何でもするから…」
「ん?加護の問題?なくなると弱くなるって?気のせいだ。反動で弱くなった気になるかもしれないけど実際は蓋になってた分がなくなって…」
「そんなのどうでもいいから…返して…」
「あ、お前の親から預かってた龍玉?ん~…まぁいいか。」
「やめてよぉっ!」
みゅう…いや、名もなき【時空龍】は今村を吹き飛ばした。
「かっは…げほっ…死にかけにこりゃあキッツいねぇ…」
「やめて…返して…何で…?私の名前…」
口から大量の血を吐いて今村は嗤う。
「色々混濁してるみたいだねぇ…今の俺は寿命があるし、あの世界に居られるのはもっと短い時間だからあんまり無駄なことをしたくないんだが…君には面倒をかけたしなぁ…」
「君じゃない…私は…私の名前は…?私の名前を呼んでよ…」
「龍玉につけてもらいな。長きにわたって受け継がれた加護。今の俺よりかなりっつぁあっ!」
話の途中で【時空龍】が今村を襲う。…しかし、今村はそれを跳ね除けた。
「まぁ3兆年も無駄にしやがってムカつくというのも分かるが、俺にも俺の事情があって死ねないのよ。だから抵抗させてもらうよ?」
「違う…違うの…私はただ触れたいだけで…」
【時空龍】は今村を止めたいだけだ。だが何故かいつもの手加減で接するとそれが相手への災厄になる。
「カッカッカ…いや、おっそろしく俺は君の才能を封じてたみたいだねぇ…心苦しい。」
「こんなの要らない…私は…私はパパがいれば…それだけで…」
「いやいや…俺はもう君の親じゃないぞ?」
瞬間。【時空龍】の体内の氣が沸騰するように熱くなる。そしてその激情のままに今村に襲い掛かった。
「カカッ!『αモード』ぉっ!来い!って…え?」
呪刀を構えて攻撃に備えた今村だったが、次の瞬間驚きのあまり固まった。
「…へ?何?どういうこと?」
「言っても書いても何しても伝わらないで…力が足りなかったからなら…」
ローブの自動反撃を潜り抜けた【時空龍】。
「実力行使!」
彼女は…今村に性的な意味で襲い掛かっていた…今村は大変よろしくない感触を感じて慌てて引っ込む。
「おいてめ何考えてんだコラ。」
「…私は考えました。何を言っても伝わらない。行動一つ取っても悪く考えられる。このままだと永久にどこかに飛ばされる…なら弱っている今がチャンスだと。」
「…それと俺のローブの中に入って下着を下ろした意味に何の繋がりがあるのかな?」
「もう何か色々酷い目に遭わされたから…襲うことにしたの。オアイコだよ?大丈夫。痛いのは私だけだから。…でも幸せすぎて多分その時は大好きな愛するパパの事しか考えてないと思うけど…」
「おい、大好きな愛するパパって何か援交みたいだから止めろ。後、目が覚めたんじゃなかったのか?」
「寝ても覚めてもパパの事しか考えてませんけど何か?後子供ながらにその妄想の中で色々なことをしてましたけど何か?」
衝撃の告白に今村が引いた。
「え…」
「もうずぅっと前にパパと結婚するって言ってますから今更の宣言ですし、こう言ったら聞えないんだろうけど…異性として大っ好き♡もうこの世の中の他の私の好きなモノ対パパだとパパ圧勝!くらい!」
「えー…頭大丈夫?」
「勿ろ…え?」
「え?」
【時空龍】の時が止まった。
「き…聞こえたの?」
「…聞かなかったことにしていいの?」
【時空龍】の質問に今村はそう訊き返し、その反応を見て【時空龍】は確信する。
「っ!~っっっ!聞こえたんだ!大好き!大好き!大好き!愛してる♡愛してる♡愛してるぅっ♡!」
もう自分でも制御できない感情を思いのままに出しまくる【時空龍】。今村はどうしたらいいか分からずただ落ち着くのを待った。…待った。……待ったが止まらない。
「………………………とりあえずむっ!」
「ん~~~~まっ!えへっ…えへへへへへへへへ~」
今村が止めようと口を開いた途端その口の中が目の前の可憐な少女の舌によって蹂躪された。完全なる毒物状態の今村の血液を受けて甚大なダメージを負ったはずの少女はそれを普通に飲んで笑い出した。
そして何らかの決めポーズを取って「αモード」を解いた今村に言う。
「愛は必ず勝つ!」
「…大丈夫なのか…?」
「オフコース!今のみゅうは最っ高だよ!いやっふぅ!あ!みゅうはみゅうって名前だったね!みゅぅぅぅうっ!」
「…あぁ、俺の要らない無駄能力が発動したのか。」
今村の捻くれ性格を作った一つの要因となる呪い。「ゲインバック」が発動したらしい。効果は簡単今村に嘘であれ本当であれ、恋人以上の関係を示す特定の条件を満たすとそれに応じて奇跡が起こるというものだ。
…今村が最初にその呪いをいつの間にか受けていたと知った時の名称は「愛の奇跡」だったので消し飛ばそうとしたが消えなかったものである。
「パパ!みゅうはこの幸せを続けるために行ってきます!時々帰って来た時は撫でて!褒めて!愛でて!」
「…まぁ、出来る範囲でな~」
「うん!行ってきます!あ、【時空神龍】奥義逆神気!これでこの世界に対する他の世界の距離は自由自在だよ!…おぉ!何か色々進化してる!きゃっほー!パパ!行ってきます♡!」
「…行って来い。」
みゅうはもの凄い進化を遂げて消えた。
「…まぁ、しばらくすれば飽きるだろ…子供の言う事だし…」
尚も諦めの悪い今村はそう思うことにしてみゅうがいなくなった後この世界を創り上げにかかった。
ここまでありがとうございます!
最後の方…何かごめんなさい。
えーと、一応ですね。この辺の心情は分かり辛いと思いますので…あ?何コレ?って思われた方はどうぞ。
みゅうが名前をとられて謎の行動に至った理由…色んな感情がない交ぜになった状態で、それでも今村が大好きだという感情が一番大きく、他の感情を全部呑み込んで暴走した感じです。本人も頭の中が支離滅裂で何が何だかわかってません。
ゲインバックが捻くれ性格の一因になった理由…嘘でも本当でもある程度の好意を示せば奇跡が舞い降りるものなのでそれを目当てに好意を示すのでは?と疑心暗鬼になったり…後、男女の区別がないためある程度仲が良かった男が急に変なことを言ってボコッたら何か気持ち悪いことを言っていたり…こんな感じですね。




