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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
章間6
143/644

移動中。

 何時も章間は一日で行くんですが、何故か昨日2話投稿してしまったので今回は二日に分けます。

「…何気に遠いなぁ…」


 世界の狭間で今村はポツリと呟いた。保護している鈴音は若干震えていた。


「な…どうなってるんですか…?これ…」


 辺りはまるで宇宙空間の様に真っ暗でいたるところに膜のようなものが仕切りとして存在している。


「昔はこんな仕切りとかなかったんだけどねぇ…おっきな世界があって端っこの方に時々小世界があった。今じゃどこもかしこも小世界の群れみたいに仕切られまくってるが…」


 今村の言葉は謎だった。そんな時だった。鈴音が若干もじもじし始めたのだ。今村はすぐにピンときてみゅうに言う。


「みゅう~どっか近い世界にちょっと降りるぞ。」

「え~何で?疲れるよぅ…」

「ちょっと用があって。」

「…わかったけど…」


 みゅうは不承不承近くの世界に降りた。今村はその世界の管理者の所に降り立つ。


「ちょっといいかい?」


 膨大な量の書類が溜まっている机を前にして座っている40代くらいに見える女性に声をかけた。


「あ~…ってうわっ!どうやってここに…」


 女性は最後まで台詞を続けることなく目を見開いて固まった。


「え…この感じは…『魔神大帝』様…?」

「人違いだ。ちょっと下界に下ろして貰いたいんだが…」

「え…『魔神大帝』様ですよね?やだぁっ!忙しさにかまけて色々見せられない状態ですので少し待ってください!」


 女性が一瞬だけ光ると少し吊り目の少々神経質そうな眼鏡をかけたクール美人になっていた。それを見て今村が思わず「げ」と声を漏らした。


「…面倒な所に降りちまってたなぁ…」

「それでは…さっきのは忘れて頂いて、下界ですね?」

「…あぁ。まぁ…あ、ここ地球に近いけどどんな世界?」


 女性は今までの分の書類を放り出して下界へ降りる許可を申請している。


「え~…と、そうですね。戦争ばっかりしているので…正直文明レベルは低いですし…『魔素』も薄いので…大した世界じゃないです…でも確かに近いですね。この前から2人ほど地球から転移した人が来てますし…」

「へぇ。」

「っと、通りました。それではどうぞ。」


 光が今村、鈴音、みゅうの3人を包み、鈴音はすぐに消えていった。


「…?何でまだ俺らは残ってんだ?」

「あ、『魔神大帝』様だと認めてください。それと…この世界へ来た理由をお願いします…」


 今村は軽く舌打ちした後、笑った。


「他言すんなよ?認める。」

「はい。…それで、この世界に来た理由は…?」

「あいつがトイレに行きたそうだったからな。借りに来た。」

「へ…?」


 思わぬ渡界理由に女性は固まった。


「このなりになって初めて異世界に行ったときにな、同級生に言われたんでな。女子のトイレ事情には気を付けろって。」

「え…と…」

「これで約束は果たした。次からはしばらく気にしない。」


 本当にそんな理由だったらしく、今村とみゅうは光の中に消えていった…



















「…えぇと…」


 下りた先の言葉は何かよく分からない言葉だったので、結果喋れなくてそれとなく今村がトイレの方面に連れて行ったが、そこで鈴音は気を使われていたことに気付いた。

 結果、今猛烈に恥ずかしがっている。


「くぁ…」

「みゅ~…」


 みゅうは長距離を渡航しているのでだんだん疲れて来ており、今村は行った先の女性の仕事をお礼と称して片手間にやってのけてその結果軽く眠くなっている。


 全員が何となく会話がなくなっていたころ、今村が妙な気配を感じて辺りをきょろきょろし始めた。


「…何か『サウザンドナイフ』がある気がする…子供用の…」

「…え?あのぶわーってなる奴子供用なんてあったの?みゅう欲しい。」


 暇そうにしていたみゅうが今村の言葉に食いつく。今村は少々考えて首を横に振った。


「ん~…でも安全には考慮してないからなぁ…お前が使ったら大変なことになりそうだからダメ。」

「…じゃあどの辺が子供用なんですか…?」


 鈴音が突っ込みを入れる。今村は性能を思い出して言った。


「操りやすさと切れ味の悪さ。それと持ち主に逆襲しないところ。後呪いの付与がない所かなぁ…」

「…普通逆襲とかしないんじゃ…それに切れ味が悪いなら安全じゃ…?」

「俺のは俺以外が使おうとしたら基本滅多刺しにする。俺より下手な奴に使われるのが嫌らしい。それと切れ味が悪くても鉄位なら切り裂ける。」

「…どの辺が子供用なのかもう一回教えてもらっていいですか?」

「もう忘れたのか。歳か?」

「パパぁ~もうそろそろキツイ~ちゅーして~」

「はいはい。」


 和やかな談笑をしながら一行は地球へと向かって行く。


「暇ですねぇ~しりとりでもして遊びませんか?」

「え、嫌だ。」

「お願いします~じゃあ始めるます!しりとり!」

「リン。」


 速攻で終了に向かわせた。だが、鈴音は諦めない。


「じゃ…じゃあみゅうちゃん!しりとり!」

「…リン酸。後、様付けて。みゅう子供だけど一応神様だから。」


 みゅうが怖かった。だが、鈴音は諦めない。


「りで始まる言葉10個挙げてください!」

「離婚。離散。リシン(必須アミノ酸)。リシン(猛毒)。利刃。罹患。利権。利点。理論。」

「うぅ…何かよく分からない言葉ばっかり…あ!でも一応答えてくれた…じゃあ古今東西にしましょう!」


 因みに言っておくと、今村は「失われた言語ロストワーズ」として日本語を知っているが、基本使っている言語はエスペラント語だ。基本呪いの力でどんな言葉でも伝えられるようにしているが…しりとりではそうもいかない。

 つまり何が言いたいのかと言うと、生粋の日本人鈴音は異世界の人間に日本語の語彙力で負けたということだ。


 それはさておき、ゲームを始めようとする鈴音。


「古今東西!え~と…好きな人のタイプ…」


 鈴音は直前に閃いたお題を口にして今村をちらっと見た。…が、何か本を読んでいてやる気の欠片も見当たらない。


「好みのタイプはパパしかないからみゅう負けちゃうな。不戦敗でいいや~」


 みゅうはごく自然にそう言ってゲームを放棄した。鈴音は一人寂しく今村に抱えられ続けて別のゲームを考え始めた。…が、思いつかない。


「…じゃあ、私歌いますね。」

「…急にどうした…」

「暇なんですもん~ファーストシングルから歌います~」

「…ま、いいだろ。下手だったら落とす。」

「怖いですよ!」

「パパ~世界の狭間に落とすの~?それともどっかの世界に落とすの~?」

「気絶させる。」


 物騒なことを告げられたが何だかんだで鈴音は歌が上手かったので落とされずには済んだ。


「フゥ…ど…どうでした?」

「みゅうの方が上手だも~ん。」


 今村が感想を返す前にみゅうが対抗するかのように歌い始めた。その声はまさに天使のようで聞いていた鈴音は折角元居た世界に帰っているのに速攻で別世界にトリップした。

 そんな中、今村が独りごちる。


「…俺はまぁ普通だからなぁ…」

「?みゅうよりパパの方が上手だよね?」


 みゅうが歌うのを止めて今村の方を向いてこてんと首を傾げた。今村は若干困ったように応じる。


「本気で歌うと『デスソング』がごく自然に出るからなぁ…」

「あ、こないだの時『デスソング』使ってたらもっと楽できたでしょ…?」


 そこで魔物大進攻のことを思い出すみゅう。今村をジト目で見るが、今村は肩を竦めただけだ。


「アレ無差別即死技だからなぁ…色々問題があるし…あの時は銀狼どもに詫び入れさせないといけなかったし…派手にいきたかったし…」

「む~…パパがいなくなったらみゅう次はじっとしてないからね?」

「あ~…あとどれくらいかねぇ…」

「…聞いてる?」


 こんな感じで今村たちは世界間を渡航していた。




 ここまでありがとうございます!



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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