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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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29.行ってきます

 話全部消えた上に何か途中で勝手に上がってました…なじぇ?

 外に出ると今村は鈴音の首輪を取った。鈴音は今村にしがみつきわんわん泣きじゃくる。


(ひそひそ噂されてるけど…修羅場じゃねぇぞ?)


 傍に祓がいて鈴音にしがみつかれている今村の状態は傍から見れば確かに修羅場にも見える。


「ひっ…皆が…私ぉ…私言われたことしたのにぃ…」

「うん。その辺はさっき知った。ごめんな?」


 頭を撫でながら今村はようやく少し落ち着いて来た鈴音を宥める。


「今村さんっ…が、悪いっ…わけじゃ…」

「いや、俺の所為。色々処分し損ねてた俺が悪い。とりあえずご希望の処刑法があったら聞くけど…」

「ないです…もう関わりたくないです…」

「わかった。」


(つまり速やかに処刑ってことだな。)


 今村は月美に指令を出し、首だけ持ってこさせた。


(うん。良く死んでる。)


 因みにそれらは鈴音が関わりたくないとのことなので鈴音には聞こえない、見えない、匂いもない完治できない状態にしてある。


「…うぅ…すんっ…ぅぐっ…みっともない所をお見せしました…ごめんなさい…」

「いや、その辺は気にするな。」


 今村は鈴音が完全に泣き止むのを待って地球行きの話を切り出した。


「…で、地球に帰る用意が出来たんだが…他に帰還を願う奴とかいない…」

「あんなの…地球に戻ったら全員犯罪者です!戻れる人なんかいないですよ!私を奴隷にして全員で楽しむなんか…」


 そこで鈴音ははたと今村の方を見る。


「ま…まぁ…その…はい。帰るですね。はい。帰ります。」

「…何か言語体系に乱れが見えるけどまぁいいか。『ワープホール』」












 魔法陣がある方の通路に行くと子供たちが待ち受けていた。そしてその中の代表者と思われるミーシャが一歩出て来て今村を見据え、口を開いた。


「…私たちも一緒に連れて行って下さい!」

『お願いします!』


 声を揃えて頭を下げて言う子供たち。今村は軽く頷いた。


「おっけ。」

「我儘なのはわかって…え?」


 今村を説得する台詞を色々考えていたミーシャが一瞬呆気にとられてそれで顔を上げて今村を見た。


「いいんですか?」

「い~よ~」

「あ、帰って来たね~?準備オッケーだよ!」


 もの凄い軽い今村に昨日一生懸命好意を込めないで合理的に説得できるような台詞を考えていたミーシャが聞き直しているとその場にみゅうがテテテと走ってやって来た。


「よっしゃ!行くぜ!」


 子供たちは何となく釈然としない気分で今村と一緒に移動していった。








「ん。みゅうご苦労。」

「えへ~頑張ったよ~」


 今村が魔法陣の出来に満足してみゅうを撫でるとご機嫌になったみゅうが喜びの声を漏らす。

 そんなみゅうをさておいて、今村は魔法陣を覗き込んだ。


「『解析眼アナリティックアイズ』…ん~…ん?あ、」

「ど…どうかしたんですか…?」


 鈴音が遠慮がちながら今村に尋ねる。今村は後ろを振り返って言った。


「さっきの俺最高。全員!祓を拘束!」

『Yes,Sir!』

「え?」


 よくわからなかった祓が首を傾げたまま捕まった。普段であれば簡単に捕まらないのだがいつもは抑え役のミーシャ、アンも捕縛側に回っており、祓はほぼ無抵抗に捕まったのだ。


「な…何で捕まえたんですか…?」

「何となく。後、祓はこの世界に置いて行くから。

「何でですか!?」

「あっちの世界『神氣』も『仙氣』も『魔素』も『妖氣』も『邪氣』も少ないから『スレイバーアンデッド』が持たん。『霊氣』だけはあるから…」


 今村は一度そこで切って溜めた。


「行けばすぐに幽体離脱だな。」

「…そんな世界どうやって成り立ってるんですか…それに、先生が居なかったらどっちにしろ私は死にますし…」

「お前…言っとくけどアーラムが創った世界も大体同じようなもんだからな?『法氣』で成り立たせてる…で、問題の後半にかんしてははい。これ」


 今村は白い結晶のようなものを出してアンに渡した。


「何ですかこれ…?」

「『スレイバーアンデッド』の対抗物質試作品…作りかけだが…まぁ、俺がこいつの世界に行く1週間の間くらいはもつはず…出来れば完成させたかったが…これ今の段階で使えば自然に壊れるだろうな…」


 今村が残念そうに言った言葉を祓は聞き逃さなかった。


「それください。」

「あいよ。」


(完成なんかさせない…ここで使ってしまって壊す…)

(おぉ…やっぱ俺といるとストレス溜まるもんな。ここまできっぱりとした口調は結構稀だ。)


「…他にはもうないんですか?」

「残念ながら…」


(…何としてでもこれは壊さないと…完成させない!)

(あ~早く解放しろって聞こえるわ~めっちゃ聞こえるけど今は優先事項が違う)


 この時点でかなりすれ違っているが、両者気付かずに会話を終える。

 それを好機と見た鈴音が声をかける。


「え…っと。私は結局…」

「帰れるぞ。」


 今村は断言した。そして子供たちの方を見て、今村が居なくなった後のことを指示しておく。


「俺は一回別世界に行ってから帰ってくるけど、その間は自分たちで頑張れ。あ、後今まで貯めてた金の半分くらい使ったから代わりに金塊置いて行く。」

「…今までためたお金って…ざっと200万Gはありましたよね…?」


 ミーシャが突っ込みを入れるが、今村は普通に首を縦に振った。


「うん。必要経費だった。」


 祓としては大分不必要な位お金を出していた気もするが黙っておいた。


「あ~それでも色々わからんことがあったらドライアドに訊け。それと祓。」

「?何ですか?」

「さっき渡したの無理に壊そうとしたらまずこの星を食らって、だんだん侵食範囲を広げていき、この世界ごと呑み込む取扱注意物質だから気を付けてね。」

「え…」


 もの凄い物騒なことを言って今村は隣でお悩みの鈴音との会話に戻った。


「さて、今更一人で帰ったら大問題になるんじゃないかって?」

「き…聞こえてたんですか…」


 彼女は自身がバスの事故に遭ったはずなのに一人だけ無傷で帰還すればどうなるだろうか、また、アイドルとして有名だったのでいきなり帰って世間がどんな反応をするかなど考えていた。

 それを聞いていた今村はあっさりと言う。


「うん。で、解決方法を出そう。一本前のバスに乗ってたことにすればいい。」

「そんな感じじゃ…」


 鈴音が最後まで言うのを待たずに今村は続けた。


「あ、お前のマネージャーは『私強ぇ』って言って村長の息子イケメンゲットしようとして討伐された。ご愁傷様。」

「え…」


 城で見捨てられたマネージャーのことを思い出さされていきなりどういう事かと訝しげに思う鈴音。


「俺がマネージャーに扮して証言をした後辞表を叩きつければ問題な…」

「あります!こっちにきてもう2ヶ月も経ってるんですよ!そんな嘘…」


 鈴音は今村が最後まで言う前にそう言った、が、今村も鈴音が最後まで言うのを待たず声を被せる。


「向こうの時間は2014年2月10日(火)…この意味分かる?」

「え…」


 鈴音が固まった。


「1日も経過してねぇよ。向こうじゃ。」

「ほ…ホント…?」

「ここで嘘ついてどうする。それはそうとしてもアレだ、10日のもう夜中。早いとこ戻らねぇと色々面倒だし心配かけてると思うぞ?」

「すぐお願いします!」


 鈴音は勢いよく頭を下げた。その勢いで髪が勢い良く今村にぶつけられて若干イラッと来たが今村は抑えて魔法陣を起動することにする。


「みゅう?」

「ちゅ~」


 妙に可愛らしい感じで周りから見てもおかしくないキスをして3人は光り輝く魔法陣の中に消えていった。
















「あ、」


 消えて行った後に祓はあることに気付いた。


「こっちで2ヶ月経って…向こうで大体1日…?それで先生は向こうで1週間…?」


 その言葉を聞いて子供たちもハッとする。


「て…向こうも1週間が7日だと…1年以上帰って来ない…?」

「え…」


 今更気づいてしまったが、既に今村たちは消えてしまった後。子供たちはどんよりした気分で今村の帰りを待つことになった。











 ここまでありがとうございます!


 因みに今回、今村くんは「神氣」がないことでアイドルが何か思っていたのと違うことを知りました。



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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