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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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25.勘違いの無いように

 直後、アンの脳内からナニカが喪失した。今村はそれを見て手をどける。


「ごちそうさま。さて…」


 今村は残った面々を見て考える。


(…全っ然足りないな。初期起動分は取ったが…連続起動は俺が加工した後で2~3年ってところかな。)


「と…ないで…」

「ん?あ、レジストしたわけ?」


 少々興味を持ち直して今村は力無く座り込むアンを見る。彼女は怯えるように猫耳を伏せて今村を見上げていた。


「これいじょ…おねが…しま…」

「まだ発展途上だからか?俺用にカスタマイズしたのにたかが『神氣』如きに阻まれる辺り『神核』の攻撃にすら不安を覚えるぞ?」


 今村はぶつぶつ呟いてまたアンを見た。アンは先程感じられた怒りはとうの昔に消え失せ今はただ捨てられることに怯えている子供の様にしか見えない。


「ごめんね?微妙に残ってると不安だろ?さっさと全部取ってやるから安心しろよ。」

「いやぁ…」


 力が入らない。どうやっても勝ち目がないと本能が訴える。相手は今村ばけものだ。そしてその手が頭に触れる。いつも暖かく、ずっと触れていて欲しかったその手が今は恐怖の象徴にしか見えなかった。

 そんな時、空間が歪み中から人が現れ陽気な声を上げる。


「パパ~。これお土産~」


 シリアスな空気をぶち壊したのが飛ばされていたみゅうだった。彼女はズタズタになったドレスで今村の下に現れるとボロ雑巾の様になった人間のようなものを今村に投げ渡す。今村はそれを一瞥してアンを離す。


「ちっ…こっちが先だな。」


 今村はアンから手を離してボロ雑巾の方に行くと眼を使い、身元を確認した。


「…万人隊長クラス戦闘派って所か。うん。」

「ちょっと強かった。みゅう2回くらい死ぬかと思ったよ~」

「へぇ。そこまで強くなってたなら別に大丈夫か…?」

「何が~?」


 親子の対話によって弛緩していく空気。今村はボロ雑巾に術を掛けて痕跡を完全に消してみゅうに頼んで適当な別世界に飛んでボロ雑巾を投げ捨て、燃やして塵にした。そして帰りに「王・行方不知ゆくえしらず」を使用して戻ってくる。


「さて、続きといこうか。ぁ?」


 だが、話は終わっていなかった。そんな今村だが戻って来ると至近距離に祓がいて「行方不知」の疲労以上のものが体を襲ってきた。

 今村はその現状から自身に何が起きたか推測する。


「あ、祓も飛ばしちまうんだった…ちょっとキツイな…まぁでも頑張って消すから安心しろよ…?」


 それでも今村はアンの記憶をなくすことを諦めないようだ。妖しい動き方で近付いて来る今村にアンは弱々しい声で抵抗する。


「嫌です…お願いします…何でもします…消さないで…」

「ん~…そこまで言うなら急ぎの問題・・・・・ではないし…いっか。」


 アンの言葉で今村は少し考えそう言った。その言葉でようやく少々安心するが、それは今村の続く言葉で打ち消される。


「明日にでもしよう。今日はもう帰って寝ることにする。みゅう。」

「はーい。…何の話?」


 よく分からなかったが、みゅうは今村の指示に従った。それに伴い一行はパラディーソに飛ばされる。



















「…はや…ここは…」


 今の今まで一言も話せなかったアイドル勇者が目の前の風景が一変したことに驚きの声を上げ、辺りを見渡す。

 今村はそれでアイドル勇者の存在を思い出し、ついでにパーティーメンバーがろくでなしだったことを思い出した。


「あー…そこのお嬢さん。信じられないかもしれんが君のパーティはうちの子を強姦しようと目論んでたから半殺しにして追放した。OK?」

「あ、薄々察してました。後ろから私にも聞こえる音量で、私と何の関係もないとか言い張ってましたしね。流石に今まで同じパーティーで、親しくしてたのにいきなりあれだけ手のひらを返されたらわかりますよぉ~」


 今村は思っていた以上にアイドル勇者の精神力があったので流石アイドル・・・・だと感心して「お休み」と告げると去って行った。


「あ、みゅうも~ってふぇ?」


 それに続こうとしていたみゅうをアイドル勇者以外の女性陣が引き止める。


「な…何?」

「…ご主人様は…何をなさるおつもりなのですか…?」

「え…みゅうにそれ訊かれても…みゅうはパパじゃないし…何かあったの?」


 状況をよく分かっていないみゅうに現在今村が記憶を奪う呪いを使用していることなどを説明した。


「へ~…で?」


 全ての話を聞き終わった後でみゅうはあまり興味なさそうにそう返した。現在記憶を奪われかけているアンはその態度にカチンと来たようだ。


「で?ではないんです。あの人を止める…」

「あ、それは出来ないよ?」


 みゅうはごく当たり前のことを告げるようにアンにそう告げる。あまりの自然さに思わずアンが呆気にとられたほどだ。


「一から説明するのは難しいし、みゅうはパパと違って優しくないから簡単に言うね?パパは色んな敵がいます。敵はパパを殺すために手段を選びません。人質なんか常套手段です。現在は死んだことになっていて敵は少ないけどいつバレルかわかりません。大勢で人質を取ればパパを殺せると考える馬鹿な人もいます。」


 みゅうはその幼い顔からは想像できない妖しい笑みを浮かべた。


「パパは自分が大っ嫌い。でも、他人も…他人の方が嫌いかな?だから人質は出来る限り守ろうとするけど無理だと判断したら見殺すよ?だから人質になるような人は出来るだけ減らして…」

「そんなことは…先生ならみんな助け…」

「パパだから、パパだからってねぇ…平和な世界で生きてただけなのにパパの何を知ってるつもり?全部救えるなんて甘いこと今時子供だって考えないよ。」


 みゅうは話を元に戻す。


「それで、人質になるような人を作らないようにパパは昔から自分と関わらないように言ってたし、『ドレインキューブ』や『呪言発剄』まで使って色々してたんだよ?」

「そんなの…先生の自己満足で…」

「…でも、その世界で5000万の軍を率いた。何で?理由は簡単だよ。本人がどれだけ拒否してもみぃんなパパと一緒がいいって言ってパパに対して抵抗した。その結果。」


 みゅうの笑みは楽しそうなものに変わる。


「あなたみたいな両親から才能を疎まれて迫害された子もいた。奴隷環境に身を落としていた子もいた。飢えで我が子を手にかけて食べていた人がいた。…パパはいたぁい!」

「…黙ってろ。」


 突然今村が現れてみゅうをローブで作った拳で殴って首根っこを摑まえた。そしてその場所から踵を返す。

 みゅうは突然現れた今村に驚いて素に返り、尋ねる。


「え?パパ、みゅうどこ行くの?」

「俺の部屋。監視付きで寝ないと余計なこと言いそうだし。」

「え?パパと一緒に寝るの!?やったぁ!」


 吊し上げられたみゅうを片手でぞんざいに持って今村はこの場に残っている少女たちに告げる。


「記憶に関しちゃ俺が強くなるために利用しているだけだ。はいこれ以上は追及しない。さっさと寝ろ。全く…いつまで経っても喋ってやがるから少し聞いてみれば黒歴史を…」


 後半は声のトーンを抑えながら今村はみゅうを引き摺って去っていく。その後ろ姿を見ながら少女たちは一応寝ることにして明朝話をする約束をして引き下がって行った。




 ここまでありがとうございます!



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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