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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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24.最悪の。

 にこやかに応対してくれるカトリーヌに対して今村とアイドル勇者一行以外はどう話をすればいいのか分からず、沈黙を保っていた。


「…えっと?どうしたのかな…」

「さぁ?疲れてるんだと思うけど?」

「ん~…みゅう様の鍛え方から考えてこの辺で彼女たちを疲れさせる魔物なんかいない筈なんですけどねぇ…」


 そんな中今村だけはカトリーヌと普通に会話している。まるで何もかもわかっているかのような口ぶりだ。


「先生…この子に何が起きてるんですか…?」


 困惑する一行の中で一番最初に正気に返った祓がやっとそう切り出して今村に質問した。今村は例によって歪んだ薄い笑みを浮かべたが何も言わない。


「え~とりあえず立ち話もなんだし、家に入ったら?…あ、でも狭いから全員は入れないなぁ…知らない人たちはちょっとご遠慮お願いしたいですね。」


 カトリーヌはそう言って今村他男性陣をちら見する。その行動にまた固まる祓たち。そんな彼女たちを置いておいて男性陣は少し離れて行った。


「それじゃ、私が出て行ってからあんまり時間は経ってないですけど、積もる話もありますし。」


 そう言ってカトリーヌ他女性陣は家の中に消えていった。



















 今村は女性陣がいなくなったので近くの木陰に移動して腰を下ろした。すると他2名も付いてくる。


「おい、あんた。あの子たちは処女か?」


 そして、腰を下ろすなり勇者パーティーの片割れのフルアーマーを着こんだ聖騎士が今村にぞんざいな口調で語りかけて来た。立ち上がって一応軽く撫でて口調を改めさせると今村も答える。


「だから何?狙うんならご自由に。一応口出しすると死にたくないなら寝込みを襲うとかはしない方がいいぞ。した奴は殺していいって教えてるから。」


 頭を踏みにじりながら今村はパーティーの男性陣の片割れ、聖騎士の男にそう言った。もう一人の魔術師に吊し上げた状態で続けて声をかける。


「あ、あと俺は基本貴族大っ嫌いだから。次、ウザかったら殺すかもしれん。具体的に言えば偉そうにするな。」


 今村が特に何の感情も込めずに行った言葉に聖騎士が激昂する。


「あんたも成り上がりのくがっ!」

「そう言う魂胆が見えてたからこうしてんだよ。確かに俺も貴族だ。階級で言うなら公爵。てめぇらより上なんだよ。なら考えろ屑。古いから偉いとか思ってんじゃねぇ。」


 聖騎士の男の頭を蹴り上げローブで無理矢理直立させるとローブで吊るしている魔術師と並べて今村は冷たい視線で二人を見据える。


「ここに来るまでの道中でお前らはあいつらに俺の悪評をでっちあげて話し、俺を陥れることで口説こうとしてた。俺が口説かれてる方の奴らを止めなかったらそれで何回お前らが死んでたと思う?あぁイライラする。『弱化』」


 今までのイライラをぶつけるために今村は腕の力を落として男を殴った。その一撃だけで男の内臓が破裂したようだ。


「何で悪口言われてる俺が止める役なんだよ…ダボが…おらさっさと回復しろ。殺すぞ禿が…」

「がっ…ゴォッ!」


 全身を万遍なく軽く痛めつけると今村は魔術師を見た。


「こいつは回復しなかったから次お前な。…あぁ、でもアレだ。こいつがまだ殴っても生きられそうならお前はまだだ。」

「ひ…ひ…『癒しの風』!」


 魔術師は聖騎士に白魔術を行使した。聖騎士の体が見る見るうちに回復していく。


「…お~まだ殴れってか。いいぞ。」


 全身防具で固めているのに拳一つで破壊されて防具が自身の体を突き刺していく感触に涙を流しながら呻き声をあげる聖騎士。魔術師は自分に被害が及ばないように必死で聖騎士の回復を行う。


 いつしか聖騎士の顔が虚ろになってきた。今村はそこで拳を下ろす。


「飽きた。次。」


 そして、今村は近くにあった小枝を拾い術を掛ける。


「『妖仙氣発剄』・『フルエンチャント』」


 小枝に妖しい紫色の瘴気と毒々しい緑色の氣が流れ込んでいく。そしてそれを軽く振ると魔術師の片腕が飛んだ。


「うぎゃぁぁあああぁっ!」

「うるさいなぁ…」


 その一言で小枝が妖しく光り、魔術師は沈黙状態になる。…が、今村はすぐにそれを解かせた。


「手当てする奴がいねぇし…自分でやって貰わねぇとな…」


 気を失った魔術師の肩を縛り止血すると今村は小枝を放り投げた。それは地面に突き刺さると見る見る間に成長していき、辺りの木の中で一番の大きさになったところで成長を止め、淡く光を放つようになる。


「…まぁ気にしない。木だし。あぁ俺、何言ってんだろ…」


 軽く凹むと何となく急に眠くなってきた気がするので上空に「雲の欠片」をセットしてちょっと寝ることにした。



















 起きたら聖騎士と魔術師が消えていた。かわりに女性陣が今村を囲んで遠目から眺めていた。


(…何か怖いぞこいつら…)


 今村が起きたのを確認して全員が近付いて来ると上体を起こした今村の方から口を開いた。


「何か用か?」

「…カトリーヌさんにご主人様に関してだけ、記憶がありませんでした。代わりにその部分に別の人が入り込んでいます。」

「で?」

「何か知っているんですよね?」


 アンが強めの口調で詰問する。そんなアンに対して今村は歪んだ笑みを浮かべる。


「勿論。」

「じゃあっ!」

「結果から言っておこう。アレは俺の所為で、治すことはできない。呪いの代償だからなぁ…」


 楽しげな今村。その心境に応じてか辺りの空気が変わり、少女たちの足が止まった。それを見て今村は立ち上がる。


「祓?お前がくれた『ディザイア』ってあるよな?」

「え…はい。」


 唐突に指名された祓が軽く戸惑いながら今村の質問に答える。


「効果は?」

「代償に応じた願いの実現です。」

「正解。今回俺がそれを基に改竄した能力『復讐法ハンムラビ』の力の代償に…」

「まさか記憶を!?」


 今村は正解を喜ぶかのように頷いた。


「正確には俺が俺との関わりを無くしたと判断した相手だけだがな。うん。概ね正解。一応アフターケアとして急に記憶が全部なくなると怖いだろうから不自然がない範囲で記憶補完される親切設計…」


 得意げに披露するその話をアンが今村に平手打ちすることで止めた。今村は僅かにスウェーして避け、アンを冷めた目で見る。


「見損ないました。」

「見損なわれるほど出来た奴じゃねぇよ俺は。」


 刺すように鋭い目で今村を睨むアン。それを凍てつく目で見返す今村。


 アンの頭には出かける前のカトリーヌの事が思い出される。


 今村に買われて初めて褒められた時の笑顔、真剣に技術を覚えていくときの顔、いい出来だと褒められた時の嬉しそうな顔。そしてパラディーソを出るときに言った「ここに居てずっとご主人様に守られるだけじゃなくて外の人にもご主人様が素晴らしい人って知ってもらわないと!大好きなご主人様に恩返ししないとね!」と言う台詞と照れ臭そうに笑う顔。


 そして何より…そんなことを思い出させようと色んなことを喋って思い出せずに…それでも何故か泣いた顔。


「…そこまでして力が要るんですか?」


 彼女は怒っていた。それに対して今村は冷め切っていた。


「要るね。」

「…最低ですね。」

「そうだな。そんな最低な奴のことなんざ忘れた方がいいと思わないか?」


 冷たい視線に笑みが混じる。真っ当な人間が浮かべることは出来ない狂った笑み。それが、悪意に満ちたその表情が今村の顔をグチャグチャに彩っている。


「っ…本当に最低ですね…そんなことを言ってるわけじゃ…」


 だが、彼女は途中で今村に頭を掴まれて黙る。殺すなら殺せ、怒りに満ちた彼女は睨みながら今村を見据える。だが、予想よりもっと最悪な未来が彼女を待ち受けていた。


いただきます・・・・・・。」




 ここまでありがとうございます!



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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