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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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21.心配した

「そろそろいい加減見えて来ないかねぇ…『絶刀絶牙天翔』」


 今村は「呪刀」から更に武器を持ちかえて「絶刀」と「絶牙」の二刀流で戦っていた。


「『暗雲死気怨呪あんうんしきえんじゅ』…っとお出ましかい?」


 今村が猛毒を放った所でようやく今村が言うところのお目当てに出くわした。それは銀色に輝く豊かな毛並みを持った6メートルはありそうな狼だ。


『てめぇ安善って知ってるか?』


 今村は手を休めることなくその狼に訊く。狼は目を見開いて今村に吠えた。


『我らが言葉を解するか面妖なるものよ。』

『あぁ、化物なもんでね。それで安善は知ってるか?』

『知っておるに決まっておろう。あの穢れし者の悪しき存在が為に我らがここに居るのだから。』

『そうか。やっぱりあいつの予想は当たってたか…』


 今村は一度刀を仕舞った。そして「グレイプニル」を出し、その銀色の鎖で以て魔物を打ち据え、叩き殺す。

 そんな今村に狼は問う。


『面妖なるもの。汝は何故ここに居る?』

『安善がこの先にいるんでね。ここで皆殺ししておかねぇとこれ幸いってお前らあいつを殺すだろ?』


 今村の言葉を聞いて狼は唸り声をあげる。


『奴がこの先にいるのか?』

『あぁ。俺の教え子だ。』

『…そのものだけ差し出せばニンゲンの町には手を出さん。そうすればここでこれ以上争う必要はないだろう。』


 狼は今村にそう告げた。…が、今村はそれを笑うとこう告げる。


『やなこった!』


 その直後今村の「グレイプニル」が形状を変化して細い白銀色のロープになり、うねりながら狼に向かって行った。




















 その頃今村の術の範囲外で少女たちは行動を起こせずに困っていた。


「…空間隔絶されてて入れない。」


 みゅうが【時空龍】としての能力を使って中に入ろうとしても別の場所に飛んでしまう。

 どんな術を使おうとも意味をなさず、かえって結界を強めてしまう結果にしかならないのでみゅうは様子がおかしいメイから話を聞くことにした。


「『テレパスネットワーク』」


 声を出せなくとも思考を聞けば問題ない。みゅうはこの場にいる全員とメイの思考を繋いだ。

 そしてこの場にいた全員が事のあらましを知る。


「…それで…」

「だからって…パパだけでやらなくても…」


 それに納得いかないのが3人。ただ泣く者が1人。そんな中祓だけが苦い顔をして少し前、月美が死んだときのことを思い出していた。


「…あの所為で…?」


 それだけが心当たりというわけではないが、祓が思い付くところではこれが最大のものだった。


 ―――私が半妖だから!それで一族の恥だから!私が死ねば皆は助かるのに!―――


 メイは未だ泣き叫んでいた。そして、次の瞬間光が辺りを飲み込んだ。


「っ!先生っ!」


 術が消滅し、やけに耳に残る声が届く。「白礼刀法奥義・・」との声が。

 みゅうは悲痛な顔で飛び出した。


「だめぇっ!それ使ったら駄目!パパ死なないでぇっ!」


 その声に続いて全員が今村の身を案じて飛び出した。



















「はっはっは…奥義の中でも例外だからなぁ。喋んじゃねぇぞ?」


 今村は狼たちを前に純白・・の「呪刀」を提げて笑っていた。純白・・の衣装も長い白髪・・も血にまみれ、辺りも酷い匂いがする。

 対する狼たちは白銀のロープの中で威厳も何もなくただ怯えていた。


『ば…化物…いや…神か…?』

『どっちも兼業してた。まぁ兎に角今やったの喋ったらガチで皆殺し。魂ごと滅殺する。…それはともかくね、安善に謝れ。』


 今村は凄惨な笑みを浮かべたまま狼たちにそう言った。それは何とも妖しく美しい笑みで狼たちはごく自然と今村に従う以外の選択肢をとれないと思う。

 そんな状況で今村は「呪刀」を仕舞い「αモード」を解く。


「あー疲れた。いやはや…歳だねぇ…」


 黒髪黒目に戻ると衣装も黒ローブに戻った。その時天から光が舞い降りて今村の前に青年神が降臨する。

 そして温度の無い声で今村に話しかける。


「…死なないように言ったよね僕。聞いてたよ?何で『白礼刀法』の奥義とか使ってんの…?」

「あ?見たのか…?」

「…いや、聞こえただけ。」


 すると今村の威圧が消えた。


「今疲れてんだけど。後にして…って何で怒ってんだお前?」

「怒らない方がどうかしてると思うんだけどねぇ…」


 本気で怒っている青年神。今村はその理由が分からないが、とりあえず座り込んだ。何気に限界が近いのだ。


「命を削る技だよねぇ?実際前世じゃそれで死んだし。それ使わなくても魔物の群れ位全滅させれたよね?何でそんなの使ったの?」

「ん?あー…確かに『白礼刀法』の奥義の方使ったら死ぬなぁ。」


 青年神が怒っていても今村はへらへら笑う。その様子が逆鱗に触れた。


「いい加減に…」

「パパの敵は殺す。」


 その瞬間、底冷えする声と共にみゅうが今村と青年神の間に入った。


「お前か。お前がパパの敵か。」

「うるっさい!僕は今そいつが自殺しようとか訳の分からんことをしそうになってたことを問い詰めてんだよ!」

「…別に今使ったのじゃ死なんのだがなぁ…」


 二人が「自世界」を混ざり合わせてこの世界を塗り潰し、殺し合いをしようとしたところで今村が両方を止める。目の光が消えているみゅうと怒り心頭の青年神に現在の状況の説明を入れなければ大惨事になるからだ。


「えーと、確かに『白礼刀法』の奥義は礼から始める『零の型:白髪鬼』を皮切りに使って自他問わず皆殺しにする系統のが多い。」

「君、あの時と同じで急いで降りてくる時にちらっと見えたけど全身白装束だったよね?どういう事か説明がいるよ?」

「俺の姿見たのか?」


 先程の言葉が偽りだったのかと今村がまた疲れた体から威圧を発する。青年神は正直に答える。


「…遠目でよく見えなかったけど白いのだけは見えた…でもどういうことだよ!」

「…パパ死ぬつもりだったの?」


 二人の質問に今村は否定の答えを返す。


「見えてないならいい。『白礼刀法』の奥義には例外があるんだよ。『奥義11の型:白炎撃』これは辺りにあるエネルギーを使って代用が可能なんだ。」

「…奥義って『白髪鬼』やらないと使えないんじゃなかった?」

「…その辺はちょっと面倒なことをすれば…ね。」


 この部分に関しては今村は濁した。それに両者不満があったが、それよりも大事なことを聞く。


「体に問題はないのか?」

「ちょっと疲れる。そん位。」


 その言葉に青年神は疑いの目を向け、そしてじろじろ見た後溜息をついた。


「…本当そうだけど…何で心臓に悪い方法を使うかなぁ…」

「何か急に力を使いたくなることあるだろ。こうストレス溜まってむしゃくしゃして叫びたくなったり。丁度条件が揃ってたからやってみた。」

「はぁ…あぁもうびっくりした…始末書書かなきゃ…」


 青年神はあまり納得はいかなかったようだが徐々に体が透け、消えていった。みゅうは今村に真正面から抱き着いて離れない。


「…暑い。」

「パパが悪い。」

「血で汚れるぞ?」

「パパが悪い。」

「…邪魔い。」

「パパが悪い。」


 今村は会話を諦めた。そして溜息をつこうとして後ろから衝撃が襲う。


「…?えぇと?あ、メイ。」


 何も言わずにただ泣いて今村を後ろから抱き締める。そして、周りにアン、祓、ミーシャも遅れて現れた。


「…心配したんですよ…本当に…」


 涙目の祓に今村は帰還の心配?と訊きたかったがこの状況下で「はい。」と言われれば疲れから心無い言葉を言いそうだったので止めておく。

 その後同じことをミーシャとアンにも言われたが、領土の心配?と返そうとして同じ理由からやっぱり止めておいた。


「あ、まぁその辺はいいとして、『狼ども謝れ。』」


 そして狼はアンに謝った。それが済むと今村は自世界の中に狼を放り込む。目的は口封じ。


(モード『白髪』は極秘物質だからな…)


 そんなことを考えながら今村はアイドル勇者が待つ領土に帰って行った。




 ここまでありがとうございます!


 因みに今村くんは青年神が来たのは世界を破壊されるかもしれないと思ったからと思っています。


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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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