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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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20.アイドル

 今回のワンポイント英単語


 Idol

 意味:①崇拝される人(物)アイドル。

    ②偶像、偶像神

    ③邪神

「思ったより早かった。」


 この町に新たなる勇者が現れた。今度は女性という事で、このパラディーソの学校に興味があったそうだ。


 ついでに言うのであれば領主にはバレないように学校に入るつもりだったそうだが…


「そろそろ飽きたしさっさと地球行きたいな。」


 という今村の考えの下、謁見することになる。(因みに前の勇者はここに残るという事だったので放置になった。)


 現在、アン、ドライアド、祓、ミーシャ、みゅう、メイと今村と勇者だけがこの場にいる。


「さて、魔王討伐だってな。」

「はい。…ところであなたももしかして…別世界からきたんじゃ…」

「それはさておき」


 殺気が中を包むがそれを今村が消し飛ばす。話が進まないからだ。


「えっと…私のこと知ってます…?」


 殺気に中てられたことも知らない少女は今村にそう質問するが、今村は少女の事なんか知ったこっちゃない。異世界は異世界でも別世界から来たのだから。


「知らん。」

「一応アイドルだったんですけど…」


 その言葉に今村は目を見開く。


「え?アイドル?地球の?」

「そうです!日本のアイドルです!結構有名だったんですよ!」

「へ~アイドルか…俺も昔結構有名なアイドルだったんだけど…まぁ昔の事だし知らんだろうな…」

「あ…やっぱり時代が違うんですか…」


 少女はかなり有名なアイドルだったらしい。それで自分を知っているかどうかで今村が同じ時代から来たのかどうかを確かめたようだ。

 しかし、今村もアイドルだったと名乗り、それを知らないという事は少し時代が離れているということだと少女は判断した。


「それにしてもアイドルだったんですね~そうは見えませんけど…どこに所属してたんですか?」


 かなり失礼なことを言う少女に今村は別段気を悪くした様子もなく思い出しながら答える。


「ん~所属は知らん。勝手に祭り上げられてたからねぇ…」

「所属事務所知らないって…ロックですねぇ…あ、因みに私もアイドルには友達たちが勝手にしてたんですよ~…まぁ今ではこの仕事に付けて良かったと思ってるですけど…なった理由は同じですね!」

「同じじゃないもん!パパはなるべくしてなったんだから!」


 会話の中にみゅうが割って入り、スクリーンを浮かべて今村がステージの上で拡声木を持って部下たちに演説している様子を映した。

 その姿は神をも虜にする絶世の美男子が歌っているかのよう。(事実だが…)思わず少女も生唾を飲んだほどだ。


「た…確かにこれは…」

「まぁ今は唯の爺だけどね。みゅうそんなもん見せなくていい。」

「そんなものじゃないもん。みゅうの宝物だもん。」


 みゅうは驚いたのに満足してか元いた場所に戻った。そこでさっきの画像を焼き増しだの譲ってだの話が起こるが今村は黒歴史なんて知らないことにして続ける。


「え~と…こんな感じからスミマセンが…私って元の世界に帰れるんでしょうか…」

「ん~…」


 今村は考えた。実際戻るだけなら可能だ…が、ここに居る勇者を観察して気付いたのだが、世界間を渡る際に死ぬかもしれないという懸念が出て来たのだ。


「…やっぱり魔王倒した方がいいかもなぁ…」


 少なくともそれで強化はされる。そうなれば渡るのにも問題はないだろう。


「…ん~…」

「ど…どうなん…で…しょう…」


 そんな時だった。少女がもじもじしながら今村の言葉を待っていると勢いよく扉が開け放たれ、ダクソンが息を切らせて突入して来た。


「今村の旦那!ヤバいのが来た!逃げるぞ!」

「…何が来たんだ?」

「魔物の群れだ!」


 それならば子供達でも十分…と今村が言うのに先んじてダクソンはその続きを言う。


「子供の情報が正しければ20万もいる!全員逃げ…」

「へぇ…」


 その言葉を聞いて空気が変わる。動き出そうとしていた者も行動を停止し、空気を換えた張本人である今村を見た。

 今村は非常に楽しげな笑みを浮かべていた。それはとてもとても邪悪な笑みでおよそ人間ではできない顔だ。


「どこだ…?」

「へ…?」

「魔物…あぁいいや。自分で見つけた方が早いし…『千辺特化せんぺんとっか異化探知』…近くに居るなぁ…」

「…せ…先生?」

「全員殺戮しに行ってくる。…クスクス…祓これ。」


 今村はみゅうの鱗から作った時空を歪ませる道具を投げ渡した。そして「αモード」に入ると今村はその場から消えた。



















「居た居た…ごめんねぇ…君たちには特に何もされてないんだけど…まぁ憂さ晴らしっと。で…」


 今村は魔物の群れの上空に立っていた。そして「死神の大鎌」を掲げると戦闘開始の合図として大きく叫んだ。


「『ウォドゥオション』!さぁ始めようか!『殺神さつじん皇帝』ぃっ!」


 魔物の群れの先頭に飛び降り今村は笑いながら戦闘を開始した。臓物から血が噴出し、血の匂いが濃密に漂い糞尿の匂いが辺りに充満する。…が、今村は笑って返り血で濡れた髪に術を掛ける。


「『飛髪操衣』!バージョン2【喰らい尽くせ餓狼がろうども】」


 身の毛が弥立つような声で詠唱を行うと今村の髪とローブの一部が今村から離れて漆黒の獣となった。


「雑魚を皆殺しにするぞ…」

「GYAAAAAARRRRRR」


 餓狼の咆哮で魔物たちは身をすくませる。その隙に今村は「死神の大鎌」から「呪刀」に得物を変える。


「死ね死ね死ね死ね死ね…『呪言発剄』【死ね死ね死ね死ね死ね】…クックックックックあ~っはっはっはっは!」


 薙ぎ殺され、貫かれ、切り裂かれ、喰らわれる。甚大な被害を食らい続ける魔物たちは目の前の異物を無視して栄えある町、パラディーソに向かおうとする。…が、それは叶わなかった。


「『飛髪操衣』ラーミア。仕留めろ。」


 ある一定ラインを越した魔物は無秩序に切り裂かれて死んでいくのだ。そして空中に残るのは同族の血。それが線状になって浮いている。

 鋭利な刃物が空中に浮いているのだ。


「『呪炎』破戒炎陣はかいえんじん・『呪水』王水列強おうすいれっきょう・『呪風』死屍風神ししふうじん・『呪土』岩紗永倒がんしゃえいどう…以て発動。」


 進めない魔物たちを楽しげに殺していくのは今村。魔物たちはこれ以上進むと斬られるラインと分ってその前で止まるが後から進んで来る同族の勢いのまま進み、死んでいく。

 そして後方で信じられないくらいの爆発が起こり、その推進力は一時消えてなくなった。

 魔物たちの群れの一部…凡そ2万程が完全消滅したのだ。

 そのことを理解することが出来た知能がある魔物は恐れの余り完全に行動不能になる。そして今村が嗤う。


「呪われろ…腐れ共が…」


 そしてまた今村は魔物の群れに飛び込んでいった。そしてそれを涙目で見ている者が…


「どうして…みゅうだって…もうパパの役に立てるのにっ…!」


 あの場にいた人外たちだ。彼女たちは今村を追って魔物の群れがいる方に直行したが、今村の術によって入れなくなっていたのだ。

 今村に対する形容しがたい感情と自分に対する不甲斐なさでどうしようもなくなっている一行の中で一人だけ様子がおかしいものがいた。


「…メイ…?」


 アンがその様子の異常に気づき声を掛ける。いつも虚ろな目をしているだけの少女、メイが涙を流しているのだ。


「どうかしたの…?」


 そう聞いても何も答えないのは知っているがそう聞かねばならない状況だ。アンは返事を期待せずにメイに訊いた。

 すると彼女の思っていなかったことが起きる。メイは顔を大きく縦に振ったのだ。そして何か言いたそうに口を動かすが聞こえるのは風の通る音だけ。


「何?どうしたの?」


 いつもと様子が違う彼女にアンが訊くが何も聞こえない。だが、彼女は必死で叫んでいたのだ。


(私の所為だ!)


 …と。





 ここまでありがとうございます!


 前半と後半の落差が…

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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