表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
129/644

16.王の言葉の所為

「ということでお引越し。」


 帰って来て二度寝を終えた後子供たちが全員帰って来て今村は公爵になったことを告げた。

 子供たちは目を輝かせて流石お師匠様!と喜んだ。だが、その脇に暗い雰囲気をずっと流し続けている男がいる。


「…飛ばされた…副ギルド長にまでなったのに…」


 この世界一不幸な目に遭っていると思われる男、ダクソンだ。子供たちが上級の依頼をイカレたスピードでやってのけ、ギルドが忙しいところでもう辞めたい…と呟いたところ、今村に捕まった。


「さて、行くぞ!」

「はぁぁぁ~…」


 ダクソンは気付くと空を飛んでいた。


「うぇっ?ぎゃあああぁぁぁぁぁっ!」


 慌ててジタバタするが、もう遅い。首の辺りだけがもの凄い牽引されているのが怖いが、暴れれば落ちる。目をつぶってただ耐え忍ぶだけだ。

 因みに普通の人ならば頸骨骨折で死んでいる。ダクソンは元々強い冒険者(Aランク)だったので大丈夫だ。


「…それで何で俺は嬢ちゃんたちに睨まれてるんだ…?」

「意外と余裕あるみたいだな?もっとスピード上げて良いか?」


 流石のダクソンでもこれ以上スピードを上げるとなると頸骨がどうなるかわからないので大声を上げて拒否した。


「はぁ…ミリアンネちゃん…バイバイ…」


 何故か誰も止めなかったダクソンの移籍。ダクソンは愛しのギルドの受付嬢ミリアンネちゃんに想いも別れも告げることもなく飛んでいた。


「何それ彼女?そいつもこっち飛ばしてやろうか?」

「お前何様だ!」

「王国の公爵様だな。」


 今村の言葉にダクソンは一瞬耳を疑った。


「コ…ココココ…」

「鶏の真似か?似てないな。…あ、でもキャナールアンフェールの断末魔には少し似てるかも。今度全員の前でいきなり一発芸やります!って言ってやってみて。」


 今村の軽口にも応じず、ダクソンは今日一番の大声を上げた。


「公爵様ぁっ!?何で!?」

「色々あって。パラディーソの復興に行かなければならなくなった。」

「パ…パラディーソ…」


 その反応にどこか陰りが見られたので今村は突っ込んで聞いてみる。


「知ってんのか?」

「…あぁ。」


 ダクソンは苦々しい顔をするとぽつぽつと語り始めた。


 パラディーソは元々王国内で最も栄えていた土地で、王国の首都はそこだった。しかし、10年前の魔物の大進攻で壊滅的な被害を受けて首都は壊滅的なダメージを受けて王国内で2番目に栄えていた所に首都を置いていたらしい。


「俺は…その大進攻を最後に冒険者を引退した…時間を稼ぐだけで町を救えなかった無力感からな…」

「着いた。」

「うっそぉ!アベントゥラからどんだけ距離あると思ってんだ!?」


 今村は湿っぽい話の直後でも突っ込みを忘れないダクソンを見て笑うとミーシャを見た。


「ミーシャも負けらんねぇぞ?頑張れ。」

「別に競ってないんですけど!?」

「いいぞ。その調子だ。」


 荒涼とした大地が広がる中、半ば砕けた城壁と廃墟と化した町。塔の頂上が砕け止まった時計台、それらの象徴であったはずの城。

 そんな中で漫才をしていると子供たちが今村の方に集まって来た。


「りょーしゅ様になったならここ復興するの?」

「あぁ。」


 今村はそう言って微笑むと「αモード」を発動した。


「みゅうは町の建物の修復。ミーシャとアンとメイは城壁。子供たちはこの辺の土を変えろ。ついでに区画整理もみゅうと話し合ってやれ。俺は城を直す。」


 今村がそう言った直後、周囲の空間があまりの魔力の凝縮によって歪んだ。


「じゃ、始め。」


 そしてダクソンが状況に追いつけないでいる間にパラディーソの風景は変わり始めた…



















 黄金色に染まる田園。様々な瑞々しい野菜を季節を捻じ伏せて実らせている畑。区画ごとに分かれて季節の概念を無視して美味しそうな果実をつけた果樹園。

 金属オリハルコンで創り上げられ、魔法陣でいかなる敵の攻撃をも自動反射し、あらゆる攻勢に備えられた城壁。

 誰もいないというのに最新鋭の技術を持つ住居とその他建物。

 時計台は秒数まで分かるようにされている上、デジタル時計もその下にセット。夜は様々な色でライトアップされる予定だ。

 そして城。完全に復元され、荘厳な雰囲気を醸し出し、AIで分身を作り上げじぶんの整備を分身でする自動管理システムを搭載している。また、地脈から魔力を吸い上げ、エネルギー問題もばっちりだ。


「…っつーか…ナニコレ…」

「はい!ドライアド!」

「はい!奴隷諸君!」

「はい!みゅう様!」


 ダクソンの目の前では何度目か分からない収穫が行われ、米が脱穀され、俵に詰められている。


「はは…はははははは…」


 そしてダクソンが笑っている間に黄金色の田園がなくなるとスライムがひょこひょこ土を弄る―――音速の壁を越えて。


「えーと…俺徹夜してたからな…」

「寝るな~寝たら肥料にされるぞ~」


 洒落になっていない台詞を告げられてダクソンは顔を引き攣らせる。今村はその様子を見るとスライムたちと田んぼを見た。


「これで食糧庫はいっぱいになるな。魔力使い放題って楽しいな。」


 断じて使い放題というわけではない。「ドレインキューブ」がフル稼働しているだけだ。現在、設置先の王城ではシステムが全て止められている。


「まぁここはアレだから自然に干渉しても問題なさそうだし…『呪言発剄』【雨よ降れ】」


 作物付近だけ程よい雨が降る。田んぼは水が張れるくらいの土砂降りだ。スライムたちは雨を体に受けて一息いれ始めて子供たちは俵や野菜を城内に持っていく。


「さて、解除。」


 スライム群以外の部分の雨は止ませるとドライアドが植物に命令を下す。すると持って行っていなかった分の米が発芽、そして宙を舞い、一回転すると規則正しく植えられた。


「祓、月美。『悪意の報い』出来た?」

「もう少しで…」

「祓さんが作っているので最後です。」

「ん。」


 盗人、悪人用の対策グッズの製造もばっちりだ。悪い奴は畑の肥料になる。


「…さぁて、そろそろ…」


 子供たちに複製して持たせた「悪意の報い」と金貨。国中の子供奴隷を買って子供たちは戻ってくる予定だ。


 因みに子供の奴隷に少女が多いのは奴隷は基本親に売られるもので、少年だと将来労働力になるからだ。少女は精々畑仕事。自分の食料を賄うのが精いっぱいだが、少年は出稼ぎで力仕事を任せることが出来る。

 また、家父制度が続いているのでいざというときの為にも男子はあまり売られない。

 その為、少女を売りに出す家庭の方が多い。

 それと、奴隷が大量に売れたからと言って誘拐という手に出ようとしたものには「悪意の報い」がきっちり作動する予定だ。


「ん~子供たちはちゃんと言いつけを守るかねぇ…」


 親に売り飛ばされた子供たちが多く、親の愛情が欲しいとか思って大人を買ってこられたらまぁ適当な区画を与えて頑張れとでも言うつもりだが表面上追放すると言っている。


「出来ました!」

「ご苦労。後121個追加。」


 祓の言葉が聞こえると今村は材料を追加、出来上がったもの出来が良いものを一部を自分の空間に入れると後は仕掛けた。

 そして考え事を続ける。


(…まぁ大人の方が高いし相手が子供ばっかりだと思われて調子に乗られたらウザいから買わないんだからなぁ…買って来られても害がない限り放っとくが…っと帰って来たか。)


 元奴隷の子供たちが地面に影を落としながら大量の現奴隷の子供たちを連れて来た。


(…ま、とりあえず学校は作るか。教師はもうしないけど。)


 今村は子供たちの首輪を細工してこれからのパラディーソについて考えてみた。




 ここまでありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ