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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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15.何かもういいや

 今村は王城を睨みつけて溜息をついた。


「…はぁ、みゅう。お前帰れ。」

「えぇ~パパと一緒がいい~」

「【護国龍】とか言うことやってたんだろ?面が割れてる。面倒なことになりそうだから…ん?」


 今村は面倒なことで【護国龍】を追ってきた竜騎士のことを思い出した。そして考える。


(あれ?身分差のある恋物語…?何それ美味しそう…アレにある程度の力を与えればみゅうも同格として見れる…アレだ。今までペットと思ってた唯一の話し相手が擬人化するのと同じノリだ。)


 そこで今村は歪んだ笑みを浮かべ、先程の言葉を訂正した。


「やっぱなしだ。付いて来い。」

「うん!」

「さて…何人で行くかね。多分呼ばれたのは俺だけだと思うが連れて来ちゃだめだとは聞いてないし。」


 あまり連れて行くと戦争しに来たのかと疑われそうなので多くても二人だとしておきたかったが、面白そうなことになるのであれば今村は手を抜いたりしたくないみゅうは連れて行く。

 かといって祓を置いて行くと祓が死ぬ。


「3人でもいっか。えーと…アンは帰れ。」

「気配を消して付いて行けば問題ないのでは…?」

「…俺は帰れと言ったんだが?」


 今村の目を直視してアンは仕方がないといった様子で宿に向かって歩き始めた。

その後ろ姿を今村は呼び止めて子供たちに適当な依頼をテキトウにやっておくことを伝言するように言うと、今村はそのまま王城に向かった。


(寝てたら叩き起こす。起きなければ帰る。門兵がウザかったら侵入して書置きを残して帰る。)


 そんな心構えで今村は城門前に着いた。門兵が眠そうに欠伸をした瞬間を見計らって声を掛ける。


「『レジェンドクエスターズ』族長今村だ。王に呼ばれて来た。」

「ぁ…ひゃいっ!すぐに取次ぎますのでしばしお待ちを…」


 門兵は変な声を上げたが、すぐに気をとり直すと隣の門兵にその場を任せることを告げ、城の中に消えていった。

 そして今村が思っていたより早くその門兵は帰って来た。


「中でお待ちくださいとのことです。朝食を準備しておりますのでそちらを食べ終わる頃には王都の謁見準備が整うと思います。」

「へぇ…わかった。」


 思ったより随分とマシな対応で今村は軽く驚く。そして案内されるままに付いて行き、食事をとった。


(ふ~ん…やっぱ屑かった。)


 二杯目の無自覚に相手の言いなりになる薬が混入されていた水を飲んで今村は誰にも悟られないように薄く笑う。

 そして「薬物視」の目を使って誰が混入させたのか見ると祓たちにテレパスで知らせておく。その場で攻撃態勢に入ろうとする二人を制しながら食事を終えると謁見の間に向かった。


「馬鹿が…ご機嫌伺いやるなら最後までやってろてんだ…中途半端なことしやがって…」


 周囲に聞こえないように呟くと謁見の間の前の扉が開いた。案内して来た兵2人が跪くが今村は直立のまま王を見た。

 優しそうな笑顔を浮かべている少し丸めのおっさんといった感じの男だった。そしてを変えて視て分析を済ませる。


(…笑顔で人を自分の利益の為に斬り捨てられるタイプの人間だな。後ろの霊たちの顔が凄い。)


 そこで今村はふと霊力について教えていなかったのを思い出したが、禁術だし別に誰も使えないからいいか。とまったく別のことを考えた。


「王の御前で…」

「不敬な…」


 そんな声が上がる中、王は手をかざすとそれらの声を制した。


「よい。それであなたが『レジェンドクエスターズ』族長の今村殿か?」

「いかにも。」


 それを聞いて王から重圧が発せられる。今村は鬱陶しそうにその倍の『氣』を放ってやった。逆に王が少し青褪めると重圧を解いて今村もそれに応じるように『氣』を解いた。


「…用件は?」


 今村が少しだけ温度を低くした声を出すと王はまいったまいったという表情を浮かべてみゅうを見た。


「【護国龍】様と全く同じ雰囲気を持つ幼子がクランに入ったと言う報告をギルドマスターから受けてな。確認したいと思ったのじゃ。」

「勝手にどうぞ。」


 王はみゅうをじろじろ眺めてその後祓を見てほんの一瞬ながら笑顔を崩し、巣の表情になった。


「…そちらの方は?」

「…まぁ俺のお付きみたいなもんだな。」


 奴隷は基本王家が持つもの以外は王城に入れない。青年神の資料から見て取っていた常識を遺憾なく発揮してそう説明すると王は今村に焦点を合わせた。


「その娘を王家に出すならば【護国龍】様の自由を認める。」


 その発言に貴族がざわめく。


「恐れながら…【護国龍】様はこの国を守る要。あの娘…」

「祓は俺から離れると死ぬから無理。」


 貴族の発言を今村は最後まで待たずに事実を述べた。…が、普通に聞いてそれを事実と取る者はいない。子供の戯言にしか聞こえない今村の言葉を受けて王はみゅうの方を向く。


「ならば【護国龍】様は…」

「あ~…うっざいな…」


 今村はだんだんイライラし始めた。


「早朝から刺客放ってこられてイライラして起こされて、食事にゃあ毒入れられて、まどろっこしい事ばっかり言いやがって…」


 王の笑顔が少し崩れる。


「気付いておったのか…」

「俺のトラップを掻い潜れるような奴が野放しになってるわけねぇ、最初はギルドの仕業かと思ったがそんなことしそうなダクソンは完全に忙殺されていた上、様子に変わりはなかった。」


 今村はそこで一度区切って殺気を纏い始めた。


「毒は見ればわかる。いい加減にしないと殺すぞ?この王国にいる貴族、王族全部をな…」


 実際の所、殺されかけたことより眠かったのに起こされたのにムカついている。後、折角自由な冒険者になったのに横槍を入れられそうになったのにもムカついている。


「『イマジンキラー』…」


 そしてもうムカついたのがピークに達した今村は死のイメージをこの場にいる貴族と王族全員に叩きつけた。

 何人かの貴族が泡を吹き白目をむいて失禁し気絶、そのどちらかの状況に陥った貴族が数十名。

 王は顔を完全に青褪めて今村をとりなす。


「実力を量っておきたかったのじゃ…その実力があれば領土を任せるに相応しい。」

「出任せを…」


 吐き捨てるようにそう言うと、王を睨みつける。特殊な目は使っていないが、重圧だけで常人であれば気絶していただろう。


「出任せではない。魔物の大挙で領主が不在の土地がある。そこは元々肥沃な土地であったが、今は荒れ果てておる。そしてそんな折に強者が現れた。神のお導きに違いない。」


 最後の一文だけ合っている。その事実が何となくウケた今村は反応に遅れた。それを了承と受け取ったのか、王はすぐに今村にその土地の経営を任せる旨を貴族に伝え、貴族はそれをすぐ了承した。


「ここにパラディーソ領主、今村卿の誕生を宣言する!」

「…あ。しまったなぁ…」


 テレパスで青年神に今の話をしていた間に今村は領主になっていたのを知る。こうなるとなんかもういいか。と思ったのでもう流れに任せて早く済ませ、帰って二度寝することにした。


「階級は公爵!ここに5家制度を廃止し、6公合議制の設立を宣言する!」


(思いつきでようやるなぁ…)


 その後叙任式が行われ、何かもういいや状態の今村は適当に済ませて帰って寝た。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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