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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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12.進捗

 結界内の時間で一ヶ月が経過する頃。奴隷たちの中の獣人の体に異変が起こった。身体が急成長を遂げたのだ。


「…ふむ。成長したなぁ…」


 何となく狩りの様子を見ていて子供たちのお気に入りの食べ物で比較的ここ・・では低いヒエルラギーに位置しているキャナールアンフェールと子供たちを対比してそう感じた。


「…何ですかその目は…」


 隣にいるミーシャは全く成長していないので今村の視線に身を捩らせる。


「先生終わりました。」

「ご苦労さん。」


 狩りの指導をしていた祓が戻って来て今村に報告を入れる。と言っても上空150メートル地点での狩りだったので普通に見えていたが報告は大事なのだ。


「…にしても格差社会だよなぁ…」


 今村が見渡す中の少女の中で殆どが祓やみゅう、ミーシャには及ばないものの美少女なのに対してほんの一部だけ普通の顔立ちだ。

 今村としては普通より少し上なんだけどなと思っていても周りが美少女ばかりで、普通の顔立ちの子供は何となく居心地が悪そうに見える。


「何でかねぇ…」

「恋が人を綺麗にするんだと思いますけど…」


 目の前の祓が訳が分からないことを言うのを今村は軽くシカトした。美少女代表のてめぇに相手はいないだろうが。と言わんばかりの目だけ向ける。


 それを受けて顔を赤らめる祓。それはともかく、祓が言ったことには理由がある。美少女になったのは今村の事が好きな少女たちだけなのだ。


 これには加護の特性、信仰(この場合は崇拝)による加護の度合いが関わってくるのだが、今村は自覚していない。


「まぁいいや。それにしてもどうするか…大体10歳前後のガキどもを野に放っていいものか…」

「…それは…」


 今村は少し前に一度大き目の子供たちにそろそろ解散することを伝えたが、子供たちは大反対し、「捨てないで」と泣き出す子供までいた。

 その場は冗談という事にして事無きを得たが、実際これ以上今村の手に掛けて魔改造すると取り返しがつかないレベルに達してしまう。


 …若干手遅れの感じもするが。


「俺ここに来た本来の目的はどっかにいる転移者を見つけることなんだよね…」

「転移者ですか…」


 隣にいるミーシャが考える素振りを見せる。最近ではミーシャも大分常識を侵されて今村よりになっているが、彼女は至って常識人のつもりだ。


「それならば折角冒険者ギルドのSランクなんですからそこから情報を…」

「ミーシャさん!僕はあなたのことを諦めてません!今日もごはっ!」


 少年の方を見向きもせずにミーシャが無詠唱で『魔法』を行使。空間に魔法陣が浮かぶとそこから雷が出て子供の腹部に突き刺さった。


「グググ…精進します!」


 常人…いや、2流の冒険者であれば即死になるであろう『魔法』を喰らって少年は元気よく走り去って行った。


 因みに男の子たちも大半はイケメンだ。崇拝の対象である今村からその等価として加護を受けているからである。


(…こいつも常識ブレイクしたか。)


 ある種の成長を感じたが今村はその成長が止まることが無いように黙っておく。

因みに祓はミーシャより多くの少年から求婚されることに対抗してかなり強くなっていた。


「ん~ギルドの情報ねぇ…でもそうなると小さい子供をどうするか…」

「ギルドでクラン作ればいいじゃないですか。Aランク以上のクランの長とそれの補佐にBランク以上の人が二人付けば大丈夫ですよ?」


 ここにはSランクが3人揃っている。子供たちの実力も実は全員Aを越していたりもする。今村はその辺を考慮して呟いた。


「まぁそれなら外出ていいかなぁ…」


 その言葉が聞えたのだろうか、奴隷の子供たちがどことなく集まって来る。


「外ですか?」

「やった!冒険者になるぞ俺!」

「ははっ!お前みてぇなのが冒険者になれるかよ!Hランクに入らねぇとなれねぇんだぞ!」


 先程も述べた通り全員余裕でAランクは行っているが、そのことに気付いているのは今村だけだ。常識人だったはずのミーシャでさえ今言った子は受かるとはいえ、D位かな…と思っている。


「ん~少し常識入れ直さないとなぁ…」


 少なくとも冒険者や働きたいと思っている比較的大きめな子供たちには常識を叩き込もうと決意。


「…そ…の…ま…え…にっと…」


 今村は愉悦を込めた顔でにんまり笑う。自身が離れることで少し面白いことを子どもたちが起こそうとしていたのを知って、仕込みは出来上がっているのだ。


(さぁ…恋愛脳のお子様たちよ…コードネーム『シークレットガーデン』だっけ?要するに覗きだが…俺は何も見ていない、気付けないという状況を作るためにどれだけ苦心したことか…)


 明後日の方向に能力を行使しすぎている今村。洗脳染みた教育で子供たちに無理なく恋愛感情を植え付けていた。その収穫の一部を楽しみにしていたのだ。


「まぁとりあえず子供たち、今日はここまででいいよ。…で、祓。」


 喜びと不思議な顔をする子供たちを尻目に今村は祓に声を掛けた。


「?はい?」

「ちょっと出て来る。」

「はい。」


 じゃあ準備が要るなと思った祓に今村は白銀色に輝くペン状の何かを放物線を描くように緩く投げ渡した。


「?これ何ですか?」


 今村は口の端を三日月の様に吊り上げた。が、今村が何か言う前にみゅうが怪訝な顔をして今村に尋ねる。


「みゅうの鱗…?」

「正解。模擬戦中にちょくちょくとった物…まぁそれをベースに色々頑張ったものだ。」


 それが何なのか分からない祓はどうしたものかと立ち尽くしている。


「一定時間だけだが俺がいなくても『スレイバーアンデッド』の効果を無効化できる。」

「っ!」


 その言葉を聞いた瞬間祓は硬直。子供たちがざわめく。そんな中今村はニヤニヤ笑った。


「『時空龍』の力で距離感を弄らせてもらった。俺の呪いで滅茶苦茶な横槍入れてやった。クックック…」


 今村が笑っている中、祓はそのペンを叩き壊そうと『魔法』を行使しようと膨大な魔力を練っていた。


「はぁ?『魔下落崩帝』!『マジックハック』!」


 今村はそれを叩き潰す。子供たちはその両方の力の奔流に驚いている。


「何やってんだ!これ試作品で一品物なのに!」

「こんなもの要りません。」

「ずっと一緒で息詰まってるだろうと準備したのによぉ…いきなり壊すってのはどうかと思うぞ?」

「ずっと一緒でいいんです!」


 因みに会話についてはみゅうが『時空』の力を使って距離を創り、聞こえないようにしている。

 それとは別に今村は呪いで聞こえない。…が、その状況は生徒の好奇心を大いに掻き立てる。今村の教育は行き届いているのだ。


「まぁ何て言ってるのか知らんが…一時的な自由は要らん的なことだろうな。悪いが試作品じゃ2時間しかもたないからムカつくとも思う。」

「違います!」


 これは聞こえたようだ。今村は大いに顔を顰める。


「…長くしろと…?うえ…それはちょっと…」


 今村の言動に祓は少し考えるところがあった。ずっと今村を見続けた祓は今村が何か企んでいる時に何かを微妙に嫌がるときは少し祓にとっていいことがあることを知っていたのだ。


「…仮に長くできるなら…」


 祓の言葉に今村はしばし逡巡すると自分にだけ聞こえるように呟いた。


「…『プリンスキス』しかないよなぁ…そこまでしたくな…」

「少し考えるところもあるので3時間ほど時間を頂きたいのですが?」


 その言葉に今村は詰まった。嫌な所を突かれたのだ。3時間までであれば既存のものを弄れば何とかすることもできたのだが、3時間ほどと言われた場合、微妙に足りない恐れが出るのだ。


(う~ん…実際はこの後の入浴時間だけ俺がいなくなればいいんだが…3時間要るって言われたらなぁ…)


 仕方がないので今村は要求を受け入れた。…が、いなくなって帰って来てみれば少年は吊るされてるし、今村用の個人風呂に何故か祓とみゅうが浸かってるし、裸見た詫びでキスを更に要求されるしで今村は常識授業とは他に潜入技術の向上を図ることにさせられた。




 ここまでありがとうございます!



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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