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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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9.魔改造

「さぁ奴隷少年少女たち。今から君たちには2グループに分かれてもらう男女均等にな。」


 今村がそう言いながら檻を力づくで捻じ曲げて奴隷たちを外に出すと一部の奴隷たちが一斉に逃げ出した。


「あ。逃げると多分死ぬよ。」


 その忠告の「あ」の部分で奴隷たちは胴体を首と泣き別れにさせられて死んでいた。その光景に子供たちは何が起きたか分からず、数瞬遅れて怯え始めた。


「…あーあ。まぁいいや。逃げたのは男3人に女1人。残りは男12人に女30人か。」

「パパ~これ要る?」


 みゅうが少年たちを殺した敵を持って来る。馬鹿でかいクワガタとカブト虫を足したような昆虫だった。


「うわっ複眼キモっ『呪炎』」


 今村はそれを黒炎を使い一瞬で燃やした。でかい昆虫は見ててキモい為、今村は瞬殺を心掛けているのだ。


「…キングビードル…危機レベル297…一夜で帝国の砦を落とした悪魔の虫…」

「へ~詳しいな。」


 ミーシャが灰にした虫のことを教えてくれる。今村が感心しているとミーシャは何とも言えないような顔で今村を睨んだ。


「危機レベル200を越す化物は王族の義務として私が人外になる前に覚え込まされました。一匹で災害を起こすような化物ばかりですから緊急時にすぐに指示が出せるように。」

「へぇ。」


 今村が話をしたり後ろで祓が殺されかけたりするのをローブで守って敵を殺したりしていると奴隷たちは2グループに分かれた。


「よーし。じゃあまずは自己紹介から行こうか。俺は今村仁。しがない【一般人】でお前らの買い主で、師匠だ。今村様とでも呼んでくれ。んで、次は…」


 今村は祓に目線で合図する。


「私は天明祓。先生の奴隷です。」


 祓の簡潔な自己紹介の後に今村が続ける。


「飯とか家事、回復諸々をしばらくやってもらう人だ。…まぁ姉弟子でもあると思ってろ。で、祓全員分の飯の支度を頼んどく。」


 今村がそう言うと祓は少し離れた所に移動して今村の移動キッチンを使って調理を始めた。それを尻目にみゅうが自分から自己紹介を始める。


「今村みゅう。【時空龍】で今村仁様の娘、教える方だと思う…よね?」

「うん。昔と同じ。」


 そう言うと今村にだけ見えるように微笑んできりっとした顔になって子供たちを見た。


「死なないようにね~」

「で、次はそこの猫耳娘。アレは…まぁ変態だ。」


 今村は訓練後の身体能力などのことを考えてそう言ったがミーシャは納得いかなかったようだ。


「何ですかその説明!…あ、でも出生は一応隠さないといけないか…私はミーシャ。猫人族でジョブは神姫。今から何が起こるか分からないけど頑張れ。」

「後これはドライアド。娘。」


 これで自己紹介を終えたが、子供たちの目線はドライアドに集中している。ドライアドはどこか誇らしげに今村の方を見ていた。…が、放って置くことにする。


「はい。じゃあ俺からの最初のプレゼント。子供たちには名前をやる。」


 もの凄い流れ作業で今村は奴隷たちに名前を付けていくが、目が虚ろな少女の時だけ止まった。


「…やっぱり気のせいじゃないか。面白い。お前はメイと名乗れ。」


 今村は笑いながらそう名付けると全体を見渡した。


「さぁお前たちに名前を渡した。それで俺の加護が適当に入るはずだ。まずはそれを育て上げろ。世の中に復習できる程度にはな。」


 今村はそう言ってグループαとグループβと名付けたそれのミーシャとメイのいるαにつく。みゅうとドライアドはβに付けた。


「じゃあ始めるか。みゅう。時間の流れはまだ操れるか?」

「うん!でも専門じゃないから止めたり戻したりはできないよ?」

「十分。外界と流れを変えておけばいい。半径250メートルはゆっくりで。」

「はーい。」


 世界改変を行うと、今村親子は奴隷たちに笑いかけた。


「「さぁ始めようか。」」



















 今村率いるαグループはまず能力開発から始めた。


「まず魔力ってのを知ってもらうところから始めないとな。『魔下落崩帝まからくほうてい』…で、『魔帝公発剄』」


 辺りの生物が息苦しくなるほどの『魔素』が放出され、景色が歪んだ。子供たちの方までそれは向かわなかったもののそれを見た子供たちの中には泣き出す子もいた。


 そんな中ミーシャが引き攣った笑みを浮かべる。


「…どんな魔力してるんですか…」


 空間が歪むという事は世界が歪んでいるのと同じだ。元の世界を改変しているこの空間は少なくとも元の空間を凌駕する性能を誇っているはずなのにもかかわらず、それすらもあっさりと歪めた。


「フフ…本当に私が人外で孤独に苛まれていたのが馬鹿みたいですね…」


 力あるものの孤独、それが霧散してくようだ。


「くぁ…眠い。」


 それだけのことをやってのけながら今村は欠伸混じりに魔力放出を止めた。そして何事もなかったかのように続ける。


「はい。今のは流石に見えただろ?」


 子供たちは勢いよく首を縦に振る。それに満足したらしい今村が少し魔力を薄くした。


「これもまだ見えるはず。」


 歪んだ景色が元通りになり、辺りに黒い霧のような魔力が漂い、植物が枯れていく。世界に干渉していた魔力が規模を小さくして辺りに影響を及ぼし始めたのだ。


 それを理解できるのはαグループの中でミーシャだけだ。周りの子供たちは今村の問いの方に集中してそんなことに気付いていない。


「じゃ、次。この辺から見えなくなる奴がいるかもな。」


 そう言って今村は魔力をもう少し薄くした。そして魔力を○の形に整える。


「はい、今どんな形?」


 今村は座っていた男子奴隷に質問する。するとその少年奴隷は怯えながら両手で丸を作った。


「はい正解。ご褒美だ。」


 今村は『魔合成物質』飴バージョンを投げ渡す。少年奴隷はそれが何だかわからなかったようだが、空腹だったのだろう。匂いを嗅ぐと甘い香りがしたので恐る恐る口に入れ、顔を綻ばせた。


「おいしい…」


 だが、それを隣で見ていたミーシャは呑気な顔をしていない。その子の魔力量が何となく増えた気がしたのだ。


「はい次~」


 同じ魔力量で同様のことを繰り返し、全員見えたので飴を配る。そして少し薄めていき、普通のチョコレートやらガムなどのお菓子で釣っていき、最終的には子供たち全員が大気中の魔力を見れるようになった。


「嘘…」


 これまで自分でも見ることが出来なかった魔力を見てミーシャが驚きの声を上げる。


 大気中の魔力を見るなんて芸当は妖精や精霊、エルフ以外には伝説級の魔法使いにしかできないはずの事だったのに自分はともかくこの場の子供全員が出来たのだからその驚きは当然のことだろう。


「じゃ、とりあえず今日はここまでだな。飯にしよう。お前ら痩せてるから最初は軽めの食事からな~…あ、種族が獣人は別で、お前らはいきなり栄養価が高いの喰っても大丈夫だから。」


 そう言って今村は子供たちを連れてみゅうと合流した。みゅうの方の子供たちを見てミーシャは目を疑った。


(魔力量が激増してる!?)


 奴隷全員が買った時に比べてあり得ない量の魔力保有量を誇っているのだ。生きるのがやっとの状態からそれこそミーシャが元々所属していた帝国の宮廷魔導師レベルの量に。


(…自惚れも良い所だった…というか、私たちはこれからどうなるんだろ…)


 この日の献立は解毒された『キャナールアンフェール』のシチューだった。材料を聞くまでミーシャは3杯食べた。聞いた後は手が止まったが悔しい位美味しかった。




 ここまでありがとうございます!



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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