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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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8.気紛れ

 今村は薬草採取の依頼を受けて外に出た。


「はい仁様。これが依頼の薬草一式です。」


 何かいた。今村はその姿に見覚えがあったし、みゅうもそれが誰だか知っていた。…が、今から出掛けようというところに来られて少し困る。


「ドライアド…」

「どらいあー」

「はい♪」


 半透明の姿をした人形の様に小さな少女は薬草を空中に浮かして今村に押し付ける。


「なっ…せ…精霊王の一柱であるドリアード様…?」


 ミーシャが【鑑定】で種族とジョブを見て驚いているが、祓は何のことかわからないし、今村とみゅうにしてみれば驚くことではない。


「えー面白くない…」

「ちょ…ちょぉおぉぉっ!すみません!ドリアード様!こちらのものは常識に疎いようでして…私の方から言っておきますので!どうかお許しを!」


 今村が怠そうな目をして薬草とドライアドを見た今村の頭をミーシャが掴んで下げさせ…ようとして街路樹の枝が急成長して止めた。


「うふ?私のマスターに何してくれやがりますか?このガキ」

「おー頭掴まれたのとか超久し振り。」


 ドライアドがにっこり笑って背後に夜叉の化身を呼びかねない勢いでミーシャを見る。それに対して今村は妙なことを考えていた。


「…とりあえず。」


 祓は薬草を持ってギルドの中に入って行き、依頼を終了させておいた。


「きゃああぁぁぁぁぁぁっ!」

「あ、死刑は免除。」

「畏まりましたわ♪」


 祓が再びギルドから表に出るとミーシャはエビ反り型に縛られて、街路樹に吊るされていた。


「もぐっ!んぅぅぅ」

「アハハハハ~変なの~」


 猿轡を噛まされてみゅうに色んなところを弄られ遊ばれているミーシャ。ドライアドはきりきり締め付けを強くしたり弱くしたりしている。


「あ、依頼完了させたのか?う~ん…面白くない。初依頼のイベントは最低でも魔王ぐらい出て欲しかったなぁ~」

「ゲームじゃないんですからイベントなんて…というより初めから魔王戦ってどうかと思いますけどね。」


 人だかりができてミーシャの痴態が衆人の前に晒され過ぎてミーシャが本気で壊れる前に今村はミーシャを回収して本日の宿を取りに行った所で気付いた。


「あ、金ねぇや。どんなのかな?」

「こんなのです♪」


 ドライアドが膨大な量の金貨を出し、辺りにぶちまける。今村はそれの一枚を拾い上げるとローブからインクの壺をだし、塗り付けて別の所から出した紙にくっつけて版画を取った。


 因みに零れ落ちた金貨を拾おうとした人々がドライアドに駆逐されているのはご愛嬌だ。


「…さて、何かもう今日はいいや。宿行って寝よ。」

「はい。」

「ミーシャは…うん。半死体だからいっか。ところでドライアド。」

「はい?」

「何でお前ここに居んの?」


 今村はようやく問題に触れた。今更かと思うくらい悠長に待ってから聞いて、ドライアドはにこやかに答える。


「ギルド内にカンフィフが植えられていたじゃないですか?」

「知らんけど。」

「それを通してテレパスネットワークで知りました。」

「…俺は力を限りなく抑えてるんだが…」

「みゅう様が『パパ』と呼ぶのは仁様だけですわ♪」


 理屈は通った。…が、微妙に納得いかないことが祓にはある。


「その…薬草採取が決まってすぐに薬草を持って来てたじゃないですか?」

「…あなた誰ですか?私と仁様の甘美なる会話の中に入って来ないでいただけませんか?」


 露骨に態度を悪くするドライアド。代わって今村が説明する。


「こいつは俺が作った植物がある所ならどこにでも飛べる。0.017だっけ?」

「0.016999997になりました♪」

「…俺と大して歳変わらんくせに微妙にきゃぴっとした声が気に入らん…」


 つまり、ギルド内のカンフィフから情報を得て、薬草の場所に飛んで、ギルドの外の街路樹に飛んだようだ。

 それはそれとして口調を封じられたドライアドが困った顔をして今村を見上げる。


「えーと、仁様…どんな喋り方をすればいいのですかね…?」

「好きにすれば?」


 今村はドライアドにクレームを入れながら宿に進む。担がれたミーシャからはうわ言のように「神をも恐れぬ精霊王の一柱が…大体【護国龍】の段階でおかしいんですよこの人…いや、ステータスからして…」などと言っている。…が、今村は時がたてば大丈夫だろうと判断して担いで連行した。



















 そしてその道の途中で今村が顔を顰める事態に遭遇する。


「…奴隷商か。」

「っていうか今村さん!?どこに来てるんですか!?ここ思いっきり表通りから外れてますよね!?」


 シリアスな雰囲気にミーシャがてられて復活するが、周りの状況を見て今村にシリアスをぶち壊しながら突っ込んだ。


「うん。迷った。…ところでこの中に活きが良いのが一匹いるなぁ。」


 今村は檻の中で騒ぎ立てる子供たちの中で目が虚ろで一切言葉を発さない亜麻色の髪をした少女を見据える。そうしていると奴隷商の女が今村に寄って来た。


「おやおや…随分と羽振りがよさそうな方ですね。」


 ミーシャ、祓、みゅうをじろじろ見て、最終的に今村に愛想笑いを浮かべる女。今村はぶっきらぼうに答える。


「まぁ、悪かぁないな。さて、ここに居る子供たち全員でいくらだ?」

「へ?」


 いきなりの今村の言葉に奴隷商の女は間抜けな顔を浮かべる…が、一秒もせずにその顔をいやらしい笑みで浮かべると金額を提示して来た。


「男15人、女31人の合計46人で5000Gぴったりという事でいかがでしょうか?」


 この世界のGも今村の元いた世界の通貨と大して変わらない。1G=1万円くらいだ。

 つまり提示された金額は5000万円ということになる。


「ドライアド。」


 喋り方が気に入らないと言われたドライアドは黙って今村のいた世界にはない小さ目の白色金貨を差し出す。奴隷商の女は飛び上がって喜んだ。


「はい!白金貨5枚ですね!丁度です!おーい!」


 奴隷商人はそう言って店の奥から首輪を付けられた屈強な男たちを呼ぶと檻ごと店の外に子供たちを出した。


「ご一緒に隷属の首輪はいかがですか?今ならお安い…」

「あぁ…その辺は自分でやるから。で、俺が名乗らず言い値で買った意味は分かっているな?」


 今村はそう言って奴隷商に歪んだ笑みで笑いかけた。それに奴隷商は手もみしながら応じる。


「勿論でございます!深くお尋ねはしません。」

「それでいい。みゅう!子供たちに防壁かけて祓を連れて来い。」

「はーい。」


 深く歪んだ笑みを浮かべてそう言うと今村は檻をローブで掴み上げ、空中に跳び上がった。


「わっひゃぁっ!」


 何の話も受けていないミーシャが変な声を上げ、みゅうは祓を持って今村に黙って続き、ドライアドがその後を追った。


「ど…どこ行くんですかぁっ!?」

「お前が捕まってた所。」


 ミーシャの叫び声に今村は平淡な口調で答えると、みゅうが今村の隣を並走しながら小首を傾げて訊いてきた。


「焼き鳥?」

「そう。」


 今村は一つ頷くと、今村たちが近付いてきたことに気付けなかった哀れなキャナールアンフェールをまた切り裂いて別空間の中にぶち込んだ。


 こうして一行は冒険者になって宿に泊まる予定だったのに、大量の奴隷を連れて元来た道を戻ることになった。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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