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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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12.花見の前に

 山を越え、谷を越え今村と祓は目的地に着いた。目的地は崖の中腹でそこには様々な花が咲き乱れている。


「どうだ?」


 今村が若干得意げに祓に訊くと祓は一面を見渡してから言った。


「……すごいですね。何でここだけこんなに種類が……野薔薇に菖蒲あやめあざみ蝦根えびね万年青おもと金盞花きんせんか金蘭に銀蘭……」

「水辺にもいろいろある。ほれ、水仙やら、睡蓮、…あとまぁ何故か彼岸花と曼陀羅まんだらとかの四華が……何でこの季節に咲いてるのかは知らんが……」


 今村がそう言って小さな池を指すが、祓の目はその途中で止まる。


(……え? 何でここに黒死草こくしそうが? 冥界にしかないはず……)


 驚く祓の様子に気づかない今村は池の方に行く。するとその途中で桜の木の近くで何か一人で喋り始めた。しばらくしてそれが終わったらしく、今村は祓の方にやって来てこう告げた。


「はー……ちょっと冥界に行って肥料調達してくる。祓も付いて来てくれ。」

「……え? 急にどうしたんですか?」

「いや、この辺りを治めてる木の精霊っぽいやつがよ冥界の土が欲しいって言ってきたから。」

「……全く訳が分かりませんが。付いて行けばいいんですね?」

「うん。じゃあ行くぞ?『冥門開界めいもんかいかい』」


 今村はローブからチャーンドから貰った宝玉を出すとそう呟き二人は気付くと冥界にいた。


「……さて、とりあえずここの土でいっか。」


 今村がそう言ってローブで土を集め始めると周りに大の大人ほどもありそうな醜悪な蝙蝠の化け物が現れた。そんな蝙蝠たちの豚のように曲った鼻を見て今村は祓に質問する。


「……蝙蝠って美味しかったかね?」


 囲まれた状態になっても悠長にそう言う今村。土を集め終わると今度はそのローブを硬質化し、無数の槍のようにして待機させる。


「……この蝙蝠は肉食ですので……いえ、それよりもこの数……流石に不味いですよ? すぐに宝玉を使って帰った方が……」


 しかし祓の助言を聞くころにはすでに時遅く、蝙蝠たちは臨戦態勢を終え、襲い掛かってきた。祓はその様子を見て短く今村に指示を出す。


「くっ……先生! こうなったからには一匹も逃がさないでください! 逃がすと他の群れも呼びます!」

「へぇ~詳しいな。んじゃあまぁ行きますか! 『飛髪操衣ひはつそうい』」


 今村の号令と共に迫り来る蝙蝠はローブと髪によって貫かれた。ローブによって胸に穴の開いた蝙蝠は地面に投げ捨てられ、髪によって貫かれた蝙蝠はそのまま消える。そんな様子を見ながら今村は呟く。


「……髪……蝙蝠吸収してるな…何このトリートメント……怖っ……」

「…あの。先生……私、魔法を使いたいのですが……髪が……」


 近づく蝙蝠をすべて今村に殺され何もすることのない祓が断末魔をあげる蝙蝠の円の中にいる今村にそう言う。だが今村はこれを拒否した。


「えーと、オートモードだから無理! どうやって判断してるのか思い出せないが攻撃意志を持ってるものだけ迎撃対象にしてるから! 魔法とか撃つと! お前にも攻撃が行くと思う!」


 蝙蝠たちの断末魔に負けないように祓にそう言い返す今村。そして言い終わると『飛髪操衣』で髪がうねる中右手から金の装飾が施された例の刀を出す。


「……これ仕組みどうなってんだろうな……出てきたけど……さてと!」


 今村は刀を軽く振って正眼に構え……ようとした。しかしその前に軽く振った刀から斬撃が走り、今村の目の前の景色を縦に斬り倒した。


「……は?」


 今村の呟きがやけにはっきりと聞こえる中、その斬撃は留まることを知らず、刀を振った直線上にあるものすべてを斬りつくす。


「オイオイ……不味いなこれ……」


 今村がこう呟くと何故かすぐに斬撃は消えた。だが、その惨劇は消え去ることはない。今村は虐殺を続けながら頭を抱えて呟く。


「……せめてもの幸いはここが冥界だったってことか。生きてる人間がいなくてよかった……後であいつに謝っとかないとな……」


 今村がこう呟いているうちに髪とローブは蝙蝠を全滅させ、地面にある死骸も髪が吸い尽くした。


「……さて、逃げるか。」

「…………はい。」


 二人は宝玉を使って元の世界に逃げ帰った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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