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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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2.出会い

「クハハハハ!『αモード』ぉっ!祓、死にたくなかったら俺の後ろに居ろ。アンカー」


 今村はローブをの裾を幾つも地面に打ち込んだ。


「さぁ来い!」

「ま…真正面から受ける気ですか!?」

「勿論!っとらあぁぁぁぁっ!」


 返事の間に白銀の龍は今村に突っ込んできた。因みにその時大気が震える咆哮が鳴り響くが、「黒魔の卵殻」で防ぎ通す。


「…?殺意がない…まぁいいや!久々だなぁ『破壊神モード』及び『殺神皇帝』!」


 歪んだ笑みを浮かべた今村の様子がおかしくなっていくところで龍は今村を長い体で巻き取った。そしてその大きなあぎとが今村に向けられる。


「先生っ!」

「死ね…『数え死に手』【壱禍倒千いっかとうせん】【弐禍倒万にかとうばん】【惨禍死億さんかしおく】…ってあれ?」


 祓が焦りの声を上げるが今村は薄く笑ったまま長い体を内部から攻撃する。一撃目で緩んだところで今村は脱出。そしてその後は連撃を入れていく。

 龍は勢いに負けて吹き飛びかけるが今村がそれを許さない。だが、そこで今村が手を止めた。


「痛いよう…止めてよパパぁ…」

「…え?」


 龍が涙目で今村にそう訴えたのだ。そこには神々しさも畏怖の念もなにもない幼子の訴えしかなかった。

 今村はモードを解除する。


「…久々の俺の神核で戦えると思ってテンションあがって珍しいものが使えたのに…」

「うぅ…久しぶりの再会なのにぃ…」


 両者理由は違うにしろ落ち込んでいる。今村の方はそれはそれとして、と「呪式照符」を出して龍の素性を確認。それで思わず声を漏らした。


「あ。やべ…忘れてた…」

「…パパ今なんて言った…?」


 とても小さい声。寧ろ発声していたかどうかも怪しいレベルの音量だったのにもかかわらず、龍は聞きとったようだ。龍は愕然とした様子で今村に尋ねる。


「わす…忘れてた…?パパ…みゅうのこと忘れてたの…?」


 今村は黙って顔を背ける。龍は号泣し始めた。音量が大きすぎるため、ほとんどが「黒魔の卵殻」によって遮断されるが、内容は推して知れる。


「…いや、大きくなったから…」

「酷い酷い酷い!ずっとずっとずぅっと待ってたのに!」


 今村は埒が明かないと聴覚を操作して龍…みゅうの言葉に耳を傾けることにし、なじられた。それで今村は仕方なく弁明を行う。


「まぁ…生き返ったの最近だし…それに3兆年経ってるし忘れてるかなって…」

「ずぅ~っと待ってたのに!」


 怒りの形相のみゅう。傍から見れば完全に捕食シーンにしか見えない。


「え…と、先生その龍とお知り合いで…?」

「…第1世界でも屈指の実力を誇る『時空龍』のみゅう。…元娘のようなもの。」

「今も娘!…でもお嫁さんになるの…」


 間髪入れずにみゅうは今村にそう返す。小声だし、呪いで後半は聞こえていない今村だが、前半だけでもあんまり納得いっていないようだ。


「…お前の親とはお前が大人になるまで面倒を見てくれって遺言で頼まれたが…3兆年経ったんだし…そろそろいい加減大人じゃ…」

「人化!」


 みゅうはそう言うと白銀の長いサイドテールをした可愛い女の子になった。


「子供!」


 健康的肌色をした顔に浮かぶ、ぷっくりとした唇でみゅうはそう断言し、今村はそれを見て引き気味に尋ねた。


「…おい、お前が大人になるまであと何年かかる…」

「知らない!」


 小生意気な表情でそう断言するとみゅうは今村に飛びついてすりすりし始める。祓はムッとするし今村はゾッとしている。

 みゅうは最強の一族なのだ。しかも今村は過去に魔改造を施している。結果は言うまでもないだろう。

 子供なので倒そうと思えば倒せないこともないが、死闘になる事は間違いない。それこそ死に至る奥義を使うことに。


「ふぅふぅ…んにゅ…」


 今村は黙ってみゅうのなすがままにされていたが、みゅうはそれに納得いかない。


「撫でてよ!」

「…別にいいが…」


 別に死闘になってもそれはそれで楽しいのでいいのだが、今の今村には少し死ねない理由がある。

 それがこの報告書の記述。この世界を創るにあたってモデルをした特殊磁場における異世界のある星、その中の一国…その中の小説が気になるのだ。


(…この前ケーキを食いに行ったときにもこの世界の記述が『呪式照符』にあったしな…ちょっと気になる…)


「うん。もういいよぉ~」


 考え事をしている内にみゅうは満足したようだ。そしてふと横を見ると祓がジト目になっていた。


(あ、勿論祓のこともあるから死ねないってのは忘れてないぞ!)


 何となく見透かされていた気がするので今村は謝罪の意を込めて頭を撫でる。


 実際は撫でていることに対するジト目だったのだが、結果オーライで機嫌は直った。


「それでどこ行くの?みゅうもう昔より強くなったよ!戦争にも行けるよ!」

「…別に戦争しに行くわけじゃないが…まぁ同じようなもんか。この世界の下界に入って色々する。」

「じゃあ行こ~!」


 ハイテンションのみゅうに連れられて今村と祓は白い空間から出て行った。



















 気付くと何か大きな城の上空にいた。


「…ふむ。あっちだな。」

「先生!私飛べないんですが!」


 落下していることに気付いて祓は軽い悲鳴を上げる。今村は普通に直立して、祓の方に歩み寄ると捕まえた。


「…あぁ、ここ第2世界だからな。お前は殆ど能力使えないだろう。」

「パパ!みゅうの時はそういうの危ないからダメって言ったのにそれはいいの!?」

「…別に危なくないから。」


 みゅうが今村の後ろにへばりつきながら文句を言う。そんなことより祓は腕が痛かった。それを察してか否か今村は祓をローブで包む。


「さて、囚われのお姫様んところに気は進まんが行きましょうか。『翔靴:絶式』」

「え?絶式…ってきゃああぁぁぁぁ!」


 ものすごい勢いで加速し、辺りの風景が滅茶苦茶になる。一定以上の高さにあった木はへし折られ、鳥は避ける暇もなくローブで殺され、ドレインキューブで血を抜かれ、羽を毟られ、捌かれ、食材になって消えていく。


「あははははは~!凄い凄い~」

「笑い事じゃあ…」

「着いた。」


 そして着いたのは黒煉瓦で造られた要塞だった。祓もそこまで来ると強大な負の力に気付く。


「パパ~みゅうさっきの鳥さん食べたい~」

「…まだ焼いてる。後でな。…っと今出来た。」


 今村はどこからか串に刺され、香ばしく食欲を掻き立てる焼き鳥を出して口にした。


「うん。良い味だ…ほれ。」

「わーい!」


 そう言って今村はみゅうに食べかけの焼き鳥を渡す。みゅうは喜んで食べた。…その近くでは要塞を守る衛兵たちが血まみれになって吹き飛んでいる。


「ここは基本貴族の子弟が馬鹿やらかした後、ほとぼりが冷めるまでいるとこだからな~容赦なしで行けるね~」


 もう一本焼き鳥(ネギ間・塩)を取り出して、食い終わると串を脳天目掛けて投げつける。

 相手は掠っただけだったが間もなく白目をむいて泡を吹き、息絶えた。


「あったり~!パパ今日猛毒だね~!」

「ん。こないだ神核合成したばっかだから熟成度が甘いけどな。」

「だよね!甘いと思ってた~!もう一本頂戴!」

「今からお姫様に会うからその後で。」


 呑気に動く中、祓だけは喋れない。衛兵が猛毒を散布しているからだ。「黒魔の卵殻」が効果を発揮して辛うじて息をして、生きていられるがそれ以上の事は出来ない。


 そして、厳重な封印が施されている扉に行き当たった。


「『マジックハック』はい終了。助けに来たよお嬢さん。」


 今村はそう言って扉を開いて中にいる人物に声を掛けた。両手両足を別々の鎖でつながれ、物々しい魔法陣の上に座ることも横になる事も許されていないその人物は仮面越しにどんな顔をしているのかが全く不明だった。



 

 ここまでありがとうございました!


 因みにここの貴族実は滅茶苦茶強かったです。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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