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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第六章~異世界その2~
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1.また異世界に

 さて、3部構成の二つ目です。ふざけまくります。…が、話は進みます。

「うん。上出来!」


(…本当に作り上げましたね先生…ですが、そう簡単に解除はさせません…)


 祓は今村が1週間で解除の術式を作り上げるのを隣で見届けていた。


 その期間の祓の生活は祓的には薔薇色だった。


 朝、同じ部屋で起き、朝食を作るのを一緒の部屋で待ってもらう。それが終わると研究。今村が真剣な顔で色々と調べているのを間近で眺めて待つ。


 昼。研究に区切りを入れて昼食を朝食と同じ要領で作り、食休みを行いながら今村のだれた顔を見て内心でじたばたする。その後「プリンスキス」をされて、それを忘れようと一心不乱に鍛錬を行う今村を眺めつつサポート。


 夜。鍛錬でかいた汗をお風呂で流す。祓は今村の命令で湯巻を着させられたが、それでも透けるのを見て顔を背ける今村を見て異性として認識してもらっていることに内心喜びつつ上がり、そして同じ部屋でキスをしてから眠りにつく。



 大体そんな感じだった。そして、昨日あたりは今村は徹夜。今日の朝、今村は祓に術の説明を行った。


「両者が二度と顔も合わせたくないという意識をしっかり持って、その思念を増幅させることで俺が思念魔法を…」


(要するに片方わたしが一緒に居たいと思えば術は作動しないんですね。)


 今村の研究成果を潰すようで悪いが、祓は術を成功させる気は全くなかった。このままなし崩しにずっと一緒の所存だ。

 だが、今村の方はそうはいかない。禁術の類は見ると今村以外の者が発狂する物が多いし、そろそろ第2世界に行くのだ。あと、意外に可愛いものが好きだとか色んな癖があるのも隠しておきたい。


「…じゃあいこうか。」

「はい。」


 両者互いに見合って…機械が…光った。


(憎恨怒忌滅呪殺怨烏羅厭這蛇魔朱禍頭…ってこれ違う。間違えた。…あ~嫌い嫌い大っ嫌い。死ね死ね死ね……後はあっちが頑張ってくれないかな…)


 徹夜明けで大分適当な今村。頭が働かないが、それでも膨大な嫌忌の力が流れ込む。


 対する祓。


(愛してます大好きです。離れたくないです。一緒に居たいです。添い遂げたい…)


 今村の思念を打ち消さんとばかりに好気を流し込む。結果。


「…何か微妙…」


(こいつお人よしだから本気じゃ俺のこと嫌えなかったみたいだな…奴隷にされときながら…俺の方は十分だったはずだが…)


「…残念でしたね。」


(まったく解かせたくなかったんですが…残ったのでいいとします。)


 微妙に術は切れた。具体的に言うと半径500メートル圏内にいないといけない。『プリンスキス』はしなくても大丈夫。今村は不満気に口に出す。


「…今から異世界行くのに…これじゃ一緒に行くことになるな…」

「えっ…はい。」


(良かった…置いて行かれるところだったんだ私…)


「…まぁ『スレイバーアンデッド』かかってる限り死なないが…きちんと身は守れよ?粉々にされたら直せないから。」

「はい。」

「言っとくが、ここみたいに甘い所じゃないからな。この間行ったところとも格が違うはず。多分あいつが作った世界だから性格悪いと思うし…」


 そんなことを言う割に今村は楽しそうだ。そんな今村に祓は恐る恐る尋ねる。


「えー…すみません。いつ行くんですか?」


 今村は我に返ったようだ。そして時計を見る。


「そろそろ12時だな。じゃあもうすぐ。」

「へ?」


 祓が思わず間抜けな声を漏らしたところで、地面に魔方陣が浮かび上がった。


「…ん~まぁまぁ上手くなったな…でもこの辺が甘い…これじゃこの世界に少し穴が空くなぁ…」


 そして今村はそれを呑気に批評して魔法陣に書き換えた。それを終えると髪を切って目にもとまらぬ速さで何かを作ると祓に投げた。


「『魂魄の欠片』それ嵌めてれば俺がいきなり遠くに行っても同じ場所に飛べる。」


 黒くメタリックに光るブレスレットを渡されて祓は喜ぶ。そんな祓の目の前で今村は消えた。


「あっ」


 そして祓も消えた。



















「よぉ。」

「おひさ~」


 壁一面にゲーム、もう一面に漫画、さらにもう一面はラノベ、で残りが色んな魔道具という部屋で今村は眼鏡をかけ、こたつに入ってゲームをしていた好青年と挨拶をする。


「あ、懐かしっ!俺が作った奴じゃん。」

「んふふ~君が来るから懐かしのゲームを準備してたんだ~さ、やろやろ」


 そして今村もこたつに入り、二つ目のコントローラーを手に取って呼び出し主にダメ出しする。


「またお前は手ぇ抜いて…あの魔術じゃ俺は呼べねぇよ…俺には魔法じゃないとギリギリ通じないんだから…」

「あはは…どっちにしても僕の力じゃ弾かれるし、なら楽な方がいいじゃん。ってあ!それ僕の!」

「…あの~…先生?」


 祓が来てすぐに目に入ったのはこたつに入って青年が出したアイテムを奪い取って敵陣に入っていく今村のキャラクターだった。


「ん?きみ誰?可愛いね!僕の助手しない?」

「あ、私先生の物なので…で、何をしておられるのですか?」


 祓はさらっと受け流して、今村の方に尋ねる。今村は画面を見たまま答えた。


「ゲーム。…あ、ゲネシス・ムンドゥスにはなかったな。アーラムはこれの面白さがよく分かってないし…」


 今村は青年のキャラクターに敵をどんどん引き寄せて罠で蓋をする。


「ってなことでドーン。」

「あああああ!」


 1P死亡。と出た所で今村はゲームの電源を切る。


「こんなことしに来たわけじゃねぇんだよなぁ…態々呼んだんだから用件は別にあるだろ?手前ぇ好みの女ってのはどれだ?ちゃっちゃと助けるから教えろ。」

「あぁぁぁ…今日の分まだセーブしてなかったのに…」

「…俺が死ぬちょっと前の時点で廃人だったろうが…」


 今村の苦笑に青年は顔を真顔にする。


「…もう死なないでくれよ?僕はまだ君と遊んでいたいからな?」

「善処する。で、何?…あ、こっちとあっちの時間の流れが違うな。そろそろ下校しないとだし、相馬も転移させないと。そーれっと」

「…世界を跨いでそんな適当に魔法使うって…弱くなったとはいえやっぱ凄いね…」


 今村の行為は大分おかしいことだったようで青年は何とも言えない顔になる。


「そんなことはどうでもいい。俺が行くところの重力は?大気組成は?言語体系は?魔素は?神素は?正負は?そして何より…面白いか?」


 今村は怒涛の勢いで質問していくが青年は答えることなく書類を出した。


「はぁ…久しぶりの再会というのに…せっかちだなぁ…これ見ればいいじゃん。」


 言われなくても見ていた今村。それで顔付が険しくなる。


「…元俺が作った空間をベースにした空間か…ふむ…中々強そうなのがいるっぽいな…」

「後、僕の権限でゲームみたいな感じにしてる。倒した相手から魔力そのほかの力を無意識中に流すようにしてレベル的にしてるのが特徴かな?」

「ふむ。どれくらいから倒したことになるんだ?」


 今村は特に疑問を持たずに質問を続ける。


「う~ん…とりあえず大怪我したら流れるようにしてるけど…まぁ実際にやった方が速いと思う。」

「それもそうだな…で、お前が言う女ってのは…これだな。」


 今村はもらった資料の中の一ページを出した。


「ロングアン帝国第3王女ミーシャ・ロングアン。獣人の使用人と皇帝との間に生まれた忌み子。貴族姓を持たない庶民の皇女…なるほど悲劇のヒロイン…お前が好きそうな奴だな。」

「一応僕を守ってくれるくらいの強さにするために運を落とさないといけなかったから…」

「いい迷惑だろうよ。まぁ造物主の意のままにって奴なら別だが…それはともかくお前が解けないレベルの『呪い』ってなったら降りればすぐに見つけれるだろうな。じゃあ…」


 今村がそう言い終わる前に咆哮が響き渡り、部屋が震えた。


「何だ…?」

「…来たかぁ…じゃ、話はここまでってことで!」


 天を仰ぎながらそう言うと青年と家は消えてしまった。そして目の前には白銀に輝く大きな影が。


「龍…」


 話だけは聞いたことがある大いなる存在。そして過去フェデラシオンに現れたバルバロスとは比較できないほどの威圧感を持ったそれが空をこちら目掛けて恐ろしいスピードで駆けていた。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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