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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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11.花見準備

「ん~……いい場所見つけたからお花見に行きたい。」


 今村は『幻夜げんややかた』で唐突に言った。祓はそんな今村に尋ねる。


「あの、そろそろ花も散ってると思いますし……大体、植物の生活環を見て楽しいんですか?」

「……ってめぇ。はぁ。まぁ別にいいか。夜桜を楽しむことにした。昼は式神作りに勤しむから。邪魔すんなよ?」

「元々邪魔するつもりはなかったですけど……でも、あの……部屋に来てすぐ実験じゃなくてコミュニケーションはとってほしいです。仲良くならないといけないので……」


 祓の最初の言葉に若干ムカついていた今村は祓の理事長を隠れ蓑にした仲良くなりたいアピールの言葉を切って捨てる。


「あー? そんなの知るか。別に理事長の目の前だけで仲良いですって言ってればいいじゃん。わざわざ無理に仲良くなる必要はないと思うぞ……ん~あえて花見に団子のみってのもいいかもな……あんまり団子を持って行ってる人見たことないし。」


 前半で祓の心を挫いて後半は完全に独り言となっている今村だが、その後半の言葉を祓がとらえた。


「……和菓子作り……」

「ん~じゃあ帰りに団子粉と……和三盆わさんぼん買って……三色団子にしようかな普通(・・)の桜の葉から桜のにおい成分を抽出して……」


 今村の独り言に耐えられなくなった祓は声を発した。


「あのっ和菓子……作りたいです……」


 だが今村は断る。


「はぁ? 邪魔するなって言ったばかりだろうが花見を馬鹿にする奴め。」

「すみません……北国生まれなのでそれが何なのかよく知らないんです。……ただお酒を飲む口実って聞いたことはあるんですが……」


 今村はこの言葉に各地域の色々な情景を思い出し頭を抱えた。


「……否定できない。……だが俺は本当に花を見に行く。」

「……そうですか。ではとりあえずお店に行きましょう。」


 今村の言葉をほぼ完全に無視して祓は出かける準備を始め、今村も黙って準備をし、出かけた。




 帰って来た二人は祓の部屋に直行する。今村は荷物を置いて、ソファに座りこんだ。


(こんな高い材料で作るの初めてだ……)


 祓の本気度に若干引いて、買い物にも唯付いていくだけだった今村は若干疲れていた。しかし、あまり呆けているわけにもいかないので気合を入れ立ち上がって言った。


「よし、作……」

「これ案外簡単ですね……いえ、ですが奥が深いというか……」


 しかし今村のその気合も虚しく祓は既に何個も作っていた。しかも団子を茹でながら並行して出来上がったものに次々と寒天を塗って艶出しまできれいにやっている。

 それを見てとりあえず今は出る幕がないと悟った今村はローブから本を出して読むことにした。




「……あの、できました。どうぞ。」

「あー……終わったか。って俺の分は……」

「? ……これ全部食べていいですよ? 一応私も食べますけど……」


 今村が持ち込んでいた本を半分ぐらい読み終わるころには祓はすべての材料を使いきって三食団子を作り上げた上、今村の予定になかった様々な種類の団子を作り上げていた。


「あー……ありがと。どんくらい貰っていいんだ?」

「……えっと……今から二人で行けばわかりやすいと……」

「あぁ? お前、植物の生活環見て楽しめるのか?」


 未だに若干腹に据えかねている今村が意地悪くそう言うと祓は悲しそうな顔になる。その絵になりそうな綺麗な顔に今村は流石に団子を作ってもらったのにこの態度は酷いかと思って態度を改めた。


「……悪かった。ちょっとキツめの所にあるが……来れるか?」

「はい。」

「じゃあ行こうか。……付いて来れそうになかったら言え……抱えるから。」


 こうして二人はお花見に出かけた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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